広告詐欺の責任は誰が追う?プライバシー保護は言い訳にならない
デジタル広告を狙った広告詐欺の手口は、年々巧妙になってきており、Googleの監視とのイタチごっこが続いています。2015年には、ロシアの犯罪集団による市場最大級とも言われる広告詐欺があり、その被害額は1日当たり300~500万ドルにも上りました。この広告詐欺の手口は、偽造したサイトに広告を掲載し、ボットを使ってその広告をクリックして表示させ、あたかも人間が視聴したかのように見せかけるというものでした。
広告詐欺が起こる仕組みとは?
Googleアドセンスは、サイトの内容に見合った広告が自動的に表示され、サイトの訪問者がそれを閲覧し、さらにクリックすることで、サイト管理人に収入が支払わせる仕組みになっています。広告主の立場から見れば、自社の広告が適切なサイトに表示されることにより、顧客や見込み客を増やすことが可能になるという利点があります。多くの広告詐欺は、これを悪用して行われているのです。昨年2016年の広告詐欺総額が発表され、それは2015年から減っており、事態は改善されたかのように思われました。しかし、この新しい数値は信ぴょう性に欠けていると、ドイツの大手旅行代理店TUIはコメントしています。
2017年の広告詐欺は全世界で総額いくらに?
以前は、全世界の広告主が広告に支払っている総額は、約72億ドルであると言われていました。しかしAdlooxの調査では、昨年の広告費総額は660億ドルにも上り、さらに広告詐欺の総額は124億ドルと、信じられないほど高い割合が報告されました。2017年も、このままの割合で増加していくならば、広告費が800億ドル、広告詐欺が164億ドルになるとeMarketerが予測しています。
誰が広告を閲覧したか知るすべがない
広告詐欺の被害に合うのは広告主ですが、広告主にとっては詐欺に合っているのかどうかさえも、知るのが難しい状況だと言えます。なぜなら、GoogleにしてもFacebookにしても、プライバシーの保護を理由に、広告主側に誰が広告を閲覧したかという情報を具体的に公開しないからです。また、広告詐欺だけではなく、支払った広告費のうちの、どこにもカテゴライズされなかった費用は、GoogleやFacebookの収益と化しているということをTUIのデジタルマーケティング責任者クリスチャン・アーモンド氏は懸念しています。
視認性を巡る抗争はまだ続く
クリスチャン・アーモンド氏は、マーケティング担当者に対しても下記のように呼びかけています。「広告詐欺にうまく対処するために、業界全体が責任の擦り付け合いをするのではなく、責任を負うようにするべきです。マーケティング担当者は、GoogleやFacebookの視認性の問題を当然のことであるかのように考えるのを止めるべきです」デジタルマーケティングが欠かせない時代だからこそ、その実権を握るGoogleやFacebookに従うべきであるというのは、一理あるかもしれません。また、これら会社が視認性の問題に対して、全く努力をしていないかと言えば、そうではありません。広告詐欺の責任をGoogleやFacebookが負うべきだと考えるのは当然ですが、それだけではなく、これらの会社に情報の開示を求め、共に詐欺を監視できる環境を作る努力をしていくべきなのでしょう。