イギリスのグリーティングカード市場①根付くカード文化・紙媒体でも需要あり?

今月9日はイギリスではイースター(復活祭)でした。カードショップやスーパーマーケットでは、ひよこやウサギ、卵などをモチーフにしたカードが1か所に集められ、誰かの大切な人にそれぞれ贈られていく姿を想うとあたたかな気持ちになりました。

イギリスの文化と聞いて、多くの人が思い浮かべるうちの1つが「グリーティングカード」を贈り合う習慣ではないでしょうか?

デジタル化が進む現代でも紙媒体のカードは需要があるのか、どのようなカードが人気なのか、などイギリスのグリーティングカード市場を調査してみました。

                                                                     

イギリスはカード文化。グリーティングカードで挨拶する習慣が需要を支える

カードのカテゴリが豊富

イギリスの人々は、誕生日やクリスマスにおいてはもちろん、過去記事「紳士の国イギリスのマナーは厳しい?①日常生活12の常識」でも述べたように、お世話になった方への挨拶としてグリーティングカードを贈ることもあります。お礼状としての「Thank you」カードから、お悔みの「Sympathy」カード、卒業・結婚・出産・退職祝いのようなパーソナルなイベント用、さらにバースデーカードだけを見ても母宛、兄弟宛など実に様々な種類のカードが販売されています。

それだけ需要があり、76%の成人が1年に少なくとも1枚のカードを購入しているというデータがあるほどカードを贈ることが日常的なのです。

カードが最も売れる時期は?

日本では馴染のないイースターや国際女性デー、 Thinking of You Week(今年は9月18-24日)などにもカードを贈るため、1年を通して需要が集中する時期が度々あります。

では、カードが最も売れる時期はいつ頃でしょうか?実はクリスマスや新年ではなく、春頃にとりわけ需要が高まることがグリーティングカード業界では知られています。2月のバレンタインデーに始まりセントパトリックスデー、母の日、イースター、父の日とイベント続きの時期だからです。

 

※    Thinking of You Week・・・「あなたのことを考えている」ことをグリーティングカードなどで大切な人に伝えることで、愛、思いやり、幸福の波を生み出す特別な週間。

 

グリーティングカードの英国市場規模&概況

カード業界全体ではマイナスもブランドによっては利益増

英国のグリーティングカード市場規模をカード枚数で表すと、2021年には推定8億1,100万枚のシングルカード(セットではなく単品で販売されているもの)とされており、2020年の8億3,500万枚から3%減少。英国最大手のグリーティングカード小売チェーンCard Factory(カード・ファクトリー)でさえ、2021年の総売上高は約37%減少と、過去10年で初めてマイナスでした。

この年は、先に述べたカードが最も売れるとされる期間がロックダウンと重なったことが影響したと考えられますが、グリーティングカード市場は世界的に見ても2027年までの予測CAGRがマイナスです。アフターコロナも売り上げは伸びないのでしょうか?

しかし、オンライングリーティングカード業界では、市場の不確実性にも関わらずBoots Photo(ブーツ・フォト)では昨年60%の利益が見られ、大手文房具店Paperchase(ペーパーチェイス)では22%の損失がありました。

チャネルやブランドによって利益に差があるようで、今後の可能性はマーケティングの仕方次第と言えるでしょう。

オンライン販売の予測成長率は増加

オンラインセクターをもう少し見てみましょう。米国の調査会社IBISWorldが、今年の英国オンライングリーティングカード小売業者業界の市場規模は£2億8,470万で、昨年より1.2%増加すると予測。

さらに、昨年から今年にかけて新聞販売店(Newsagent:雑貨なども販売)や文房具店からの需要が減少すると予想され、このことがオンライングリーティングカード小売業者業界にチャンスをもたらすとしています。(※ カード小売市場のかなりの部分を占めているこれらの小売業者からの需要は、実店舗を持つ従来のカード小売業者との競争の指標とされています。)

ウィズコロナでオンライン購入に移行した消費者が引き続き利用することや、店舗では購入できないようなクリエイター手作りのカードを販売するEtsyやNot On The High Streetのようなプラットフォームの存在もオンラインセクターの予測成長率に関係しているかもしれません。

 

紙媒体のカードも需要継続?デジタルネイティブによるアナログ回帰

このように、英国ではグリーティングカードの需要が高いですが、デジタル化が進む中、紙媒体のカードもこの先需要があるのでしょうか?

marie claireの記事では、「ミレニアル世代とジェネレーションZのおかげで、信じられないほどアナログなビジネスが復活している」とし、当世代がハンドメイドのブティックスタイルの、より価値の高いカードを購入していることが書かれています。実際に日本でも、アナログレコードや純喫茶、活版印刷のようなレトロなものの人気が復活しています。

これからのマーケティングにおいてターゲットの中心とされるデジタルネイティブ・Z世代。そんな彼らも好んで購入する紙媒体のカードは、これからも市場を牽引していくのではないでしょうか。

 

本記事の続きは8月1日更新予定です。イギリス市場で人気のグリーティングカード、紙媒体でも少し進化したグリーティングカードについてご紹介します。

 

 

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出典:          

Salience.「2022 Greetings Cards Industry Report」

O What A Feeling「Do people still send cards in 2022? Why do millennials love buying cards? What are the most popular greeting card occasions for 2022? All your card questions ANSWERED!」

Card Factory「The Greeting Card Market」2021

IBISWorld「Online Greetings Card Retailers in the UK - Market Size 2011–2029」

marieclaire「Season’s (and Other...) Greetings」2021

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