アサヒビールが買収した「クローシュ」の画期的なマーケティング
今年の2月、アサヒビールがオランダのビールメーカー「クローシュ(Grolsch)」を買収したことは、記憶に新しいかもしれません。オランダ王室御用達の「高級ビール」として、日本では知られている「クローシュ」。早くもこのイメージと、世界に股をかけるアサヒビールの市場とを利用し、新しいマーケテイングに乗り出しています。ここからは、今後の新しい広告の打ち出し方のモデルとなるようなアイディアを窺うことができるでしょう。
独自のソーシャルプラットフォームを形成
クローシュは過去1年間ほどで、「キャンバス(Canvas)」という独自のコンテンツプラットフォームに投資し、クリエイティブ思考の顧客を取り込むイメージ戦略を行っています。WEBサイトやホームページをいう呼び方ではなく、あえてコンテンツプラットフォームと呼ぶ理由としては、キャンバスは単純にクローシュの会社や商品についてを紹介しているサイトではないからです。キャンバスでは、クローシュの顧客が好むようなアーティストや、ミュージシャンに焦点を当てた記事コンテンツを配信しており、そういった意味ではWEBマガジンとったイメージが近いのかもしれません。1つのビールメーカーが、このようなコンテンツプラットフォームを持っているのは、異例といえるでしょう。
商品の宣伝をしない「新しい広告の形」
最近ではタレントやモデルが、ブログやSNSを介して、私服や食事をしたレストランを公開するなど、普段の生活スタイルを公開することによって、そういったスタイルに憧れる層をファンやフォロワーとして、取り込んでいくことが一般的になってきています。クローシュは、このようなマーケティングを会社として行っているといえるのではないでしょうか?キャンバスでは、プレミアムなイメージのクローシュのビールを好みそうな層が、憧れを抱くようなコンテンツを配信することを目的としています。そのためには、宣伝的な要素を排除して、純粋に文化的なものに仕上げていく必要があるというのが、クローシュの示している方向性です。Facebook、Twitter、Instagramで、アーティストやデザイナーの作品を配信し、そこからキャンバスへの流入を図るなど、自然な形の広告費をかけないマーケティングも行っています。また今年の頭には、DUSアーキテクトと、ジーンズのデナム社とのパートナーシップを締結しました。これらの企業とコラボレーションし、YouTubeを利用した動画配信も行うなど、ブランドイメージの形成に暇がありません。
ファンを増やすことが、購買につながっていく
このように、徹底的にブランドイメージを作り上げることにより、自然な形でファンを増やしていくことが、そこからの購買や、息の長い顧客へとつながっていくことは、言うまでもありません。クローシュのグローバルディレクターは、「まだまだ日本では、街の小さな子供です」と語っていますが、アサヒビールの傘下に入った今、クローシュが日本のマーケティングの在り方に、どのような影響を及ぼすのかが、今後の観察ポイントになりそうです。