英・百貨店「ジョン・ルイス」クリスマスCMから読む2016年

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クリスマスシーズンは、世界的に見ても、物が一番よく売れる時期だと言って過言ではありません。毎年11月になると、イギリスでは百貨店やスーパーマーケットに至るまで、多くの商業施設が大掛かりなテレビCMを打ち出します。そんなクリスマスCMの中でも、特に秀逸な映像とストーリーで、毎年大きな話題を呼ぶのが、百貨店「ジョン・ルイス(John Lewis)」です。「ジョン・ルイス」は、1864年にロンドンの中心オックスフォード・ストリートに、1号店をオープンさせて以来、現在にいるまで、王室から一般の人々に至るまで、多くの人たちに親しまれてきました。キャッチフレーズは「Never Knowingly Unsold(どこよりも安く)」で、百貨店ならではの、質の高い商品を手の届きやすい価格で提供し続けています。実際に、そんな「ジョン・ルイス」に、クリスマスプレゼントを買いに行く人は、少なくはありません。1号店のあるオックスフォード・ストリート界隈では、イルミネーションが点灯されるということもあり、毎年クリスマスシーズンになると、店舗の中や周りは、大変な混雑を見せます。 

「ジョン・ルイス(John Lewis )」2016年クリスマスCMとは?

 今年の「ジョン・ルイス」のクリスマスCMは、「Buster the Boxer(ボクサー犬のバスター)」と名付けられていて、飼い犬や野生の動物たちが、コミカルにユーモアを持って描かれているのが特徴です。イギリスのバンドVaultsがカバーした、ランディー・クロフォードの楽曲「One Day I'll fly」を起用し、全体的に明るい雰囲気に仕上がっています。製作は、ドゥーガル・ウィルソンという、カンヌライオンズ国際クリエーティビティー・フェスティバルでの受賞歴もある、イギリス人の映像監督によるものです。それでは動画をご覧ください。ストーリーを簡単に説明していきます。ベッドで飛び跳ねるのが大好きな息子のために、クリスマスイブの夜、庭にトランポリンを組み立てる父親。家族が寝静まったころ、野生のキツネ達がそのトランポリンを使って遊び始めます。キツネを皮切りに、いたるところから集まってくる野生の動物たち。それを窓の中から、羨ましそうに眺めているのは、飼い犬のバスカーです。次の朝、トランポリンのプレゼントを見つけてはしゃぐ男の子。その男の子を追い抜かして、先にトランポリンにジャンプしたのは、あのバスカーでした。それを呆れた様子で見る夫婦。そこで、「Gift that everyone will love(ギフトとはみんなが愛せるもの)」のテロップが流れ、ラストを迎えます。 

「ジョン・ルイス」のクリスマスCMに込められたメッセージ

 2016年は、イギリスがEUを離脱したいという意思を見せ、ブレクジットへと向かいつつあった年。離脱派の人も、残留派の人も、「多くの人が不満なく、平和に暮らすためにはどうするべきなのか」、ということを考えた年であったといえるでしょう。「ひとつのプレゼントをみんなでシェアする」というメッセージのある「ジョン・ルイス」のCMは、そういったイギリスの一般の人たちの心に、自然と響くものに仕上がっているのではないでしょうか。また今年のCMは、公開されてから、過去最高の速さでシェアされたという記録を打ち出しました。CMの素晴らしさも、もちろんのことですが、それだけ一般の人たちがSNSやブログを利用して、情報発信をするようになってきたという事実も無視できないでしょう。今後のマーケティングの方向性のひとつとして、自然にシェアしたくなるような映像やコンテンツを作るという作業は、欠かせないものになっていくのかもしれません。    

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