ロンドン夏目漱石邸近く「吾輩は猫である」から考える広告の意味

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夏目漱石が小説家としてのキャリアの築く以前、イギリスに2年程度滞在していたということは、知っている人も少なくはないでしょう。夏目漱石が1901~1902年まで住んでいたフラットは、ロンドン市内のClaphamという地域にあり、現在そこには、ブループラークという青い丸の鉄看板が掲げられています。ブループラークは、イギリス国内の著名な人物が住んでいた場所や、歴史的な事柄があった場所に掲げられており、日本人でこれを掲げられたのは、夏目漱石が初めてです。夏目漱石が済んでいたフラットのちょうど向かいには、「ロンドン夏目漱石記念館」があり、残念ながら、昨年2016年の9月に32年間の歴史に幕を閉じ、閉館してしまいました。夏目漱石といえば、「吾輩は猫である」の作者として海外でも知られていますが、記念館が閉館を向かえた9月に、近くのClapham Commonという地下鉄の駅の広告が、全て猫のポスターに張り替えられました。これは、夏目漱石や記念館とは関係のない、偶然の出来事ですが、広告のあり方を考えるという意味では、注目すべき事柄といえるでしょう。

駅から広告が全て消えたら……?

Clapham Common駅にある全ての広告が猫の写真のポスターに張り替えられたのは、2016年9月12日からの2週間でした。これを行ったのは、シチズン・アドバタイジング・テイクオーバー・サービスという団体で、デザイナーなどのクリエイティブな産業から集められたメンバーで構成されています。この活動のポスターに映ってる猫は、同団体に寄付をした人の飼い猫や、ロンドン市内にある動物保護施設の猫です。しかし、彼らの目的は、動物愛護を訴えることではありません。彼らは、何を訴えたいかということをはっきりと示していないのです。広告があることが当たり前である駅構内から、それを消し去ることで、人々は何を思い、どんな反応を示すのか、彼らの関心はそこにあります。日常の風景が変わることは、人々が生活している空間について考え直す機会になり、それが生活を見直すきかっけになる可能性もあると彼らは考えます。彼らの活動は、ロンドンから始まり、現在はロサンゼルス、アトランタ、ワシントンDC、バルセロナ、ケープタウンでも計画が進んでおり、出資したいという企業もいくつかあるそうです。下記の動画では、駅構内の実際の映像を見ることができます。あなたの毎日利用する駅の広告が、全て猫のポスターになったら、あなたは何を感じるでしょうか?

広告の持つ本当の意味とは?

テレビ番組を視聴する際や、インターネットで何かを調べる際に、私たちはほとんどの場合、無意識に広告を見ています。それは、日常の生活に当たり前のように組み込まれており、駅で電車を待つ場合や電車の中であっても、本来ならば避けて通ることができません。このように毎日、私たちは多くの広告を見ているので、私たちの目は自然にそれを無視するようになってきているのかもしれません。上記の動画の中の一般の人のインタビューでも、広告が猫に変わって、良いと思っている人もいれば、特に何とも思わないという人もいます。全ての人がほしいと思う商品を作るのが、ほぼ不可能なのと同じように、全ての人に好印象を与える広告を作ることも、ほぼ不可能なのでしょう。しかし、残念ながら人々が、「こんな広告を見るのなら、猫のポスターの方が良い」や、「どんな広告があったか、全く覚えていない」と感じてしまう広告が多いのが、実情なのかもしれません。猫のポスターは、広告やマーケティングの業界にとっても、新しい方向性を考えさせる機会を与えてくれたと言えるでしょう。

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