「守る」or「変える」誰もが知る"あるブランド"が出した答え
どんなに品質の良いものでも、「これはお母さんが使うものでしょ?」と感じたら、若者がその商品を手にすることは、あまりありません。かつては売れていたブランドの商品が、このようなイメージのために売り上げを落としていくというケースは、決して珍しいことではないでしょう。ここ数年では、SNSの普及により、一度このようなイメージがついてしまったブランドは、以前にも増して急激に評判を落としてしまうようになり、特にFMCG(日用消費財)業界では、危機感を持つ企業も増えています。世界的に幅広い層に支持を得ているハーゲンダッツも、実はその問題に悩まされたブランドのひとつでした。
歴史のあるブランドでも
ハーゲンダッツの歴史は古く、1961年からすでにその名前が使われていました。1990年代には、男女のカップルがひとつのアイスクリームをシェアする、白黒の映像のテレビCMが放映され、今でもブランドを象徴する広告だと、多くの社員が認めているのだそうです。「アイスクリームは子どもの食べ物」というイメージを覆し、「大人のための贅沢なアイスクリーム」を定着させたハーゲンダッツは、長い間このテレビCMのようなイメージを守り続けてきました。しかし、かつての美しいテレビCMも、現代の若者の感覚とはズレがあり「古臭い」と映ってしまうことは否めません。
ブランドイメージの変更
ハーゲンダッツの副社長Jennifer Jorgensen氏は、3年前からブランドイメージの変更を広告代理店と共に進めてきました。その具体的な変更としては、アイスクリームのパッケージはもちろんのこと、ロゴ、店舗のインテリア、コミュニケーションの方法など、多岐に渡りました。変更の際のキーワードとなったのは、和訳すると「インスタ映え」となりそうな、「Instagrammable」という言葉です。「ミレニアル世代は大変重要なターゲットです。その世代をの支持を得られなければ、今後30年、事業を行うことが難しくなります」とJennifer Jorgensen氏は、語ります。しかし、当然のことながら、変更には、古くからの顧客を失うかもしれないというリスクが伴います。このような不安を晴らすため、新しいパッケージと広告のテストは、若者と同時に、少し上の世代に向けても行われました。すると、どちらの世代からも高評価を得ることができました。「私たちはリリー(心の中に住む若い気持ちをJennifer氏はこう呼んでいる)をみんな持っているものなのです」
「変えるもの」と「守るもの」
ブランドのイメージを変更するのには、多くのリスクが伴いますが、長く生き残っていくためには、時代の変化に合わせて、柔軟に変化していく必要があります。しかし、ハーゲンダッツは贅沢なアイスクリームというコンセプトは変えず、材料の値段が高騰しても、安価な添加物の使用はしませんでした。これをしたらブランドが駄目になってしまうと、Jennifer Jorgensen氏は語ります。時代に適応しつつも、このようなブランドの核となる部分を守れば、古くからの顧客を離すことなく、新しい世代の顧客も獲得していけるのではないでしょうか。