音声マーケティングとは①音声アプリの種類&おすすめ音声SNS

音声対応のデジタルデバイスを活用してオーディエンスに訴求するマーケティングである「音声マーケティング」。マーケティング分野において将来性のあるキーワードに「音声SNS」が取り上げられたことで、今注目されています。

音声配信の1つとして昔から馴染みのあるものがラジオですが、今はそれだけではありません。スマートフォンの台頭で誰もが簡単に音声コンテンツを作成できるアプリが普及し、スマートスピーカーやスマートウォッチなどを利用して様々な場所で配信・視聴することができるようになりました。

音声アプリをどのように活用しターゲットにリーチすればいいのでしょうか?イギリス市場でマーケティングをするのにおすすめの音声SNSや音声マーケティングの実践方法などを4回に渡りご紹介します。


「音声SNS」は「音声アプリ」の1つ?音声アプリの種類と特徴

ユーザーが音声コンテンツを制作して配信できる音声アプリは、下記の3種類に分けられます。

 

Podcast(ポッドキャスト)

インターネット上で音声や動画のデータファイルを公開する方法の1つ。ポッドキャスト配信ツールアプリAnchor(アンカー)などで録音・編集し、その音声ファイルをアップロードします。

Apple PodcastやGoogle PodcastのようにPodcastと名の付くものだけでなく、Spotify(スポティファイ)やAmazon Musicなどでも配信が可能。自身の好きなコンテンツを制作して配信できるのが特徴で、ラジオとは違い過去の配信を含めて好きな時に好きな番組を選んで聴くことができる点で人気です。

イギリスには、2021年時点で1,910万人以上のポッドキャストリスナーがおり、2026年までに2,800万人を超えると推定されています。特にZ・Y世代の間で利用率が高く、26歳から35歳のイギリスのリスナーの40%近くが毎週Podcastを聞いていることが分かっています。

音声配信サービス

機材などを用意しなくても、スマートフォン1つあればアプリを利用して誰もが録音・編集・配信できるサービスです。

音声配信プラットフォームの有名なものには、中国のLizhi(リージー)やhimalaya(ヒマラヤ)、日本のVoicy(ボイシー)などがあります。Voicyのように配信者になるための審査を設けているプラットフォームは誰もが簡単にというわけにはいきませんが、不特定多数の配信が錯綜するプラットフォームと違い、自身のチャンネルを持つ特別感があり、リスナーからの信頼を得やすいというメリットがあります。

配信の目的や内容に合わせてプラットフォームを選ぶと良いでしょう。

 

音声SNS

テキストの代わりに音声を使用して対話するソーシャルネットワーキングサービスであり、英語圏では「Social Audio(ソーシャルオーディオ)」と呼ばれているようです。音声SNSアプリをダウンロードし、ルームを立ち上げ、ライブ配信によるリアルタイムの音声を配信します。

先に挙げた2つが「音声を配信してリスナーがその音声を聴く」という一方通行であるのに対し、聴く側も会話に参加するなど、サービス内でユーザー同士がコミュニケーションをとりながら楽しむことができるのが特徴です。

 

音声SNSにはどのようなプラットフォームがあるのでしょうか。海外の記事で最も人気なプラットフォームとして挙げられているものを特徴とともにまとめてみました。

 

 

音声SNSのおすすめ ―海外で最も人気な「音声SNS」

  1. Clubhouse(クラブハウス)

    2021年、コロナ禍を追い風に世界を席巻したソーシャルオーディオ革命の先駆者。傍聴だけも可能ですが、ルームを作成し他のユーザーをライブの会話に招待することで会話を楽しむことができます。
    2021年2月の時点で毎週最大1,000万人のアクティブユーザーがおり、米国外におけるダウンロード数では、イギリスはドイツ、日本に次いで3番目に多かったことが分かっています。しかし現在は、流行の背景にあった外出自粛期間の終了や類似機能を持ったアプリの登場により当初ほどの利用はないようです。

  2. Facebook Live Audio Rooms(フェイスブック・ライブオーディオルーム)

    Facebook の新機能であり、Facebookグループへ移動してスピーカーを招待するだけという簡単な方法で配信ができます。

    Facebookユーザーの中には、既に共通の関心事を通して繋がり合うFacebookグループに参加している人が多く、他のアプリを1から始めるよりは始めやすいのではないでしょうか。他のSNSとは比較にならないほどのFacebookユーザー数を考えると、このプラットフォームには潜在ユーザーが非常に多く存在していることになります。

    イギリスでは、推定総人口 6,790 万人のうち、Facebookのアクティブユーザーは約4,484万人で総人口の約66%に相当すると言われています。

  3. Spotify Live(スポティファイ・ライブ)

    スウェーデンの企業Spotify Technology(スポティファイ・テクノロジー)が提供する新しいソーシャルオーディオアプリで旧Spotify Greenroom(スポティファイ・グリーンルーム)。Clubhouseと同様、クリエイターがライブルームを開設してリアルタイムでリスナーと交流できるサービスを提供しています。

