手間をかけないで他社より目立つ。とっておきの方法とは?
以前の記事(ジョン・ルイスの2017年クリスマスCMが公開。昨年からの変化は?)で、ご紹介したように、イギリスではクリスマス前になると、大手百貨店やスーツケースチェーンが、ここぞとばかりにクリスマス用のテレビCMを打ち出します。しかし正直なところ、毎年注目を集めるジョン・ルイスに劣らないテレビCMを打ち出すのは簡単ではないと考えているマーケティング担当者や、広告代理店は少なくありません。それでは、数々のライバルの中、自社が目立つためにはどうしたら良いのでしょうか。そこで、12月1日公開されたばかりのスーパーマーケットCo-opのクリスマス用のテレビCMと、それに対する考え方についてご紹介していきます。
Co-opのクリスマスCMとは?
CMは代理店「Forever Beta」によって製作されており、出演者は俳優ではなく、一般のCo-opを利用している人々です。中には年金を受給している世代の人も出演しており、「クリスマスは誰もが楽しむもの」だということが伝わってきます。また、オンラインではこのCMに出演している人々の現実のストーリーを閲覧することも可能で、一般の消費者のドキュメンタリーという、一風変わったアプローチも行っています。Co-opは14期連続の売り上げ上昇を記録しており、それをクリスマスまで持ち込みたいと考えています。この売り上げ上昇の裏には、消費者のコミュニティを大切にしてきたというブランディングがあり、このクリスマスCMにもそれが込められています。
12月1日公開の裏に隠された意味
このCMの公開は12月1日。ジョン・ルイスのクリスマスCMの公開が11月10日であったことを考えると、かなり遅いように思われます。「おそらく批評家たちは、私たちが遅れをとっているように言うでしょうが、そうではありません。ダンスフロアにいて、音楽が止む瞬間を待つようなものです。 DJはその沈黙をキープして、人々がそれに気が付く。それが私がCo-opのクリスマスCMに求めていたアプローチです」Co-opのマーケティング責任者のAmanda Jennings氏はこのように語ります。周りがキャンペーンを行っている時に、同じようにキャンペーンを始めても、目立つのが難しいことは、容易に想像がつきます。そこで、消費者が他社のテレビCMに少し見慣れてきたというタイミングで、テレビCMを公開すれば、新鮮な印象を与え、注目される可能性も高くなるのではないでしょうか。また、イギリス人がクリスマスの気分になるのは12月に入ってからが一般的だと言われています。そのタイミングを狙ってのテレビCMの公開は、消費者の気分ともマッチするに違いないでしょう。
常識を疑ってみては?
11月の中頃にクリスマスCMを公開しなければ、クリスマス商戦に乗り遅れてしまう。そんな常識を覆すような、Co-opのクリスマスCM公開のタイミングですが、このように一見、消極的にも見える方法が、逆に注目を集めるというケースもあります。他社に真っ向からぶつかっても目立てないなら、このような方法を取ってみるのも、時には必要なのかもしれません。