「お馴染みのもの」と「新鮮なもの」選びたいのはどちら?

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企業や商品のイメージを消費者に植え付けるために、ブランディングは欠かせません。ニューヨークの広告業界を描いたテレビドラマ「マッドメン」には、ブランディングについて考える印象的なシーンがあります。それは「お馴染みのもの」と「新鮮なもの」のどちらが広告として効果的かを問うもので、「広告にとって最も重要なことは、痒みを作り出すことか、それとも繊細で強力なノスタルジアか」というセリフによって、語られます。

繊細で強力なノスタルジア=お馴染みのもの

目を閉じていても思い浮かぶような、企業やブランドのロゴ、キャッチフレーズはありますか?アップルのリンゴのロゴ、マクドナルドの「M」、ルイ・ヴィトンの「LV」など、キリのないほど思い浮かぶのではないでしょうか。しかし日常生活の中で、それをわざわざ意識することはないかもしれません。なぜなら、あまりにもテレビCMであったり、街中の看板であったりと、目にする機会が多く、見慣れてしまっているからです。そうは言っても、見慣れたロゴの製品と、そうでない製品が並べられていた場合、安心して購入できるのは、見慣れたロゴの製品ではないでしょうか。したがって、安定した収益を生むという意味では、お馴染みのロゴを生み出すことが大変重要であると言えます。このように知らず知らずの間に、意識の奥に刷り込まれていく広告やロゴを作り出すには、長い歴史(ドラマの言葉を借りれば強力なノスタルジア)と、人々の目に触れた時に、違和感のない計算されたデザインなど(同じくドラマの言葉を借りれば繊細さ)が、必要となってきます

痒み=新鮮なもの

一方、新鮮な広告によって生み出される利益は何でしょうか。ドラマの中の言葉「痒み」は、「違和感」という言葉にも置き換えられるかもしれません。最近では、わざと炎上させるような広告を打ち出すことにより、話題性を呼ぶという方法も時々用いられます。「違和感」は鮮烈なインパクトを生み、瞬時に人々の頭に刷り込まれます。炎上とまでいかなくても、今までに見たことが無い新鮮なものなら、記憶に残りやすいのは言うまでもありません。新しいものを試してみたいというのは、多かれ少なかれ、誰しも持ち合わせている欲求であると言えるのではないでしょうか。

キューピーマヨネーズといえば?

ここでキューピーマヨネーズを例に挙げてみましょう。キューピーマヨネーズといえば、キューピー人形のマークや、パッケージ、ボトルの形など、固定のイメージが思い浮かぶのではないでしょうか。キューピーマヨネーズは1925年以来、キューピー人形のマークを使用し続けており、その当時このようなマークは非常に斬新でした。これは「新鮮なもの」であったといえます。しかし、斬新であると同時に親しみを持ちやすいデザインであるという繊細さと、現在にいたっても使用されているという長い歴史を持ち合わせてもいます。

「新しさ」と「慣れ」のバランス

キューピーマヨネーズが、日本のマヨネーズのシェアの約8割を占めていることからも分かるように、「目新しさ」と「慣れ親しまれること」の両方のバランスを保つことが、良い広告の指標であると言っても過言ではありません。インダストリアルデザインの草分けとして知られるRaymond Loewyの「未来のためにデザインすることが、明るい未来を作る」という言葉のように、慣れても飽きのこないものを創造することが、ベストであると言えるでしょう。

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