顧客中心主義がビジネスを成功させる①4つのポイントと3つの指標とは
2019年辺りから、マーケティングに不可欠なものとして取り上げられるようになった「顧客中心主義(Customer Centric)」。顧客を第一に考えることではありますが、言われるがまま受け入れて実行するような顧客絶対主義とは違います。
改めてどんな意味で、マーケティングにどう取り入れたらいいのでしょう?
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顧客中心主義(Customer Centric)の意味と本質とは
顧客中心主義とは、顧客の声に耳を傾け、顧客自身も認識できていないようなニーズを汲み取り、それに応えるような製品やサービスで顧客を幸せにする概念です。
マーケティング界の巨匠セオドア・レビットが著書の中で紹介したドリルの穴理論「ドリルを買う人が欲しいのは穴である」は、マーケティング業界でよく例に出されるように顧客中心主義の本質を言い当てている分かりやすい理論です。
ドリルを買いに来た顧客はドリル自体が欲しいのではなく「穴」ですので、最適なドリルを薦めるにはいくつかのドリルの機能を説明すればいいのではありません。どんな素材のものに穴を開けたいか、どんな穴を何のために開けたいか、ドリルを使う人のことなどを聞き出す必要があります。穴を開けることができればドリルでなくてもいいので、もっと簡単で手っ取り早い製品を発明すれば、そちらの方が売れるでしょう。
つまり、製品を売ることを目的にするのではなく、顧客が抱える問題を理解し、それを解決するような製品やサービスで生活を豊かにしようというマーケティングが、結果的に製品の売り上げを伸ばし顧客の確保と維持に繋がるということです。
アメリカの調査・助言会社ガートナー(Gartner, Inc.)が発表した「デジタル・ビジネス時代に顧客中心主義になるための10の習慣」は、様々なところで取り上げられていますので既にご存じの方が多いと思います。
本記事ではそれを一部参考に、顧客中心主義に特に重要と思われる「4つのポイント」と「3つの指標」についてまとめました。
顧客中心主義(Customer Centric)で成功するための4つのポイント
1. 顧客の声に耳を傾け、そこから得たデータを民主化する
まずは、「どんなことに興味があるのか」「どこで何を買っているのか」などに至るまでの個人情報を顧客から様々なかたちで得なければ何も始まりません。その後、それらのデータを共有し活用します。
そのためにはデータの民主化が必要になってきます。データの民主化とは、企業においてほとんどの従業員がデータにアクセスでき、そのデータに基づいて迅速に意思決定を行える環境を構築することです。
専門家でなくてもデータ分析ができる人を社内に増やし、誰もがデータを見て理解できるようにしておく必要があります。データを集めることにそれほど価値はなく、データを活用して理解することで顧客を理解し、それを製品やサービスに生かすことが重要であるからです。
さらに、データは数値化することができるので、経営状況などを客観的に見ることができ様々な判断時に大変役立ちます。
2. 顧客からのフィードバックに対応する
顧客の声を聴くことができたなら、今度はそれに返答することが必要になってきます。
意見を大切にされサービスなどに反映されていることが分かれば、顧客は今後も会社に役立つ意見をくれますし、信頼関係を築くこともできます。
従業員個人名の入ったメールで返答すればより効果的です。
3. 顧客の潜在的ニーズを見極め、先回りする
レビットの「ドリルの穴理論」のところでも触れましたが、顧客自身も気づいていないような真の欲求を探り、先回りした製品やサービスを創り出すことが求められます。
イギリスでよく使われている乗り換え案内アプリケーションのシティマッパー(Citymapper)では、ルートや時間だけでなく遅延やストライキの情報までもお知らせしてくれるのですが、これは顧客の潜在的ニーズを探った結果だと思われます。
顧客は今まさに利用しようとしている交通機関がいつ来るかということを真に求めているからです。
4. 顧客の日常的な負担を減らす
顧客の負担を減らすことも、顧客の生活に貢献できる価値を提供することに繋がります。
製品が故障したときの対処やサービスに関する疑問などのように、想定できる顧客からの問い合わせを予めウェブサイトに掲載している企業が多いですが、そういったことも当てはまると思います。
