フェアトレードが崩壊しつつある?現実と向き合えば…

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私たちが食品や物を消費する際、それらは生産者や労働者の手によって作られているということを常に意識しているかと言えば、そうでない場合が多いでしょう。2013年にバングラディシュで起こったラナプラザビル倒壊の事故は、すでに記憶から薄れてしまっているかもしれません。この事故は3000人にも及ぶ犠牲者を出し、その多くが低賃金で長時間の労働を余儀なくされている労働者でした。このビルには、大手アパレルの生産工場があり、安価で見た目の良い衣服を毎シーズン買い替えたいという、先進国の消費者の要望や、それによって利益を生み題しているメーカーやブランドの意向が、この事故の引き金になったとも言われていました。このような現実を改善するために一般の消費者ができることは、そのような製品を選ぶのを止めることです。しかし、消費者目線で考えれば、安価で品質や見た目の良いものを購入できるということは、常に魅力的でもあり、メーカーやブランド小売り側は、そのような意向とのバランスを取っていくことを常に余儀なくされます。

「フェアトレード」とは?

フェアトレードとは、発展途上国の生産者から、トレーダーが適正な価格で仕入れを行う公正な取り引きのことを指し、生産者の経済的な自立を図るためのスローガンとしても掲げられています。国際フェアトレードの基準を満たした製品は「フェアトレード」と謳って、販売することが可能になります。(現在のところ、アパレル製品はフェアトレードの基準の範囲外の産品ですが、フェアトレード機構は、産品の項目を前向きに増やそうとしています)マーケティングの観点から見れば、多少割高であっても、フェアトレードのものを買いたいという倫理基準の高い消費者も多く、「フェアトレード」のマークは、売り手にとっても良いアピールのポイントであると言えるでしょう。

独自の基準の「フェアトレード」??

イギリスの大手スーパーマーケットチェーンのSainsbury’sは、今年(2017年)7月に、「フェアトレード」ではなく、独自の基準を満たした「フェアリー・トレーディッド」というラベルを付けて、紅茶を販売することを決定しました。これはまるで、自分の回答を自分で答え合わせするようなものにも見え、消費者の混乱を招くと懸念されています。また、Sainsbury’sが「フェアトレード」を離れないことを要求する申し立てに、90,000人以上が署名していることも事実です。Sainsbury’s側は、「フェアトレードは25年前の目的には合っていたが、2017年には適合していない」と主張し、フェアトレードを行ってもなお、紅茶の生産地の子どもの42%が栄養不足であるということも指摘しています。独自の「フェアリー・トレーディッド」の基準で、生産地の子どもの栄養不足を改善できると考えているのでしょうか?それとも「フェアトレード」にかかるコストを削減し、他の大手スパーマーケットチェーンとの価格競争に太刀打ちしつつも、「フェアリー・トレーディッド」のラベルでイメージを維持していきたいと考えているのでしょうか?生産者の保護、ブランドイメージ、消費者の意向、価格などを総合的に考え、企業としてどうあるべきなのか、どのような業種においても、方向性を検討していく必要がありそうです。 

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