情報はどこまで開示されるべき?自然派志向の消費者が増えれば…

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「顧客に情報を伝えることは大切ですが、その前に私たちのビジネスを変えておく必要がある」これは、マクドナルドのマーケティング副社長Emily Somers氏の言葉です。マクドナルドがイギリスに初めて出店したのは、1974年のことでした。当時はアメリカのものが世界的に受け入れられ、その中でもファーストフードは、非常に話題性の高いものでした。また、当時のイギリスでは、食育という考え方があまり根付いておらず、安く気軽に食べられるファーストフードは、瞬く間に成長を遂げました。しかし、近年イギリスでの食育が進み、消費者の考え方が自然派や健康志向へと移るにつれ、突如その成長はストップしてしまいました。

今まで通りの方法が上手くいかないなら

「長い目で見たら、何かを変えるべきか、それとも崖から転がり落ち続けるか、どちらが良いかは明確ですよね」マクドナルドはここで、批判的な消費者の意見にも耳を傾けることにしました。そして、塩分や糖分、脂肪をカットしたり、新鮮な果物を取り入れるなど、今までとは異なる方針のメニューも取り入れました。また、生産地の切り替えを行うなど、環境への配慮も始めました。このような取り組みを始めているという情報を消費者に開示する前に、まずは改善を図るところから始めたのです。消費者が求めているものを提供するために、マクドナルドは、消費者の意見やマクドナルド側の回答を公表するウェブサイトも設けました。このように、消費者の考えや行動に合わせて、ビジネスやブランドのイメージを変更することは、息の長いビジネスのためには、必要不可欠だといえるでしょう。

健康的な食だと言われている日本ですが…

イギリスでは、食育が進むにつれて、「生産の過程で環境に被害を及ぼす食品を摂らないように」という消費者も増えてきました。ここで話題に上ることの多い食品は、「パーム油」です。「パーム油」は、食品にしっとりとしたなめらかな食感を与え、その上コストもかからないため、食品業者をしては、非常に使い勝手の良い油なのです。主な生産地はインドネシアやマレーシアで、これらの地域では深刻な森林伐採が行われています。森林伐採により、多くの野生動物や、時に現地の住民さえもが住む地を奪われているという現状もあります。イギリスでは、食品のパッケージに、「パーム油」は「palm oil」と直接的な表現で表記されているため、自然派志向の消費者は、買い物の際にチェックし、買わないようにと心がけることができます。しかし日本では、「植物油脂」と表記されていることが大半のため、それが「パーム油」であると知ることができません。

消費者への情報の開示を

実は日本は「パーム油」の消費量が世界2位なのです。「パーム油」は環境を破壊するだけではなく、トランス脂肪酸などを含むため、健康への被害も懸念されます。消費者が自分の意志で食品を選ぶためにも、正しく分かりやすい情報が開示されるべきではないでしょうか。また、「パーム油」を含む食品を好む消費者が減れば、企業はイギリスのマクドナルドのように、それを変えようと取り組みを始めざるを得ません。マーケティングだけに留まらない、非常に難しい課題ではありますが、消費者の意識が市場を変え、やがて環境を変えるということもあり得るのではないでしょうか。

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