なぜレジ袋が有料化されたの?リサイクル率のデータの落とし穴
日本では今月からレジ袋の有料化が義務付けられ、環境の面から見れば良い取り組みではありますが、正直面倒に感じているという人も多いでしょう。コンビニに行けば、商品が清潔感のあるパッケージに梱包され、買い物をすればビニール袋にプラスチック製のストローやスプーンも入れてくれる、そんなサービスが当たり前の生活の中では当然のこととも言えます。このような生活が当たり前の国は世界的に見てもあまり多くはないので、日本の一人あたりのプラスチックごみゴミの排出量は世界2位と上位です。「ゴミを多く排出しても、それを有効利用できるなら良いのでは?」と考える人もいるかもしれません。日本のプラスチックごみのリサイクル率は大変高く、86%です。アメリカのプラスチックごみのリサイクル率は8%、イギリスは24%というデータがあるため、日本がまるで優良国であるかのように見えます。しかし、このデータの裏側には多くの事実が隠されているようです。
急激に普及したプラスチック
プラスチックが最初に発明されたのは19世紀、広く使われるようになったのは第二次世界大戦以降だと言われています。金属やガラスに比べて日常生活の中での利便性が高いことから、世界的に普及していきました。1975年には5000万トンだった世界のプラスチック生産量は、2015年には4億トンにまで達しました。プライスゴミが問題だと言われる原因のひとつに、金属やガラスに比べるとリサイクルが難しいことが挙げられます。難しいと言われているにも関わらず、日本では86%もリサイクルできていることに違和感を感じないでしょうか。このデータが虚偽だということではなく、「リサイクル」の定義にカラクリがあるようです。
日本のリサイクルの定義
実は日本がリサイクルとしてデータに計上している中には、「サーマルリサイクル」というものが58%も含まれています。これは燃やしてエネルギーとして利用したことを指します。欧米ではこれを「サーマルリカバリー」と呼び、リサイクルとして計上されないことが多いようです。86%中の残りの15%は海外へ輸出、13%が再生樹脂等へ利用されます。
再生樹脂を作るは難しい
リサイクルというと、他のものに再生されて利用されるというイメージが大きいのではないでしょうか。プラスチックごみがなぜたった13%しか再生樹脂として利用できないかというと、膨大なエネルギーとコストが必要になるからです。たとえリサイクルごみとして分別されていたとしても、まずは洗浄などの工程があります。その後、再生樹脂として加工する工程も、金属やガラスの再生に比べて多くのエネルギーを消費します。
ごみを海外に輸出するとは?
さらに海外に輸出されている15%へフォーカスします。ごみも資源として利用できるため、安く手に入れられるのであれば必ずしも悪いものではありません。しかし、世界最大のプラスチックごみ輸入国であった中国は、昨年に入ってからプラスチックごみの輸入を停止しました。その大きな理由が、上記でご紹介したような方法でしか資源として再生することができないためです。再生ごみの工場の労働者が、低賃金で過重労働させられているということも浮き彫りになりました。中国はプラスチックごみの輸入を停止しましたが、その他のアジアの国々はまだ貿易を続けています。このような国々が日本や欧米から、行き場のないプラスチックごみの処理を任されてると言っても過言ではありません。
レジ袋から意識を変えてみては?
プラスチックは自然に帰ることのない素材であるため、埋め立てや路上のポイ捨てが環境汚染へと繋がります。焼却処分する場合はCO2を排出します。このままプラスチックごみが増えれば、2050年には海の魚よりもプラスチックごみの方が多くなるという懸念もされています。食物連鎖によって人体に取り込まれた場合の影響も懸念されていますが、20世紀後半から急激に普及した素材であるため、医学的な根拠のあるデータもないようです。日本人はごみをきっちり分別するので、プラスチックを一般ごみに混ぜていないせいで、排出量が多くカウントされているのでは?という意見もあります。たしかに日本のゴミの分別の習慣は、他の国の人にも誇れるものです。データの整合性を論理すると終わりがありません。仮にデータが間違っていたとしても、プラスチックごみをさらに排出して良いわけでもありません。プラスチックごみのリサイクルの難しさや環境への影響を考えると、プラスチックそのものの消費量を減らしていくことが望ましいと言えます。一人一人がレジ袋から始めて、それ以外のプラスチックごみも増やさないよう意識することが大切なのではないでしょうか。