インバウンドはいらない?京都の外国人マナー対策とは

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インバウンドの必要性

今年2023年に入りインバウンド需要は大きく回復傾向にあります。「2020年までに訪日外国人を4000万人」という日本政府の目標はコロナ禍によって叶いませんでしたが、2023年末には年間の訪日外国人累計人数が2000万人に届く可能性があります。

しかしこのような喜ばしい状況の裏では「外国人観光客のマナーが悪い」という困った声も、耳にするようになったのではないでしょうか。例としてよく挙がるのは、ごみのポイ捨て、トイレの使い方、電車など公共の場での電話、温泉に入る際のマナーです。たしかに今まで皆がマナーを守って利用していた場所に、日本のマナーを知らない外国人が押し寄せるのは迷惑だと感じる人も多いでしょう。

そうはいっても、現在の日本は「インバウンドはいらない(うざい、やめろ……などの声も上がっています)」と言っていられない状況です。なぜなら少子化による人口減少に伴い、将来的に日本人による国内の消費が伸び悩むことが懸念されているからです。そうなれば海外から観光客を呼び寄せるのが得策であるといえます。

また、2021年のデータではありますが、スイスの民間研究機関の世界経済フォーラムが旅行・観光の魅力度ランキングを発表し、日本が対象117か国・地域の中で1位になりました。インバウンド需要による経済の回復を狙うなら、自由に海外旅行できるようになった今がチャンスだともいえるのです。

京都の外国人向けマナー対策

京都では舞妓さんが歩いていると外国人観光客に取り囲まれてしまうなど、他の観光地では見られないようなマナー違反も頻発しているようです。コロナ禍前には外国人の間でも少しずつマナーが根付きつつあったにも関わらず、今年に入ってインバウンド需要が回復するとそれがリセットされ、同じ問題が再発している模様です。

この状況を裏返して見ると、外国人観光客の多くは自ら進んでマナー違反をしたいのではなく、日本のマナーを知らないだけだと推測できます。たとえば日本ではお茶や麺類を音を立てて啜ることがマナー違反ではありませんが、海外の多くの国ではマナー違反です。日本人が海外へ行く場合、このようなマナーを知らずに行動するのは恥ずかしいと考えるのではないでしょうか。それは日本へ来る外国人観光客も同じはずです。そう考えると、何が日本ではマナー違反になるのかを明確にして、地道に注意喚起を促していくしかありません。

京都市では下記のような項目の書かれたチラシを英語版と中国語版で配布しています。ダウンロードして自由に活用して良いそうです。

①静かに京都を楽しもう(公共施設では声の大きさに気をつけよう)
②人込みを避けよう(混雑しているところを避け、自分の京都を見つけよう)
③手ぶら観光を楽しもう
④自分のエゴバックと水筒を持ち歩こう
⑤地元産の工芸を購入しよう
⑥ポイ捨てしない(罰金を科される)
⑦文化施設や古い建物、壊れやすい物を大事に扱おう
⑧芸者を呼び止めないで(勝手に写真を撮らないで)
⑨禁止されるところで写真は撮らないで
⑩道をふさがない(京都の狭い道では、密着しないで)
⑪道路では禁煙(罰金を科される)

https://www.kyokanko.or.jp/news20220720より引用

こちらのページから無料でダウンロードできます➡ https://www.kyokanko.or.jp/news20220720

日本の料亭の食事マナー、外国人の迷惑事例

当然のことですが、ビジネスには大衆を狙った薄利多売のものもあれば、一部の富裕層を狙ったラグジュアリーなサービスを提供するものもあります。後者のビジネスであるべきはずの京都の料亭で、ひとり当たり1000円程度の消費しかしないという外国人観光客が目立つようになり、これも意外な迷惑事例として挙がっています。高級なサービスを提供する場にマナーや配慮のない客が訪れれば、客単価が下がるだけではなく店舗の品格も下がり、経営側から見たら迷惑に感じてしまうことでしょう。

決して京都という街そのものを高級志向にして、富裕層以外を排除するべきということではありません。「料亭を訪れる際のマナー」として、外国人観光客に対しても「高級料亭に見合う消費を促すべき」なのではないかということです。

この問題に関してはゴミのポイ捨てやトイレの使い方といったマナーとは異なり、多言語の張り紙をしたりリーフレットを配ったりで解決するのは難しいかもしれません。そうなると間接的な方法で改善していくしかないのでしょう。

たとえばリッツ・ホテルに行く際のマナーは?

