イギリスのコスメ事情。日本製の無添加化粧品に輸出のチャンス到来?
イギリスのコスメというと、1990年代から日本に進出しているTHE BODY SHOPやLUSHの影響からか、「自然派」というイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。
たしかにイギリスでは古くからオーガニックや自然派のコスメを取り扱うブランドがありましたが、以前は美容への関心が高い一部の層で人気という印象でした。
しかし、ここ数年でそれが一般の層へも急速に広まってきています。
イギリスの化粧品・パーソナルケア市場は、2008~2018年の10年間で約2倍に成長しており、その中でも特にオーガニックやヴィーガン向けのスキンケア製品の需要が伸びています。
日本製の化粧品や美容。海外の反応
海外の人にとって、日本の化粧品には「無添加」や「安全」というイメージがあるため、現在イギリスで需要が伸びている化粧品の傾向と合致しています。
アジア発のコスメでは韓国製のものも世界的に人気ですが、「安価な割に質が良い」というイメージが先行しているため、日本製とはイメージが異なります。
日本や韓国にとって大きなコスメ市場である中国でも、日本製品に対して同様のイメージがあり、富裕層を中心に日本のコスメへの関心が高まってきています。
イギリスでは、2020年5月のmarie claireに『You’ve heard of K-beauty, now it’s time to wise up on J-beauty(韓国美容は聞いたことがあるでしょうが、日本の美容の存在に気が付く時がきました)』と書かれ、日本の美容法やコスメが注目され始めていることが分かります。
実際に日本のコスメブランドであるSUQQU(スック)は、ハロッズやリバティーの等のイギリスの高級デパートで販売されており、同様に日本のコスメブランドのSHIRO(シロ)は、ロンドンのキングスロードの等の高級店街に店舗を構えていて、どちらも自然派として認知されています。
海外の女性が日本人女性の真似をする?
フランスでは『Layering, secret de beauté des Japonaises(レイヤリング、日本人女性の美の秘密)』という、日本の美容について書かれた本が話題になりました。
自然派美容の専門家のフランス人女性が著者で、日本人が読むと多少事実と異なる部分があると感じる内容ですが、西洋人から見る日本のイメージ、または西洋人が求める日本のイメージがよく分かります。
タイトルにある「レイヤリング」は聞きなれない言葉ですが、著書によると、洗顔をして化粧水や美容液で保湿を重ねるという日本の丁寧なスキンケアを指しているようです。
著書の中では「こんにゃくのスポンジ」の使用が推奨されており、日本人は米粉や植物油のような無添加の天然素材をよく使うと、解説されています。
化粧品における日本製と海外製の違い
洗顔料は必要ない
「洗顔をして保湿をする」という、日本人にとって当たり前のスキンケア方法が著書として出版されていることからも分かるように、西洋人はこのような習慣にあまり馴染みがありません。
米国のエスティ・ローダー社が日本進出の際に行った調査では、「日本人は白人よりも皮脂量が20%多い」ことが分かりました。
気候と遺伝子のどちらの要因かは不明ですが、日本人や日本に住む人にとって、皮脂を洗い流す洗顔は必要であると言えます。
それとは逆に、白人は皮脂が少ないので洗い流すと乾燥してしまう上、欧米の多くの地域の水道水は硬水で、洗顔に適していません。
硬水に含まれるミネラルは、肌の保護バリアを破壊して乾燥を促すと言われており、入浴やシャワーの際に、顔に水がかからないよう気を付ける人もいるようです。
そのため欧米では、ふき取り化粧水でメイク落としをすることが一般的です。
美白という概念がない
日本に限らずアジア諸国で人気の「美白」化粧品ですが、欧米では理解されにくい商品であると言えます。
晴れた日の少ないイギリスや日照時間の短い国では、日に焼けた肌やそばかすが”バカンスを満喫した証拠”というポジティブな印象があり、自ら進んで日光浴をする人が多いのです。
また、「美白(Whitening)」という言葉が差別的と捉えられることも多いため、注意が必要です。
シミ等にアプローチする商品であっても、「エイジング」化粧品の方が理解されやすいでしょう。
化粧品輸出の成功の秘訣はローカライズ
日本の持っている「無添加」や「自然派」のイメージは、世界的にトレンドとなっているため、これを利用すればイギリスを含めた多くの市場で成功する可能性があります。
しかし、現地のスキンケアやメイクの習慣、気候や肌質の違いなどを考慮しない限り、使い方がよく分からない商品になってしまい、思うように売り上げが伸びないでしょう。
また、イギリスやヨーロッパは「オーガニック」と表示できる製品の規定や、輸入に関する規制が厳しいため、これらにも注意が必要です。
次回の記事では、イギリスで化粧品を販売する際の規制についてご紹介していきます。