    同企業のSpotifyはイギリスの主要な音楽ストリーミングサービスであり、2021年8月に最もストリーミングされた曲で380万回と利用が多いことが窺えます。Spotify繋がりで、イギリスで音声SNSを始める人がLiveを選ぶ確率は高いかもしれません。

  4. Twitter Spaces(ツイッター・スペース)

    Twitter独自のソーシャルオーディオアプリ。ホストが立ち上げたスペースでスピーカー(ホストに発言権を与えられた人)等が会話できるようになっており、リスナーはフォローしていないアカウントも傍聴できます。
     無料ではありませんが、通常のフォロワーは見ることができない限定投稿を閲覧することが可能になるスーパーフォロー機能や、スペースに有料のチケット制を導入する機能を追加すると収益化も可能です。
     「2022年1月現在のTwitterユーザー数に基づく主要国(Statista:スタティスタ)」によると、Twitter自体の利用は米国(7,690 万人)と日本(5,895 万人)が圧倒的に多く、イギリスは6番目の1,840万人でした。また、世界の指導者や外務省のほとんどが公式のTwitterアカウントを持っており、市民や他の当局者と交流する手段として利用していることも分かっており、どちらかというと政治との繋がりが強いプラットフォームのようです。
     今月、Twitterの経営権を握ったイーロン・マスク(Elon Reeve Musk)氏が、米市民団体等が大手企業に広告出稿を控えるよう圧力をかけており、買収後に同社の広告収入が急減していることを明らかにしました。このことがイギリスの企業にも影響しているかは今のところ不明ですが、広告配信のプラットフォームとしての企業の利用は今後変わってくるかもしれません。
     各プラットフォームの利用者層や繋がりが強いジャンルを把握してコンテンツ・広告配信をする必要があります。  

この他にも、Clubhouseに類似した Fireside(ファイアサイド)、アメリカの掲示板サイトの新サービスで絵文字やコメントで会話に参加できるReddit Talk(レディット・トーク)、業界ごとにターゲットを絞れるLinkedIn Live Rooms(リンクトイン・ライブルーム)などがあります。既にSNSを提供している企業が新サービスとして音声プラットフォームを開発するパターンが多いようです。

 

 

デジタル音声広告の市場規模。音声コンテンツの収益化は簡単?

音声SNSのメリット

InstagramやYouTubeの普及で画像や動画で表現することが当たり前になった今、なぜ音声のみのメディアが注目されているのでしょうか?その主な理由は、視覚情報溢れる社会の中で多忙に生きる現代人の心を掴むことができたからと考えられます。音声のみのメディアである音声SNSは、至る所で視界に飛び込んでくる情報への煩わしさがなく、通勤・通学中や家事をしながらの“ながら”聴きで手軽に情報や知識を得ることができます。

また、マーケティングツールとしては、動画SNSと比べると参入者がまだ少なく、低コストで手軽にコンテンツ制作ができる点で企業にもメリットがあります。

 

デジタル音声広告市場の可能性

Statista(スタティスタ)によると、デジタル音声広告(Digital Audio Ad)の世界市場規模は、2022年の41億7,500万米ドルから2027年までに118億5000万ドルに達し、リスナーの数は16億3,290万人に達すると予想されています。

誰が聞いても同じものが流れるラジオ広告に対し、音声広告はリスナーの属性や嗜好などに合わせて差し替え配信が行われるためターゲティングが可能です。音声広告は世界の広告市場において注目を集めるセグメントなのです。

しかし、音声配信はラジオのように受動的に流れてくるものではないため、リスナー自らがコンテンツに興味を持ち参加して来なければ情報を届けることができません。一秒でインパクトを与え得る画像と違い一定時間はリスナーを惹きつける魅力が必要です。また、グローバルなリスナーを獲得するには、言語や文化の違いを考えたコンテンツ制作も必要になってきます。

収益化を目標にするなら、ただ音声SNSでコンテンツや広告を配信するだけでなく、VSO(音声検索最適化)やソニック・ブランディングなどでブランドを認知させる工夫も求められます。

 

再来週は本記事の続編として、音声マーケティングの実践方法や事例をご紹介します。

 

 

 

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出典・参考:

Statista「Estimated number of podcast listeners in the United Kingdom (UK) from 2017 to 2026」

THINKIMPACT「Clubhouse User Statistics」

High Fidelity「The 4 Most Popular Social Audio Apps in 2022」

Social Shepherd「30 Essential Facebook Statistics You Need To Know In 2022」

Statista「Most-streamed weekly tracks on Spotify in the United Kingdom (UK) as of August 12, 2021」

Statista「Leading countries based on number of Twitter users as of January 2022」

日本経済新聞「マスク氏、Twitter広告減に焦り 従業員5割減」

Statista「Digital Audio Advertising – Worldwide」

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