イギリスのチョコレートメーカーの画期的な取り組みとは?

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自然派やオーガニック食材への関心が高まっている近年では、「フェアトレード」と謳った食品を見かけることは、珍しくなくなってきています。フェアトレードとは、直訳すれば「公平・公正な貿易」という意味になるように、発展途上国から適正な価格で食品や原料、製品を購入することを指します。また、継続的に貿易を行うことで、発展途上国の生産者や労働者の生活改善や自立を支援します。フェアトレードの起源には諸説ありますが、ヨーロッパでは1970年代には既にこれに近い考え方が存在していたと言われています。しかし、組織としてのフェアトレード・ファンデーションが設立されたのは1992年となり、その当時でさえ、現在ほどの認知度はありませんでした。

カカオ農家がオーナー?

フェアトレード・ファンデーションの設立から6年後の1998年に、イギリスで画期的なシステムのチョコレートメーカーが誕生しました。それはDivine chocolateで、この会社のオーナーシップの44%が、ガーナのKuapa Kokooココア農業協同組合によって所有されており、チョコレートで生まれた利益を農家に直接的に還元している、現在のところ世界で唯一のチョコレートメーカーです。

フェアトレードの認知度が上がっても

設立当初はチョコレートブランドの知名度どころか、フェアトレードの認知度も低かったため、Divine chocolateは、あるキャンペーンを打ち出します。それは、生産地で女性の労働者も、のびのびと楽しそうに働いていることを世に広めるもので、フェアトレードに関心を持っていた人たちの間では、高く評価されました。しかし、残念ながらチョコレートの売り上げ向上には結び付きませんでした。それが意味するのは、このキャンペーンがフェアトレードの認知度を上げることには成功したものの、チョコレート愛好家の心には届かなかったということなのでしょう。

ブランドのメッセージを伝えることの意味

Divine chocolateコミュニケーション責任者Charlotte Borge氏は、このキャンペーンが不成功であったことを当時は認めたくはなかったものの、「フェアトレードに関心があり、チョコレートも好き」という人に訴えかける、簡潔なメッセージが必要であると考え始めるようになります。そこで現在のスローガンである”Owned by cocoa farmers. Made for chocolate lovers(ココア農家に所有され、チョコレート愛好家のために作られる)”でした。いうまでもなく、農家に利益を還元するためには、チョコレート愛好家を喜ばせるような製品を作り、売り上げを作る必要があります。Charlotte Borge氏は、「チョコレート売っているということを忘れてはならない」と、このスローガンを広告やパッケージに表示することを決めました。また、農家の労働者に対しても、「支援している」という認識ではなく、美しい写真やストーリーを提供してくれる、ブランドにエンターテイメント性を与えてくれる存在と認識しているのだそうです。このように、何を売るためのキャンペーンであるかを常に念頭に置いておくことは、売り上げを大きく左右するのではないでしょうか。

Divine Chocolateが日本に来る日も近い?

Divine Chocolateは、イギリスとアメリカでは大きなブランドとして認知されており、カナダや北欧、韓国でも販売されています。今は日本の市場開拓も視野に入れているそうで、日本のオーガニック食材店等で、そのパッケージを見かける日も遠くはないかもしれません。

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