例えば旅行でロンドンに行って、リッツ・ホテルでアフタヌーンティーをすると想像してみてください。決してリーズナブルに済まそうとは思わないでしょう。また、リーズナブルな旅をしたいと考えているなら、リッツホテルでアフタヌーンティーをしようとは、そもそも考えないかもしれません。いざ出かけることになった場合、普段はカジュアルな服装で食事やお茶をすることが多い人でも、男性ならシャツを着用したり、女性ならワンピースを着用したりと、おそらく最低限のマナーや配慮は心がけるのではないでしょうか。万が一カジュアルな服装で出向いてしまったら、「場違いかもしれない」と、自分自身をマナーのない人だと恥じるかもしれません。「予約がいっぱいですから……」と、遠回しに入店を断られてしまっても、仕方がないと感じることでしょう。なぜ配慮する必要があるように感じるのかといえば、リッツ・ホテルが世界的に有名な高級ホテルというイメージで定着しているからです。京都の料亭もリッツ・ホテルに劣らぬ権威があるのでしょうが、外国人観光客は今のところそれを理解していないのかもしれません。

富裕層の外国人観光客を掴むには?

一般の大衆に向けて、「畏まって出かけなければ、場違いになりますよ」というイメージを植え付けるには、実際に多くの富裕層を顧客に取り込んでおくのが近道でしょう。店内に一歩入って、顔なじみの常連さんと、美しく着飾った富裕層しかいなければ、「その場にあった振る舞いを」と考えるのが自然だからです。ここでは海外の富裕層の行動パターンを読み解きつつ、彼らにアピールする方法を考えていきます。

行動パターン1. 決定に時間を使わない

一般大衆は「お得な旅を…」と考え、それを達成するためのリサーチや、それに費やす時間を惜しみません。こういったリサーチをするのが好きな人も多いでしょう。一般の旅行客が旅行会社を通さず、自分で旅の手配をする傾向が強くなっているのは、インターネットの検索で、多くの情報が得られるようになったからだとも言われています。

これに対して、富裕層はこういったリサーチに時間を費やすことを好まない傾向があります。そのため、旅行会社に電話1本するだけで、旅行の予約を済ませたいという人も多いのです。以前の記事(イギリス人女性CEOのインタビューから学ぶ。新しい働きかた)でご紹介した、イギリスのITCという旅行会社のように、電話で丁寧に旅行をプランしてくれる、オーダーメイド感覚の旅行会社が富裕層に人気なのも頷けます。したがって、こういった旅行会社と業務提携するというのも良いかもしれません。

行動パターン2. 身内の口コミに敏感

富裕層は横のつながりを大切にしている場合が多く、親戚や友人が行ってみて良かったという場所に、紹介されて訪れるということも少なくありません。1組でも富裕層の顧客ができれば、知り合いに紹介してもらえる可能性も高くなり、少しずつ顧客を増やしていくことも可能でしょう。

ロンドンの会員制クラブやバーは、その品位を保つために、かつては貴族や著名人、またはメンバーからの推薦がなければ、年会費を払えてもメンバーになることができませんでした。現在でも、そのようなルールを保っている店舗もあります。このように、富裕層には身内のコミュニティーを作りたいと考えるような傾向があり、インターネットの口コミではなく、「知り合いの○○さんの意見」を重視する傾向があります。これは祇園の高級店なども同じような傾向があるので、理解しやすいのではないでしょうか。

行動パターン3. プレミアムなフライトを利用する

富裕層を狙ったマーケティングとしてトレンドとなりつつあるのは、航空会社とコラボレーションして、ファーストクラスやビジネスクラスの長距離フライトの利用者に、グッズを配るなどのサービスを提供することです。スキンケアブランドがアメニティーグッズを配るというのは定番になりつつありますが、運送会社が手荷物の配送を行うなどのサービスもあり、コラボレーションできるものの幅は広そうです。アイディア次第では、一気に知名度を上げることができるかもしれません。

外国人のマナー改善には地道な努力を

外国人のマナー問題は文化の違いから発生するものなので、一朝一夕で解決するのは難しいかもしれません。それでも地道に取り組めば、「日本でこれをするのは恥ずかしい」と認識してくれる外国人観光客が増えるはずです。

インバウンド需要は今の日本にとって必要なものなので、地元の人が快適に暮らすためにこれからも様々な努力や対策を講じなければならないでしょう。

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