イギリスの新聞に禁煙推奨の広告を出した予想外の会社とは?

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新年の抱負を聞かれて、喫煙者ならば「今年こそは禁煙を」と答える機会は多いのではないでしょうか。イギリスの2018年1月2日の新聞各紙には、「今年の抱負は、たばこを止めること」という文言が掲載されました。これは一見した限りでは広告には見えませんが、たばこ販売会社のフィリップ・モリスによるもので、たばこを販売する会社がなぜ禁煙の広告を?と、疑問に思う声も多く上がりました。

言うまでもなく禁煙したい人は増えている

テレビドラマや雑誌の紙面で、クールにたばこを吸うシーンを見かけることは、ほぼ無くなりましたが、それはイギリスでも変わりありません。それどころか、イギリスでは公共の施設内での喫煙が全く認められておらず、日本の分煙の考え方よりも、はるかに厳しいように感じるかもしれません。また、たばこの価格も1箱10ポンド(1500円)程度と高く、禁煙できるものならしたいと考える喫煙者は、日本と同様かそれ以上であっても、おかしくはないでしょう。

たばこに代わる商品を

禁煙したいと考える人が増加し、喫煙者が減りつつあれば、必然的にたばこの売り上げは低迷します。そのような状況の中で、フィリップ・モリスは、25億ポンドの費用を投資して、電子たばこの開発に成功しました。これには日本でも爆発的に普及したアイコスも含まれます。ただしイギリスの法律では、現地点で医薬品として認可されていない電子たばこを禁煙治療の製品として、直接的な広告を新聞に掲載することが認められていません。そこで、「禁煙キャンペーン」の広告を打ちだし、会社そのものの宣伝や、WEBサイト「Smoke Free Future」への誘導も試みる、禁煙志願者の立場に立った逆説的ともいえるマーケティングを行ったのです。

たばこメーカーによる禁煙サイト

電子たばこの健康に及ぼす影響は諸説ありますが、イギリスでは2015年に、公衆衛生庁が、「電子たばこは紙たばこよりも健康被害が95%少ない」と発表しています。しかし、現地点では喫煙者の多くがこの事実を知りません。イギリス国内には喫煙者が8000万人いるとされており、大半の人が過去に禁煙に挑戦していることが、調査によって明らかになっています。「Smoke Free Future」では、禁煙にかつわる情報提供や、たばこの代替商品の紹介がされています。また将来的には、禁煙治療として国民保険サービスでも使用される見込みがあり、そうなれば希望者には、負担額なしで支給される可能性も高くなります。フィリップ・モリスのマーク・マクレガー氏は、喫煙者を教育していくことが重要であると考え、今年後半に向けて、さらにキャンペーンを打ち出していく予定だと述べています。

主力の商品の売り上げが落ちたら……

フィリップ・モリスの事例からは、主力の商品の売り上げが落ちて、明らかに今後需要が高まらないと分かってしまっても、何かしら代替策があるということが窺えます。新しい商品の開発にはコストや年月、社内での理解が必要ですが、このような挑戦も、時には必要なのかもしれません。

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