イギリスの洗濯事情から読み解く、売れる日本製品
今治タオルなど、日本製の布製品は海外でも人気です。そのような布製品やアパレル製品で海外進出を試みる場合、知っておきたいのは海外の洗濯事情ではないでしょうか。この記事ではイギリス在住者のリアルな声を元に、イギリスの洗濯事情を詳しく見ていきます。
イギリスの水は硬水?
水の硬度はカルシウムとマグネシウムの含有量で決まります。WHO(世界保健機関)の基準では、硬度0~60mg/l 未満を軟水、60~120mg/l 未満を中程度の軟水、120~180mg/l 未満を硬水、180mg/l以上を非常な硬水と呼びます。これに従うとロンドンの水は硬度220mg/l程度で非常な硬水、同じイギリスでもエディンバラの水は30mg/l程度で軟水です。ちなみに東京の水は硬度60mg/l程度で軟水または中程度の軟水です。
海外の他の地域と見ると、スコットランドとスペインのマドリードを除いたヨーロッパのほとんどの地域の水は硬水~非常な硬水です。北米は地域によってかなり差があるようです。アジアはソウルと台北は軟水、北京は硬水です。
硬水で洗濯するとどうなる?
硬水に含まれるカルシウムとマグネシウムが洗濯物に残ると、衣類やリネンはゴワゴワと硬くなり、色もくすみます。特に真っ白なものや色の淡いものは、洗濯回数を重ねるごとに徐々にグレーっぽく変色していきます。布が傷んで穴が空いてしまうこともあります。
また、洗濯槽にライムスケールと呼ばれる炭酸カルシウムの塊が蓄積されることもあるため、放っておくと掃除が大変になるだけでなく、洗濯機の故障の原因にもなります。
イギリス在住者の洗濯事情
イギリスの洗濯に欠かせないカルゴン
前出のように硬水での洗濯にはたくさんの不都合が伴います。そこでイギリス在住者の多くが使用しているのが、硬水を軟化させるWater Softener(ウォーターソフトナー)です。液体、粉末、タブレットなどの形状があり、洗濯の際に洗剤と一緒に投入します。様々なメーカーのものがありますが一番よく目にするのがCalgon(カルゴン)というアメリカのブランドのもので、イギリス以外のヨーロッパ諸国でも販売されています。
また、家庭によっては水道本管に溶解したミネラル(硬度塩)を除去する軟水器を取り付けていることもあります。
柔軟剤の使用頻度は週2-6回
Statistaの調査によると、2015~2020年のイギリスにおける柔軟剤の使用頻度は1週間に2-6回使用する人が約1千30万人と、最も多いことが分かりました。日本でもよく目にするアリエールやレノアのようなブランドに加え、オーガニック系も人気です。
30~40℃のお湯で洗うのが一般的
硬水に含まれるカルシウムとマグネシウムは水を沸かすことによって完全にとはいかなくても、多少除去されます。そのせいかイギリスで最も一般的な洗濯の温度は40℃のお湯です。最近では衣類を長持ちさせエネルギーも節約できるという観点から、低い温度で洗う人が増えていますがそれでも30℃程度のお湯です。
水温が高いと汚れが落ちやすいのは確かですが、衣類の色落ちも起こりやすいのが実情です。そこで少しでも色を明るく鮮やかに保つため、色物用洗剤を使用する人が多いようです。
白い物、色の濃い物、薄い物、分けて洗濯
上記のようにお湯で洗うと色落ちが起きやすいので、白い物、色の濃い物、薄い物を分けて洗濯する人が多いです。白い物を洗う際は黄ばみやくすみを防止する洗剤、色付きの物を洗う際は色物用洗剤と、洗剤の種類を分ける家庭もあります。
イギリスの洗濯物干し事情
景観を気にする人が多いのと、にわか雨も多いため、イギリスでは屋外の目立つところに洗濯物を干す人がほとんどいません。部屋干しが一般的ですが、屋外に干す場合は表通りに面した場所ではなく裏庭に干すことが一般的です。
だいたいの家庭には折り畳み式の物干し竿があり、室内で最も一般的な洗濯物を干す場所はバスルームです。日本人の感性では湿気のある風呂場に洗濯を干すのに抵抗がありますが、イギリスは湿度が低いので意外と問題がないようです。
日本製品の輸出で気を付けたいこと
布製品やアパレル製品をイギリスで売りたい場合、硬水での洗濯や高い温度での洗濯に耐えうる堅牢度が必要です。ヨーロッパ基準の検査をクリアすることは必須ですが、日本製品は品質が良いと考えるイギリス消費者の期待を裏切らないためには、基準を上回る数値が望ましいでしょう。洗濯物を屋外に干す人が少ないので、耐光堅牢度は基準を満たす程度で良いかもしれません。また、硬水の洗濯で製品の風合いが損なわれない方法を明記したケアラベルを作成するのも良いでしょう。
洗濯する毎に色がくすんでしまうことを当たり前だと思っている人が多いので、タオルやリネンは真っ白ではなく色物や柄物を好んで買う人が多いです。売る商品を選ぶ際には念頭に置いておくと良いでしょう。
また、日本ほど湿度がないとはいえ部屋干しなので、布製品は速乾性のある物が喜ばれます。布製品やアパレル製品以外では、坊カビ性に優れた日本の部屋干し用洗剤が硬水に対応できれば、イギリスで市民権を得られるかもしれません。
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