店舗営業禁止の飲食店が考えた工夫!ラグジュアリーなフードデリバリー
ロンドンの休日、飲食店の集まる通りでは、ところどころに行列ができ少しだけ開けられた入り口を顧客が一組ずつ入って行くのをよく見かけるようになりました。
これはテイクアウトの注文待ちの列であり、いかに人々が外食を恋しがっているかが伺えます。その中で時折、デリバルー(Deliveroo)などと書かれた荷物を背負った方たちが、商品を受け取っては自転車で去っていく姿もあり、デリバリーを注文する人も増えているようです。外出制限され不安なコロナ禍では、おいしい料理が数少ない楽しみの1つであることを誰もが感じていることと思います。
コロナ禍でフードデリバリー人気が加速
イギリスでは2020年3月末、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、レストランやカフェなど飲食店の店舗営業が禁止されました。その後もロックダウンの開始や解除の度に営業停止や再開を繰り返し、現在は12月半ばから再び禁止されたままです。
2020年1月から4月までの間に、イギリスでGoogle検索された飲食関連用語におけるトップは「pizza」と「Take away near me」だったそうです。コロナウイルスの流行が始まり外出を避ける人々が、自宅でピザを取ろうか、近場でテイクアウトできそうなお店がないか探していたものと思われます。
元々、イギリスではテイクアウトやフードデリバリーが人気でした。便利だからというだけでなくレストランで外食するのと同じような余暇の楽しみ方と見なされ、国内の売り上げ高は2017年時点で8億ポンド代だったのが2020年には14億ポンド代にまで上がりました。
ホスピタリティーのトップもデリバリー業界に参入
世界のトップ50レストランに選ばれたこともあるミシュランレストランのレッドベリー(The Ledbury)をはじめ、輝かしい歴史を持つ多くのレストランが永久的な閉店を余儀なくされる中、高級ホテルや高級レストランまでもがデリバリーに参入し、なんとか存続しようとしています。
例えば、ナイツブリッジにある5つ星ホテルのバークレー(The Berkeley)。一部の地域に豪華な朝食を届ける自転車でのデリバリーを始めました。
バースデーサプライズのお願いには手書きのカードと風船のサービスもあるそうです。当ホテルの伝説的なBlue BarもBlue Bar Bikesとして自由に顧客の元へ行けるようになりました。自転車のバスケットに道具一式を積み込み、カクテルを作りに来てくれます。
飲食店で言えば、ロンドンのトップレストランであるスケッチ(Sketch)や ウォルズリー(The Wolseley)などから高級食材店まで、非常に多くのお店がデリバリーを始めました。
一般の家庭ではめったに調理しない、または食さないような料理が自宅に届くのです。
従来のフードデリバリーと言えば、ピザやケバブなど安価なファーストフード系のイメージがありましたが、今では手の込んだ高級料理まで注文できる時代になりました。
様々なスタイルのデリバリー
フードデリバリーと言っても、お店によってスタイルやアイディアは様々です。タイム(Tyme)は準備や調理を必要としない植物ベースの食べ物を瓶に詰め、そのまますぐに食べられる現代的な食事を提供しています。
また、上質なチーズとワインで有名なプロヴィジョンズ(Provisions)が、フォンデュ用に真空パックしたチーズとその他材料を提供しているように、調理が必要ではあるが自宅に居ながらにして、高級店さながらの味が味わえるキットをデリバリーしているところもあります。
出来立てのイメージがあるフードデリバリーとはかけ離れていますが、長期保存できる点にメリットがあります。料理だけでなく空間ごと提供しようという試みもあります。
テレビプレゼンテーター兼コラムニストのローラ・ジャクソン(Laura Jackson)が運営するホステロンドン(HOSTE London)は、コース料理とテーブルコーディネートによってオーダーメイドの食事体験ができるボックスをデリバリーしています。ボックスにはキャンドルやシャンパン、プレイリストの提案も入っています。大切な人と一緒にいられることを祝う意味がこめられたボックスだと感じました。
今後はオンラインデリバリーが主流に?
イギリスでよく知られているオンラインフードデリバリーのプラットフォームと言えば、ジャストイート(Just Eat)とDeliverooの2社がまず挙げられます。どちらも飲食店と顧客の仲介役として機能しており、Just Eatはイギリスで年間1億件を超える注文を処理しています。
世界におけるユーザーの普及率は2021年では10.5%、2024年には12.5%に達すると予想されており、オンラインアプリを介するフードデリバリー市場は今後も拡大していくようです。
ピンチに立たされた飲食店が様々に工夫を凝らし新しいサービスを始めているように、このような状況だからこそ、何か新しいアイディアが浮かびビジネスに繋がる可能性もあります。
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*数値データはスタティスタ(statista)の調査によるものです。