退屈な現実よりも刺激的なニュースを。「白い嘘」か「真っ赤な嘘」か

StockSnap_G6AD5BNRIY.jpg

日本では「嘘つきは泥棒のはじまり」という諺もあり、「嘘=悪」だというイメージがあります。しかし英語では「White lie」という、「罪のない嘘」を指す表現が存在しており、おとぎ話やサンタクロースなどの夢を与える嘘、または誰かを傷つけないためにつく嘘などが、これにあたります。それでは「大切な家族を養うためにつく嘘」は、「White lie」と呼べるでしょうか。それとも、それによって迷惑を被る人が存在する限り、単なる「真っ赤な嘘」なのでしょうか。

「嘘」が家計を助けるなら

2年前のアメリカ大統領選挙の頃から、インターネット上に溢れる嘘のニュースが注目され始めました。それらのニュースの配信元を調べると、その多くが、東欧に位置する国「マケドニア」で作られていることが明らかになりました。マケドニアはアレキサンダー王の出身国でもあり、歴史的遺産の多い国ではありますが、現在では特筆すべき産業もなく、ヨーロッパの中でも特に裕福な国であるとは言い難い状況です。失業者も多いこの国の一部では、子どもの頃から親を頼ることはできないと察し、物乞いなど、自分自身で収入を得る方法を模索せざるを得ません。そのような状況下で、嘘のニュースでアクセス件数を爆発的に増やし、Googleアドセンスなどの広告収入を得る10代の若者たちが台頭しました。はじめはドナルド・トランプ氏の発言をまとめた記事を配信していた彼らですが、次第に嘘を付け加え、より過激なタイトルでアクセス数を伸ばしはじめます。彼らの収入は両親の収入を軽く超え、家計を助けてくれるため、両親は嘘のニュース配信を止めさせようとするどころか、「もっと面白い嘘を考えなさい」と彼らを後押しします。

あなたが広告主なら?

彼らの嘘は家族を助け、そのニュースを読んだ人も後に嘘であることを知り「なんだ嘘だったのか」と、簡単に受け流してしまうかもしれません。しかし、あなたが嘘のニュースを流された本人なら、不快感を感じるに違いありません。また、あなたが広告主で、嘘のニュース記事にあなたの広告が表示されてしまったらどうでしょうか。下記の記事でご紹介したP&Gのように、インターネット広告にかける予算を削減したくもなるでしょう。デジタル広告の歴史は終わりつつある?費用を削減するべきかそして言うまでもなく、嘘のニュースが社会的や政治的に与える悪影響は、はかり知れません。

GoogleやFacebookは対策を行っている?

このような事態を受けて、GoogleやFacebookは嘘のニュース記事がアクセスを集めないよう、そのサイトや記事が、検索結果の上位に表示されないようにしたり、サイトそのものを停止したりと、対策を行っていますが、その網の目をすり抜けるような方法で、作成者の若者達は次々に嘘のニュースを配信します。そのため、それらの記事が瞬間的であっても、大量のアクセスを集めてしまうという状況が続いています。嘘のニュース記事によって家計を助け、さらに自らが貧困から脱出して贅沢な生活をするために、マケドニアの若者たちは独学でWEBサイトの作り方を学び、英語も学んでいます。そのような彼らに罪の意識はなく、「騙されて記事を読む方が悪い」とさえ語ります。

嘘のニュースをなくすために

現在の新潟市の海岸線に位置する角海浜では、明治から昭和初期にかけて、「越後の毒消し」と呼ばれる食中毒・便秘・下痢に効能を持つ生薬が生産され、この土地出身の女性がそれを全国に売り歩きました。海岸に近いこの地域では肥えた土がなく、農業で生計を立てられず、明治以前は大変貧しい村でした。製薬の開発後、多くの女性が義務教育を卒業するのと同時に、毒消し売りになりこの産業に従事することによって、蔵の立ち並ぶ裕福な地域へと成長しました。現在は残念ながら、高齢化と過疎化が進んだため、この産業はほぼ存在しませんが、貧しい村が倫理的にも正しい方法で、かつ本来ならば稼ぎ柱にはなり得ない者(この場合は女性たち)の手によって、裕福になったという成功例といえるのではないでしょうか。嘘のニュースをなくすためには、その配信者の若者たちが、何か別の方法で生計を立てられるような手引きをすることが必要なのかもしれません。そうしない限り、いつまでも「いたちごっこ」が続いてしまうのではないでしょうか。

Previous
Previous

SNS疲れを克服した若者から学ぶ?SNSマーケティングのこれから

Next
Next

多くのブランドが気付かない「低コストで有効」な宣伝方法とは?