ソイミートもサステナブルフード?英国で人気の代替食品と市場の現状

likemeat-By_w0qmxzx0-unsplash.jpg

SDGs達成を目指す動きが広がる中、食品もサステナブルを謳ったものが多く見られるようになってきています。サステナブルフードとは、広義には「生産から消費までのプロセスにおいて社会や環境の持続可能性に配慮した食品」のこと。廃棄食材を利用した製品だけでなく、ソイミートなどのヴィーガン向け代替食品もそれに当たります。

過去の記事「ビーガンが地球の未来を救う?サステナブルな取り組みとは」でも触れましたが、家畜によって発生する温室効果ガスが環境を悪化させていると言われており、健康志向や動物愛護だけでなく環境保護の観点からも動物性食品の消費を抑える動きが見られるからです。

本稿では、サステナブルフードの中でも今話題の食肉代替食品に焦点を当ててみたいと思います。

プラントベースミートなどが欧州で大ブーム。

英国市場の成長率は

豚肉の代わりにジャックフルーツ(パラミツ)、牛乳の代わりにココナッツミルクやアーモンドミルク、モッツァレラの代わりにビタミンBを配合させた豆腐、というように、欧州では人々の健康志向や環境保護意識の高まりによって、様々に工夫を凝らした食肉および乳製品の代替食品が普及しています。
特に、ソイミート(大豆ミート)やグルテンミートなどの食肉代替食品は、最近では著しい進化を遂げ、見た目も味も肉製品にそっくりなものが出回っています。

欧州における食肉代替食品の主要市場の1つであると言われている英国ではどうでしょうか。英国では、フレキシタリアンの多いフランス、ドイツ、スペインに比べ、ヴィーガンやベジタリアンを名乗る消費者の割合が高く、植物性食肉代替食品を消費する人の70%が週に数回は代替食品を食べることが分かっています。

また、「大豆たんぱく製代替肉」と「豆腐および豆腐原料」は、マイコプロテインやグルテンミート(セイタン)、テンペなどその他製品と比べるとダントツで市場シェア率が高いです。豆腐からは家庭でも簡単にソイミートを作ることができ、ハンバーグやソーセージなどの代替肉としてそのまま利用出来るほか、たんぱく質の豊富さや脂肪分の低さといった魅力があるからと思われます。

英国ヴィーガン協会によると、英国の食肉代替市場は、2019年の$4億8,920万(£3億6310万8700 /$1=£0.74)2025年には$7億2,680万(£5億3946万7300)に達すると予想され、2020年から2025年の年平均成長率は6.8%と予測されているとのこと。これは、ヨーロッパの肉代替市場全体のほぼ30%を占める数値となります。
代替肉メーカーの継続的な成長と消費者の環境・健康意識の高まりに促進され、英国における代替肉の需要は今後ますます高まるでしょう。

※ マイコプロテイン・・・真菌類由来のタンパク質
※ テンペ・・・インドネシア発祥の大豆などをテンペ菌で発酵させた醗酵食品

どの代替肉カテゴリが強い?

様々な企業の製品が普及する英国市場

2018年、英国はヴィーガン新製品開発の発売数で世界トップの座を獲得しました。それ以降、英国市場にはどのような代替肉製品が出回っているのでしょうか。

最も有名と思われるのが世界18ヶ国で販売されているイギリスQuorn(クオーン)社の製品です。Quornは、微細藻類やマイコプロテインなどを他の栄養素と組み合わせて発酵させ、短時間でタンパク質を生成する技術であるバイオマス発酵の先駆けでもあると言われています。
また、チキンナゲットの代替であるNuggetのポップアップショップを出店したり(9/23-25:現在閉店)、新製品を開発しフレキシタリアンでもない消費者の興味を引きつけたりと、当市場に欠かせない存在となっています。

代替肉を扱うのはメーカーだけではありません。レストランチェーンのWagamamaは、ベストセラーカツカレーのグルテンミートバージョン「The Vegatsu(ベガツ)」をはじめました。
グルテンミートは代替肉の中で最も早い速度で成長しているカテゴリであり、2020年から2025年の間の年平均成長率は9.9%と予測されています。

他には、Fry Group Foodsをはじめ様々なメーカーが、近年英国市場を支配するTVP(Textured Vegetable Protein:植物性タンパク質)を利用した製品を製造。また、大手スーパーマーケットSainsbury’s(セインズベリー)は2019年設立の英国メーカーPlant Power(プラントパワー)のテンペをイギリスで初めて販売しています。
TVPは2019年時点で市場全体のほぼ44%に相当する価値があり、用途の広い成分であることから様々な製品に取り入れることができるため、今後も期待の高いカテゴリです。
一方テンペは、インドネシアでは人気があるが英国市場を占める割合はわずか2%というのが事実。しかし、納豆のような栄養価の高さやアレンジレシピを広めれば成長の可能性があると思われます。

時代はレスミート?

安心できる原材料の代替肉が求められる

このように、英国では多くのメーカーが代替肉を製造し、レストランやスーパーマーケットで目にすることも日常になってきています。需要の高さを窺い知る一方で、本物に似せるために人工的に造り上げた食品は何から出来ているかよく分からず不安という消費者もいることを忘れてはなりません。

20年ほど前のことですが、アメリカの消費者擁護団体Center for Science in the Public InterestがQuornの製品を食した数十人のアメリカ人が病気になったと主張し、FDA(アメリカ食品医薬品局)に販売禁止を求めたこともありました。このことが書かれているNewsweekによれば、「英国で17年間(当時で)販売されているQuornよりもピーナッツで病気になる人が多いから心配する必要はない」とまとめられています。実際に今でもQuornの人気は衰えていない訳ですが、具合が悪くなった人々がいることも事実であり加工食品への不安は消えません。

このまま人々の環境・健康意識の高まりが衰えなければ、レスミートを盛り上げようとする動きがより活発になり、本物の肉製品以上に代替肉製品がスーパーマーケットに並ぶ日が来るかもしれません。しかし、身体に良いものでなければ本末転倒になってしまいます。

日本でも、前橋市の中華総菜メーカーによるキャベツサイダーや名古屋で有名な桂新堂などが共同開発したサステナブルえびせんべいなどのように食品ロスの観点でサステナブルフードが開発されつつあります。代替食品は欧州ほど普及していませんが、近い将来、日本食の強み”発酵”を活かした安全な代替肉製品が開発されることを期待したいですね。

 

参考:英国ヴィーガン協会「The UK market is set for incredible growth

Previous
Previous

ブランディングの意味とは?強化プロセスをわかりやすく解説

Next
Next

SDGs 日&英企業の食品ロスへの取り組み。個人でも出来ることは?