修理やレンタルでエコな取り組み。消費スタイルの変化とサステナブルな百貨店
弊社の記事でも頻繁に登場する「SDGs」「サステナブル」。今や世界的流行ワードとなり、様々な業界において、環境に良い製造過程、廃棄物の再利用、ナチュラル素材の使用などをキーワードとして製品やサービスを提供することが当たり前のようになってきています。サステナビリティに配慮した活動であることが前提という空気になっている中、イギリスでもサステナブルでない製品はセレクトしないという小売業者も出てきています。
そのような持続可能性を意識した取り組みは、世界2位の環境汚染産業と言われるアパレル業界でとりわけ顕著に見られます。
レンタルファッション市場の現況、地球保護のために百貨店としてはほぼ類なき挑戦をし続けるイギリスのSelfridges(セルフリッジ)の取り組みなどから、今後益々広がっていくであろう新たな消費スタイルについて考えてみましょう。
サステナビリティを考慮する消費者の増加、レンタルファッション市場の可能性
益々エコロジカル志向な英国消費者
世界のファッションレンタル市場は2026年までに74億5000万ドル(≒1兆922億725万円 / 1ドル=147円)に達する可能性があり、現在のほぼ2倍になると予測されています。
このようなアパレルレンタル市場の急速な成長の背景には、ファッション業界の環境的影響に対するより持続可能な解決策に対する消費者からの需要の高まりがあります。
英国のビジネスコンサルタント会社Eden McCallumの約1000人を対象とした調査において、消費習慣の持続可能性に関心を持っていない英国の人々はわずか8%であり、61%は懸念している、または非常に懸念していることが分かっています。
36%が持続可能性に優れた信頼できるブランドを頻繁に、または常に選択。そして、34%が定期的に購入する新製品の数を減らし、44%はリサイクルまたは堆肥化可能なパッケージを含む製品やブランドを定期的に選択しています。
ファッション購入チャネルはレンタルが2位
また、英国を含む6ヶ国で実施された消費者調査2020年から2023年の予測によると、消費者のファッション購入チャネルはセカンドハンドに次いでレンタルが多く、2023年もそのままの利用率で継続していくと予想されています。
セカンドハンド 21%→27%
レンタル 17%→17%
ブランドストア オフライン 14%→12%
ブランドストア オンライン 13%→13%
オンライン マルチブランド小売店 14%→11%
オフライン マルチブランド小売店 10%→8%
アウトレット オフライン 10%→8%
マーケットプレイス 5%→5%
オンライン アウトレット 3%→2%
サブスクリプション 1%→1%
2020年にはコロナ禍で老舗百貨店Lord & Taylor (ロード&テイラー)を買収したことでも知られるLe Tote(ル・トート)が経営破綻。ファッションレンタルに月額制サブスクリプションモデルを取り入れた先駆けと言われるRent the Runway(レント・ザ・ランウェイ)が衰退し、2021年には上場し顧客ベースを取り戻しつつある中で従業員の1/4を解雇と、ファッションレンタル業界に激震が走りました。
しかし、先に挙げた市場規模の予測成長率や購入チャネルに関するデータを見る限りでは、ファッションレンタル業は今後も可能性がありそうです。恐らくサブスクリプションサービスを利用してレンタルする人が減ってきているということだと思われます。
そんな中、単なるショップではなく常に少し違うことをしようと努めてきた英国の有名百貨店が、レンタルだけではない新たな取り組みをはじめました。
修理やレンタルでエコ&サステナブルに。百貨店Selfridges(セルフリッジ)の挑戦とは
買い物の概念を変えるサステナブルな百貨店
Selfridgesは英国の高級百貨店チェーンであり、ロンドンのオックスフォード・ストリートにある旗艦店はローカルだけでなく観光客にも人気のショッピングスポットとなっています。
外壁にイメージカラーのイエローで「LET’S CHANGE THE WAY WE SHOP(買い物の仕方を変えよう)」の大きな文字を掲げているように、単にものを売るだけでない小売活動の豊かな歴史があります。例えば、2005年の毛皮の禁止から2018年までにプラスチック製の水・炭酸飲料のボトルを段階的に廃止するまで、過去15年間に渡り人と地球を事業の中心に据えるための画期的な措置を講じてきました。
そんなSelfridgesが2020年8月に立ち上げたプロジェクト「Project Earth(プロジェクト・アース)」が話題になっています。
ファッションやジュエリーを修理&レンタル
Project Earthは小売業の改革と2025年までに買い物の仕方・ビジネスのやり方を変えることを約束するものです。具体的には、商品に、よりサステナブルな素材を使用することの推進、Rental(レンタル)・Repair(修理)・Resell(再販)・Refill(詰め替え)を推進する循環に焦点を当てた小売りモデルの構築などを行います。
消費者はオーガニックコットンを使用して作られたものからビーガンまで、9,000以上のサステナブルな製品、49の再販およびレンタルブランドと1,000以上の詰め替え可能な美容製品を店舗やオンラインで購入できます。
独自のサービス“Repair”では、靴・アクセサリー・ジュエリー・メガネの修理、時計の電池交換などが可能。2020年に修理コンシェルジュを導入して以来、約1年間の間に60人以上の顧客がアドバイスを受け、最も人気のあるサービスの1つである「The Restory(オンラインで予約・見積もりができ、高度な色・革の修復までしてくれる)」では、1,600件の修理を提供してきたそうです。
また、店舗受け取りのために梱包を節約した“ネイキッド・クリック&コレクト”を試行するなど、製品のパッケージングと配送におけるプラスチック廃棄物に積極的に取り組んでおり、すべての使い捨て輸送用ハンガーをサステナブルな代替品に置き換えることも目指しています。
このような取り組みは、環境保護だけでなく修理や再販を通してものを大切に扱う文化の構築にも繋がる上に、顧客は地球を犠牲にすることなく買い物を楽しむことができます。顧客を楽しませるだけでなく商品へのリスペクトも感じさせる、ものを売る小売業として本来あるべき姿なのかもしれません。
サステナブルな取り組みを企業に求める消費者も
同じく英国の老舗百貨店であるJohn Lewis(ジョン・ルイス)も、2022年、より持続可能な選択肢を顧客に提供するためにオンラインレンタルサービスを開始しました。
より多くの英国消費者が企業や政府の行動が環境のサステナビリティに最も影響を与えると考えています。消費者の約79%が政府の行動が重要であるとし、続いて企業(76%)、個人(72%)の行動と、企業に期待している人々が多いことが分かります。
その期待に応える計画を立てている企業は、遅かれ早かれ、消費者が持続可能性をより意識するようになったことを利益に繋げることができるでしょう。
環境に良いことをしながら最新のトレンドを試すことができるファッションレンタルは、SNSに載せるためだけに一流ブランドを身に付けたりお洒落をしたい人々にとっても、手が届きやすく罪悪感のない消費スタイルと言えます。SNSの普及とともに様々な業界でレンタルサービスの需要が高まってくるかもしれません。
▼弊社へのご質問はこちらからお気軽にご連絡ください。
出典:
Forbes「U.K. Dragons Take A Bite Of Fast-Growing Clothing Rental Market」
Consultancy.uk「UK consumers embracing more sustainable behaviour」
Selfridges「SELFRIDGES PROJECT EARTH」
Evening Standard「Selfridges: let’s change the way we shop and the way we do business」
Internet Retailing「John Lewis moves into growing fashion rental market through tie-up with Hurr」