イギリスのグリーティングカード市場②パーソナライズ人気と注目のARカード

グリーティングカードを豊富に扱うイギリスの大手ギフト・文具ブランドPaperchase(ペーパーチェイス)が、今年4月に全106店舗を閉店しました。1968年以来50年以上多くのファンに愛されてきましたが、長年に渡る売上不振とコスト高騰を受けて経営破綻。新型コロナウイルスによるロックダウンと消費者のオンラインショッピングへの移行も影響し、大手スーパーマーケットチェーンTESCO(テスコ)に店舗や従業員を含まない取引で買収されました。

このように、店舗を閉店に追い込まれたグリーティングカード会社がある中、本当にイギリスのグリーティングカード市場は可能性があるのでしょうか?イギリス市場で生き残ることができそうなグリーティングカードはどのようなものか調査してみました。


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イギリスのグリーティングカード市場①根付くカード文化・紙媒体でも需要あり?

 

人気のグリーティングカード。キーワードは「パーソナライズ」

イギリスのマーケティング会社Salience(セイリアンス)の2022年レポートによると、グリーティングカード業界全体では2021年から2022年にかけてマイナスの動きがありましたが、一部のブランドは知名度が大幅に高まるなどブランドによって利益に差があるようです。

例えば、先に挙げたPaperchaseが22%の損失を出したにも関わらず、Boots Photoは60%も利益が増加しており、前年比75%の成長を記録しています。Boots Photo(ブーツフォト)はイギリスの有名ドラッグストアチェーンBootsのサービスで、オンライン写真印刷やパーソナライズされた写真入りギフトの提供を行っています(ドイツの印刷会社CEWEが提供)。そのギフトカテゴリの1つにグリーティングカードがあり、顧客は好きな写真を使用してサイズやレイアウトなども自分好みのオリジナルカードを作成することができます。

他にも、同レポートの「2022年に最も大きな成長を遂げたオンライングリーティングカードブランド」上位のJibJab(ジブジャブ)やSnapfish(スナップフィッシュ)、Zazzle(ザズル)を見てみると、パーソナライズギフトの中にグリーティングカードがあり、Boots Photo同様好きな写真でカードが作れるサービスを提供しています。

Paperchaseがパーソナライズ可能ではない伝統的な紙媒体のグリーティングカードを販売していたことを踏まえると、パーソナライズ可能かどうかがブランドの勝敗を分けたポイントの1つと考えられるのではないでしょうか。

すなわち、ここ2、3年のイギリス市場におけるトレンドキーワードの1つは「パーソナライズ」であり、オンライン上でパーソナライズしたグリーティングカードのデータを購入し顧客が自分で印刷する方法や、メールで送ることができるeカードも需要があるようです。

 

アプリ利用でカードが立体的&アニメーション化!注目の「ARグリーティングカード」とは?

1人あたりのカード購入数が他のどの国よりも多く年間33枚というイギリス。紙媒体のグリーティングカードも未だ需要があるとは言え、一方でeカードのようなデジタル化も進んでいます。

イギリス市場にも進出している米国最大のグリーティングカードメーカーHallmark(ホールマーク)は、eカードをさらに進化させた「ビデオグリーティングカード」を提供しています。既存のビデオにオリジナルメッセージや写真を追加して作成でき、メールなどに添付して送ることができるものです。

しかし、今最も注目されているのがARを利用したグリーティングカードです。「AR」とは英語Augmented Realityの略であり、「拡張現実」を意味します。

グリーティングカードへの活用方法はいくつかありますが、大体がスマートフォンアプリの使用を必要としています。無料でダウンロード可能な指定のアプリを使用してカードを見ると、そこに描かれている動物などが立体的に飛び出して見えたり、一部が動いたりして見えるといった仕組みです。例えば、アプリを通してお寿司が並んだイラストのカードを見ると、お寿司が回転寿司のように左に流れて行く映像が見えるのです。

平面のイラストがアニメーションに変わるという不思議なことがグリーティングカード1枚で起きる。さらにパーソナライズできれば、紙媒体のカードより多少高価でも、サプライズや“世界に1つ”のギフト好きな消費者、あるいは高額過ぎないがちょっとした気の利いたギフトを探している消費者からの需要が見込まれるでしょう。


参考:https://www.hallmark.co.uk/collections/video-greeting-cards

 

進化するイギリスグリーティングカード市場。デジタルなら進出の余地あり?

グリーティングカードを送ることはイギリスの文化に根付いているため、他のどの製品よりも多種類の販売場所にストックされており、小売業者全体では6分の1がストックしています。カード専門店だけでなくスーパーマーケットやギフトショップ、パティスリー、花屋などにも置かれていたり、クリエイターズマーケットで個人が販売しているほどカード販売者は多く、需要が高い分競争が激しい市場でもあるということです。先に挙げた大きく成長しているブランドも、ほとんどがカード専門ではなくギフトや写真印刷を提供する企業です。

しかし、今回調査した中では、ARグリーティングカードは数えるほどしか存在していませんでした。イギリス市場への進出を目指すなら、ARを活用したものは今がチャンスであり、顧客自身が印刷することを前提としたオンライン上のみでやり取りが済むデジタルなものであれば紙媒体のものより進出しやすいと考えられます。

 

 

▼弊社では市場調査も行っております。ご質問などがございましたら、こちらからお気軽にご連絡ください。

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出典:

https://www.dailymail.co.uk/news/article-11927841/Paperchase-holds-closing-sales-80-cent-106-stores-shut-Monday.html

https://www.theguardian.com/business/2023/jan/31/tesco-buys-paperchase-brand-shops-jobs#:~:text=Tesco%20has%20bought%20the%20brand,stationery%20retailer%20collapsed%20into%20administration.

2022 Greetings Cards Industry Report | https://salience.co.uk/insight/reports/greetings-cards/

https://www.gca.cards/publishers-the-market-facts-and-figures/

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