また、店舗に赴かなくてもスマートフォンのアプリケーションで本人確認ができたりするサービスも、この時代ならではの工夫であり、顧客の負担を大幅に減らしているのではないでしょうか。
これらのことを生かし、新たなビジネスを始めたイギリス企業の事例は次回お伝えします。
顧客中心主義(Customer Centric)で成功を測るのに不可欠な3つの指標とは
顧客中心主義になるためのポイントは分かりましたが、それらを実際に実行したとして、自社が顧客中心主義として成功しているかどうかはどうしたら分かるのでしょうか?それを可視化するものが以下の3つの指標です。
1. 解約率(チャーン・レート) Churn Rate
「解約率」とは、一定の期間内に製品の使用やサービスからどの程度の顧客が離脱したのかを示す数値です。
新規の顧客獲得はもちろん重要ですが、獲得よりも解約が多ければ意味がありません。
もしこの数値が高ければ、価格・サービス内容の見直しや競合との比較が必要です。特定の層や業種の顧客に離脱が集中しているのであれば、サービス内容がその方たちと合っていないと推測することもできます。
2. 顧客推奨度(ネット・プロモーター・スコア) NPS : Net Promoter Score
「顧客推奨度」とは、顧客ロイヤルティ、つまり顧客の継続利用意向を知るための指標です。
「この商品を親しい友人や家族にどの程度薦めたいですか?」という質問に対する答えを点数化し評価します。
ちなみに、「顧客満足度」は現時点での評価であり、事前の期待と実際に感じた価値とのギャップを測るものですので、顧客満足度が上がれば売り上げが上がるわけではありません。
その点、顧客推奨度は、リピート買いや他者推奨というロイヤルティに直接的に関わる指標のため、売り上げに相関すると言われています。
顧客生涯価値(カスタマー・ライフタイム・バリュー) CLA : Customer Lifetime Value
「顧客生涯価値」とは、1人の顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益のことです。言い換えると、顧客が製品やサービスを使い続ける上で投下する金額の総額ということになります。
一般的には商品やサービスに対する顧客のロイヤルティが高いほど顧客生涯価値は高まります。
新規顧客獲得だけではなく既存の顧客を維持・拡大することは企業にとって重要なテーマです。
デジタルビジネス時代の顧客中心主義(Customer Centric)における「カスタマージャーニー」の重要性
顧客が製品やサービスに興味を持ち、購入して利用し続けている間までの、一連の流れから得た体験を「顧客体験(カスタマー・エクスペリエンス)」と言います。アフターサポートが必要な製品の場合はその体験も含まれます。
「カスタマージャーニー」は、そのような切り取った体験ではなく、顧客と企業の間で行われた全ての接点と取引、そのプロセスのことを言います。
誰が何を購入したかだけでなく、どのように購入しているか、購入に至るまでの取引がどのようなものかなどを把握することはとても重要です。同じ製品を購入していても、離脱する顧客と利用し続ける顧客がいるのはなぜか知るためには、カスタマージャーニーが必要であるからです。
カスタマージャーニーを把握できなければ、優れた顧客体験を提供することもできないということです。
現代のデジタル社会において、製品を購入するまでに、顧客は企業と多くの接点を持つようになっています。たいていの顧客は、製品やサービスに興味を持ったら、インターネットでサイトを調べSNSで口コミをチェックします。メールやチャットで問い合わせをする場合もあるでしょう。
リアルタイムで顧客と関わることができる環境は、要求や状況への素早い対応を求められているということでもあります。
優れた顧客体験を提供するには、製品の素晴らしさだけでは不十分です。
購入前から購入後までのジャーニー全体の中で、顧客を次のステップへ進めるにはどうするべきか、常に気を配ることが求められます。
▼顧客中心主義サービスの事例はこちらの記事でご紹介しています。
顧客中心主義がビジネスを成功させる②注目のイギリス企業の事例と戦略
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