顧客中心主義がビジネスを成功させる②注目のイギリス企業の事例と戦略

前回の記事で、顧客中心主義についての詳細やマーケティングへの取り入れ方についてまとめました。本記事ではそれを実際に取り入れて急成長を遂げたイギリス企業の興味深い例を取り上げます。

▼前回の記事はこちら

顧客中心主義がビジネスを成功させる①4つのポイントと3つの指標とは

イギリスの企業はどうしてる?顧客中心主義(Customer Centric)の事例から学ぶ戦略

デジタル銀行Monzo(モンゾー)の事例から

Monzoとは2015年設立の400万超えユーザーを持つモバイルアプリ特化型の実店舗を持たない銀行です。クラウドファンディングで£100万を僅か96秒で調達し、ほぼ広告費なしで運営していることでも知られています。

1. 確立されたプロセスを打ち壊し、顧客の負担を減らす

新しい銀行口座の設立には決まったプロセスがあります。通常イギリスで銀行を開設する場合、支店でアポイントを取り、住所証明などを提出する手続きが必要です。従来の銀行が新規顧客を獲得するには、平均して26日かかると言われています。

しかし、Monzoでは不要な質問をすべて取り除き、IDを表示するために物理的な場所に行く必要をなくしました。

アプリを通して個人情報の入力とID写真のアップロード、人物確認のための簡単な自撮りビデオだけで、数日後にはカードを届けてくれます。

従来の銀行ができなかった、あるいはするつもりのなかったことをして顧客の負担を減らしたのです。

2. 顧客の本当のニーズに合わせて問題を解決する

ほとんどの方が、カードを紛失して新たなカードが届くまで待たなければならなかったり、オンラインショッピングでカード情報を入力することに不安を覚えたりした経験があるでしょう。カード紛失へ注意を促す広告やオンラインショッピングの危険性キャンペーンなどはよく見かけますが、それをすればするほど顧客はカードを利用しなくなります。

Monzoは、潜在的な危険性について悩むのではなく、使い捨ての仮想カードをユーザーに提供することでこの問題を解決しました。

オンラインで買い物をするたびに、使用後に破棄する新しい仮想カード番号を作成できるため、カード紛失や詳細を複製される心配がありません。

コロナ禍でオンラインショッピングの需要が高いことを理解し、オンラインショッピングに不安があるけれど利用したいという顧客の真のニーズを汲み取ることができたからこそのサービスだと思います。

3. 利益にならなくても顧客にとって最善のことを行う

Monzoのアプリにはギャンブル依存症の顧客を護るための「自己ブロック機能」があります。借金を積み重ねるのを防ぐことを目的としており、顧客が自分のアカウントからギャンブル取引をブロックできるというものです。

ウェブサイト上の「Monzoコミュニティフォーラム」で顧客と話し合った後、当時約5,000人の顧客にしか影響を与えないと予想されたにも関わらず、この機能を開発しました。

また、メンタルヘルス問題を抱える顧客が回復に集中できるようなサポートもしています。

自分たちのビジネスが顧客の人生にどのように影響を与えるかを理解するために、独自のフォーラムで顧客の声に耳を傾け、顧客が幸せになるサービスを常に追求しているところが、この企業の強みだと思われます。

イギリスの市場調査会社イプソス・モリ(Ipsos MORI)の昨年の調査によると、86%の人々が知人や家族に薦めたい銀行としてMonzoを挙げています。

たとえ影響を与えるのが少数で間接的なことだとしても、正しいことを行えば、直接影響を与える以上の影響を与える可能性があるのです。

オンラインスーパーマーケットOcado(オカド)の事例から

2000年創業の英国初のオンライン特化型スーパーマーケット。ウェブサイトやアプリを通じて、食品・家庭用品などの配送サービスを展開しています。

中央集約型倉庫を持ち、AIやロボットなどの最先端技術を駆使し仕分けなどを効率よく行っています。

日本でも2019年にイオンと戦略的パートナーシップを提携したということでご存じの方もいるのではないでしょうか。

ビジネスコンサルタント会社Yonder(ヨンダー)のイギリス人買い物客4000人以上を対象とした昨年の顧客満足度調査では、大手スーパーを抑えてOcadoが1位でした。

1. カスタマージャーニーにおける1つ1つの体験を最大限に活用する

Ocadoのサイトは、モバイルでもウェブでも見やすく使いやすいデザインがされています。

毎週買うものがある場合は「オカドレギュラー」に登録しておくと、月曜日に自動的に買い物かごに追加され、買い物リストの作成や「リストサーチ」でアイテムのリストを入力すると一度に見つけることができるといった便利機能があります。小さなことですが、顧客の負担が減るので購入前から良い印象を与えることができます。

また、スタッフと顧客とのやり取りの価値に重点を置いているようで、配達ドライバーがとても丁寧という口コミがあります。配達日にはドライバー名のメールが届き、初めての注文であることを予め知っていて丁寧に説明をしてくれたり、ウェルカムギフトをくれたりしたそうです。

オンラインブランドであっても、カスタマージャーニーでの1対1の体験をできるだけ魅力的で思い出深いものにしようという試みが感じられます。

2. 心理的な戦略で顧客ロイヤルティを向上させる

5回目の注文でシャンパンかチョコレートのバウチャーが貰えるというサービスは、それを楽しみに5回利用しようと顧客に思わせる、人の心理を利用した戦略です。

こういったサプライズ的なサービスは口コミで広まりやすい上に、またこのようなサプライズがあるかもしれないというロイヤルティに繋がりますし、支出の増加を促進する可能性があります。

また、1で挙げた「オカドレギュラー」、そして毎週同じ配達枠を予約できるようにした自動的なサービスも、知らず知らずのうちに顧客の中で習慣化していけば、継続利用に繋がります。

3. 顧客の共感を呼ぶ取り組みをする

配達サービスも充実しており、購入した商品を翌日に時間指定して配送してもらうことが可能で、1時間単位で指定できます。

住んでいる地域ですでに配達が始まっている場合は、配達枠が強調表示され、「この枠を予約して頂ければ燃料の節約に助かります」というようなことが書いてあります。

イギリスではサスティナブル意識の高い人が多いので、こういった環境保護に繋がる能率の良さに共感する顧客もいるでしょう。

製品やサービスの使用面だけだなく、顧客の価値観を把握した取り組みも顧客を引き付けるポイントと言えます。

顧客中心主義(Customer Centric)の事例をヒントに成功への1ステップを

顧客中心主義のメリットが分かったところで、企業を顧客中心主義にしたいと思っても、実際にどんな製品やサービスにするべきか、他社がまだ始めていないことはあるか、具体的にはなかなか思いつかないと思います。

ここに挙げた例のように、顧客を幸せにする方法は企業によって様々です。

従来の常識から離れて、まずは顧客の声を聴くことから始めてみてはいかがでしょうか。

▼弊社ではイギリス企業の事例紹介やマーケティングのサポートも行っております。お気軽にご相談ください。

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