Amazonでトヨタの車をワンクリックで購入できるように!?
イギリスのトヨタのマーケティングディレクターのアンドリュー・カリス氏は、「Amazonがトヨタの車の販売を始めても、特に驚くことではない」と語っています。カリス氏はトヨタの新型C-HRの広告キャンペーンを機に、車を買うことに対する消費者の考え方が徐々に、かつ根本的に変化していくと考えています。また、トヨタが行った調査では、多くの消費者が、インターネット上のショップを利用して、より気軽に車を購入できたらと、考えていることが明らかになりました。
Amazonが「トップ・ギア」を買収
イギリスで莫大な人気を誇っていた、ジェレミー・クラークソン氏によるBBCの自動車テレビ番組「トップ・ギア」。不祥事により、ジェレミー・クラークソン氏がBBCを解雇されたため、番組は終了してしまいましたが、司会者3人がAmazonと契約を結び、昨年2016年に新番組「グランド・ツアー」をスタートさせました。「トップ・ギア」は、インターネット上で視聴していたファンを日本にも多く持っていましたが、「グランド・ツアー」はAmazon Prime Videoで、日本でも視聴が可能です。
広告クリックで車を購入?
「グランド・ツアー」の番組制作にAmazonが使用する予算は、約1億6000万ポンド(約208億円)と言われています。この予算から考えても、Amazonがこの番組の制作に重きを置いていることは、見て取れます。視聴者はAmazonに視聴料を支払う必要があるので、その大半は自動車に興味があり、そのうちの一部は購入を検討している可能性もあります。したがって、この番組を視聴する過程に広告があれば、そこから購入につながるケースが考えられます。インターネット上では、自動車のカタログや見積もりを請求することが可能ですが、トヨタの行った調査でも分かる通り、直接購入が可能になればと、考えている消費者は少なくありません。これを今後Amazonが行わないとしたら、逆に不自然とさえ取れるかもしれません。
大きな買い物だけに慎重に行いたい消費者も
インターネットショッピングで、簡単に車を購入できたらと考える消費者が多くなってきているのは事実ですが、容易すぎるのもどうかと考えている消費者も少なくありません。カリス氏も、「ディーラーを何度か訪れ、担当者と関係を築き、試乗をして製品をテストしたい消費者も多いので、バランスをとる必要があります」と語っています。ディーラーでの丁寧な対応は、顧客満足につながる一つの要因でもあります。また、自動車の購入は、消費者にとって、絶対に失敗したくない買い物でもあるので、製品を慎重にテストして、比べたいという要求があるのも事実です。気軽に購入したい派と、慎重に購入したい派の両方が、ストレスなく満足できるようにというバランスが、今後はより求められるでしょう。
そもそも車を持ちたい人が減っていくのでは?
インターネットやスマートフォンの普及で、レンタカーを簡単に借りられたり、Uberでタクシーを気軽に利用したりできるので、車を購入したいという層が、減少傾向にあると、カリス氏は考えています。気軽さということを考えたら、車を持たないという選択肢が出てきてしまうのは、避けられなくなってきたようです。そこで、トヨタはUberやレンターカー業者との提携を積極的に行い、一般の消費者以外の市場も獲得しようと模索しています。
広告予算は削減しない
このような状況の中でも、トヨタは2017年の広告予算を削減しませんでした。「重要なのは、適正な範囲で、できるだけ効率よく過ごすことです。何があっても、大きなショックを受けないことです」今後、自動車に対する消費者の考え方は大きく変化していきそうですが、それに柔軟に対応しつつも、過敏に反応しないことが重要だと、カリス氏は考えているようです。インターネットやスマートフォンの普及を考慮すると、これは自動車業界だけではなく、全ての業界にいえることなのではないでしょうか。