イギリス人女性CEOのインタビューから学ぶ。新しい働きかた
イギリスのラグジュアリーな旅行会社Inspiring Travel Company(ITC)が、100万ポンドの負債を抱えた時、突如CEOに就任したのは、ジェニファー・アトキンソン氏という女性でした。会社の危機は自分がCEOに就任できたチャンスであったと考える、ジェニファー・アトキンソン氏のインタビューより、女性の働き方について考えていきます。
会社が危機に瀕した際に…
会社が危機に瀕する中で、今後の経営方針を会長に提出し、突如CEOに就任したアトキンソン氏。そのような状況の下で、自らCEOに立候補するような態度を示した裏には、アトキンソン氏のマーケティングに対する底知れない自信がありました。「問題の解決方法や、ビジネスの機会を見ているのが、私の日常の90%の業務です。最も重要なのはマーケティングなのです」
顧客が求めているものを
オンラインで旅行の予約をするのが主流の現代ですが、ITCは電話のみで予約を受け付けます。「3ポンド安いからという理由で、私たちのサービスを利用するのは難しいです」ITCは他の業者よりも割高なってしまうとうことを、ユーモアが大切だと語るアトキンソン氏らしく表現しているのですが、決してそれをネガティブには捉えていません。オンラインで格安に予約できるという業者は、Booking.comのような大手があり、そのような業者と同じ方向性のマーケティングを行って、競争を仕掛けたくはないと、アトキンソン氏は明言します。もともとラグジュアリー志向であるITCらしさを活かすこと、そしてそれを顧客も求めているのです。したがって、電話予約の際の、専門知識を持ったスタッフの丁寧な対応や、顧客との人間関係を強化するという方針を取り、会社を危機から救いました。「インターネットが旅行業界を大きく変えたのは事実ですが、人々はまだ小売りでの体験を求めます。人々は今でも昔ながらの精肉店やパン屋を訪れて、自分の目で確かめて買い物をします。なぜ人々はまだサビル・ロー(「背広」の語源となった、ロンドン市内の高級オーダーメイド店の多い通り)に行くのですか?人はまだ人との繋がりや信頼関係がほしいのです」
女性CEOとして…
はじめの1年間は、他の社員から十分に尊敬されているのかという不安に駆られることもありましたが、しばらくすると、「フェラーリを乗り回すようなことをしなくても」社員から信頼され始めたとアトキンソン氏は語ります。実際のところ、女性であることへの大きなハンデを感じたことはあまりないというアトキンソン氏ですが、母親とCEOを両立することが非常に難しいことは、事実だと認めています。そんな中でも大切なのは、ユーモアだと言います。「私は子どもと学校で一緒に、オーガニックのケーキを作ってあげたことはないけれど、Marks&Spencer(イギリスのスーパーマーケット)から、何か買ってきてあげても、そんなに大きな問題にはならないはず」産後や育児休暇後の女性の社会復帰が簡単でないことが哀しいとけれど、今後アトキンソン氏のように、女性が会社のトップに立つ機会が増えれば、自然と会社の中で、母親としての権利も認められやすくなるのではないかと、アトキンソン氏は考えています。