イギリスの格安SIM会社の画期的なマーケテイングとは?
携帯電話といえば、2年縛りの契約が一般的で、携帯電話会社を変更したり、機種を変更したりというのは、なかなか手間がかかります。イギリスの携帯電話会社の場合でも、18ヶ月の契約が一般的と、日本よりは半年短いものの、契約に縛られる期間があるという意味では、さほど差がありません。こういった契約に縛られたくないという欲求を満たすべくして、日本では楽天モバイルやUQモバイルなどの格安SIMの利用が、増加傾向にありますが、イギリスでも同じような現象が起こっています。
同じニーズを持つ人々でコミュニティーを
「契約に縛られたくない」というニーズはもちろんのこと、携帯電話の契約内容の変更や、疑問点の解決で、わざわざ代理店などの店舗を訪れるのは面倒だと感じている顧客も少なくはありません。電話で解決するという方法もありますが、イギリスではオペレーターと通話するために数十分待たされるということも珍しくはありません。したがって「オンラインで全てを解決したい」というニーズが、必然的に生まれてきます。イギリスの格安SIM会社のgiffgaffは、このようなニーズを持つ顧客のコミュニティーを作り上げました。このコミュニティーでは、利用客が掲示板上にgiffgaffのSIMカードを使用していく上での疑問点を投げかけると、90秒以内に別の利用客からの回答を得ることができます。
質問に回答してくれた顧客には……
質問に回答した顧客にはポイントが付与され、giffgaffの利用料金として使用できるだけではなく、現金として還元、慈善団体への寄付なども選択できます。これによってgiffgaffは、コールセンターや店舗を持たない運営が可能になり、質問者は素早い回答を得られるというwin-winの関係も成り立っています。また顧客がgiffgaffのSIMをブログで紹介したり、友人や家族などに紹介した場合は、それに対してもポイントが付与されます。2009年の設立以来、giffgaffはこのポイント付与に1000万ポンドを費やしました。giffgaffのマーケティング責任者のAsh Schofield氏は、このポイントについて「感謝に他ならない」と述べています。顧客同士が助け合い、顧客によって自社のブランドが広められていくことに感謝する、このような考え方もマーケティングには必要なのでしょう。
テレビCMさえも……
今年(2017年)、giffgaffは創業以来初めてテレビCMを放映しました。このテレビCMに対しては、今までは顧客によって運営されていたのに、今後は変わっていってしまうのでは?という懸念の声もありました。しかしAsh Schofield氏は、これを否定しています。なぜなら、過去にコミュニティーのメンバーにgiffgaffに関する短編動画の作成を依頼したことがあり、テレビCMのアイディアはそこから生まれたものだからです。「私たちの野望は、通信会社業界をリードするだけではなく、国を代表するようなブランドのひとつになることです」Ash Schofield氏はこのように述べていますが、顧客みんなで運営するという新しいスタイルのブランドが、そのように成長してくのは、不可能ではないでしょう。