オーガニックコットンとは?メリットと日本の問題点
オーガニックコットンとは?
オーガニックコットンとは、認証機関に認められた農地で、栽培に使われる農薬・肥料の厳格な基準を守って育てられた綿花のことです。認証を受けるのには2~3年間以上の生産実践が必要となり、認証農家となった後も、定期的に専門家による農地や栽培方法のチェックが行われます。
また、オーガニックコットン製品とは、認証を受けた綿花を使った上で、基準を守って製造された綿製品を指します。その基準には、紡績・織布・ニット・染色加工・縫製等の全ての工程を通してトレーサビリティーを確保すること、オーガニック原料の含有量を守ること、化学薬品の使用による健康や環境的負荷を最小限に抑えること、労働の安全や児童労働などの社会的規範を守ることなどがあります。
オーガニックコットンのメリット
環境に良い
通常の綿花の栽培には、他の農作物と比較してもかなり多い量の農薬が使用されます。世界の農薬使用量が過去最高となった1990年代には、殺虫剤の20%以上が綿花に使用されていました。綿は昆虫による食害を大変受けやすいためだと考えられます。殺虫剤だけではなく、収穫の効率を上げるためには枯葉剤も必要でした。
また、効率化のために地下水を汲み上げることにより、地下水の枯渇も問題視されています。
農薬や肥料を含めた生産環境の基準を守ったオーガニックコットンが広まれば、こういった問題も少しずつ解決されていくのではないでしょうか。
人権に配慮している
枯葉剤と聞いてベトナム戦争を思い出した方は多いかもしれませんが、通常の綿花の栽培に使用されるのもほぼ同じものです。したがって、このような農薬による生産者や近隣住民の健康被害が懸念されています。
また、発展途上国などの貧しい農家では児童労働の問題も抱えています。綿製品の生産においても、低賃金の長時間労働のような人権問題があります。
オーガニックコットンの認証を受けるためには、このような問題もクリアしている必要があるのです。
肌に優しい??
オーガニックコットンは「肌に優しい」というイメージがあるかもしれません。
しかしながら、実はオーガニックコットンではない綿花でも、残留農薬は大変少なく、化学的なテストを行っても検出するのが難しいレベルなのだそうです。したがって、肌に優しいというのはメリットと呼べない可能性があります。
オーガニックであるかないかに関わらず、スーピマ種のような長綿はしなやかで肌触りが良いことで知られています。長綿とは1本の繊維が35mm以上になる綿花のことで、1本1本の繊維が長ければ、肌触りがゴワゴワしないというのは容易に想像できます。肌に優しいという効果なら、オーガニックである以上に長綿であることが重要かもしれません。
しかしながら、化学物質過敏症やアレルギー体質の方の中には、オーガニックコットンは快適に身に着けられると感じる方もいるようで、肌に優しいメリットがないと言い切ることもできません。
オーガニックコットン認証とそのマークとは
オーガニックコットンの認証機関は1つだけではありません。機関によって認証マークも異なります。
世界共通の基準では、OCSとGOTSの2種類が主流です。全体的にGOTSの基準の方が厳しいと言われています。GOTSはオーガニックコットン製品だけではなく、農家の認証も行っています。
国や地域によっても様々な認証機関があり、USDA(米国農務省)、TDA(テキサス州農務局)などが有名です。日本においてはNOC(日本オーガニックコットン流通機構)が認証を行っており、基準すべてをクリアした商品にはNOCコットンラベル、基準すべてをクリアしていなくても、環境に配慮して製造された商品にはNOCグリーンラベルを付けることが認められます。
日本のオーガニックコットンの問題点
現在の日本の綿花の自給率はデータ上ではゼロ%です。日本にも綿花の農家は存在していますが、大変少ないようです。したがって、日本製の綿製品は輸入した綿花を使って、日本で加工されたものがほとんどです。将来的に日本に綿花が入ってこなくなるのではないかと、懸念する専門家がいるのも事実です。
国産のオーガニックコットン製品も、ほとんどの場合、原料となる綿花は海外で生産されています。
生産者が少ないためなのか、日本の有機JAS認証制度では綿花が対象外で、オーガニックの製法で生産している農家でも認証を受けられないという現状があります。それなら海外の認証を受けたら良いのでは?と考えてしまいますが、日本の小さな綿花農家にとって、米国等の大規模な農家向けに作られた海外の認証を受けるのは、様々な面であまり現実的ではないようです。
SGDsなオーガニックコットンが広まるために
オーガニックコットンは環境や人権に配慮したSDGsな素材ですが、現状では世界の綿花生産量の1%程度にしか満たないと言われています。それでも生産の割合は増加傾向にあります。生産背景の分からない製品は買いたくないという消費者が増えてきているため、今後はオーガニックコットンの生産や製品も、もっと増えていくことのではないでしょうか。