バーバリーのCEO交代。新しい方向性は間違っている?
イギリスが誇るファッションブランドとして、知らない人のいないバーバリーですが、今年(2017年)の夏にCEOが交代し、今後の方向性については「高級志向に」と定められていましたが、今月(11月)に入り、さらに詳細な方向性が示されました。その新たな方向性には、イギリスのマーケティング担当者や、投資家の間にまでも波紋を呼んでいます。
新しいバーバリーの方向性とは?
「私たちはブランドのポディションを向上させるべく、よりラグジュアリーな方面に力を注いでいきます」これが、新任のCEOのマルコ・ゴベッティ氏が新しく示した方向性です。この言葉が具体的に意味するのは、手の届きやすい価格の商品の生産量を減らし、立ち寄りやすい雰囲気の小売店を閉店し、高級志向の顧客が集まりやすい店舗は改装し、さらにラグジュアリーな雰囲気にするということだと読み取れます。これは古典的な、ブランドの高級志向への方向転換の方法であり、ゴベッティ氏は過去に同じような方法で、セリーヌの方向転換に成功しています。ゴベッティ氏はそれ以前にも、ボッテガヴェネタやジバンシーでも、マネージメントやCEOの役職で成功を収めているため、彼がバーバリーのCEOに就任したことは、一見喜ばしいことのようにも感じます。
バーバリーの歴史を振り返ると
バーバリーは1856年に、当時21歳で労働階級であった青年トーマス・バーバリーによって設立され、1879年には現在のトレンチコートにも使われている耐久性・耐水性に優れたギャバジンを発明し、1891年に初めて、ロンドンの中心地ヘイマーケットに本社と本店と構えます。ギャバジンは、農民が汚れを防ぐために着ていた上着をヒントに開発されていることや、第一次世界大戦時には、陸軍と空軍に着用されていたことなどからも見て取れるように、バーバリーはそもそも、高級志向のファッションブランドとしてスタートしたわけではありません。その一方で、1919年にはジョージ5世によって王室御用達を授かり、その後もチャーチル首相によって着用されるなど、英国が誇るブランドとして見なされてきたことも確かです。
ここ数年のバーバリーは?
前任のCEO兼デザイナーのクリストファー・ベイリーは、伝統的なデザインの中に、カジュアルやスポーティーなテイストを盛り込むのが得意でした。また彼自身も、イングランド北部のヨークシャー訛りを持つ、親しみやすい人物として知られており、バーバリーの歴史的背景をくみ取った上で、現代的なアレンジを施すことのできたデザイナーであったといえるでしょう。また、今年の上半期のバーバリーのセールスは昨年の24%増であり、ゴベッティ氏によるブランドの方向転換の必要性が疑われます。
それでも高級志向にしたい真意は?
バーバリーの売り上げ増の裏側には、中国の経済成長が関係しているように思われます。ロンドン市内でも、バーバリーの製品を着用している中国人観光客を見かける機会は多く、人気ブランドのひとつであることは事実です。また、彼らが高級なイメージのブランドをより好む傾向があることも頷けます。イギリスのマーケティング担当者や投資家の多くは、バーバリーの方向転換が成功しないのでは?と、見ていますが、長年親しまれているブランドであるがゆえ、その予想が当たってしまったら残念だと考えています。しかし、歴史的背景を無視したブランドの方向転換が行われ、それが成功するのであれば、それもまた悲劇に等しいのではないでしょうか。