インバウンド5つの課題|外国人観光客が望む”おもてなし”とは

おもてなし インバウンド

外国人観光客が戻りつつある今、インバウンド業界ではどのようなサービスを展開していくか再検討していることでしょう。この記事では過去の外国人観光客向けに実施された満足度調査等を元に、海外の人が本当に日本旅行に求めている事柄を推察していきます。

(※コロナ禍では外国人観光客に関する調査があまり実施されていなかったため、引用するデータが若干古いことを予めご了承ください)

外国人観光客の満足度調査

日本旅行中に困ったこと

2018年の観光庁の調査では外国人観光客の約40%が「日本滞在中に困ったことはなかった」と回答しています。2016年には約35%であったため、様々な分野で改善が見られたことが分かります。「困ったことがあった」と回答している人の中で多かった意見が、「公共WI-FIが少ない」「(言語のせいで)コミュニケーションが取れない」「(観光地や駅などで)多言語表示が少なくて分かりにくい」等でした。

満足したこと&しなかったこと

2021年のJINTOのオンラインアンケート調査では、体験した人の数と満足度の両方のデータが算出されていました。

体験した人の数と満足度が共に高かったのが、祭りなどの伝統行事、アニメ聖地巡り、温泉等でした。体験した人の数が少ないのに満足度の高かったのは、ローカルフード等でした。体験した人の数が多いのに満足度の低かったのが、歴史的な宿、伝統芸能等でした。

インバウンド事業5つの課題

上記の調査結果を元に、アフターコロナの新しいインバウンド事業に必要な事柄を挙げていきます。

課題1.良好なWI-FI環境

以前はWI-FIのない宿泊施設が多いことが課題だと言われていましたが、ここ数年で大半の宿泊施設が導入を完了たように見受けられます。しかし「WI-FIがあれば良い」ということではありません。コロナ禍後の新しい休暇の取り方として、旅先からテレワークをする「ワーケーション(ワークとバケーションを掛け合わせた言葉)」があります。この需要に対しては、オンライン会議にも耐えうる十分な速さのWI-FIが必要です。また、Youtubeなどで動画を見る人達が以前より増えているため、そういった宿泊客を満足させるためにも良好なWI-FI環境を整えておくべきでしょう。

課題2.多言語での対応

満足度調査では言葉が通じなくても「親切に対応してくれたスタッフがいて良かった」と、肯定的な意見も見られました。しかしながら「英語(或いは中国語や韓国語など)を話せるスタッフがいて安心だった」という意見もあるため、話せる人がいた方が良いのは確かかもしれません。

観光案内所などで多言語のマップなどが配られていることに対する満足度も高いため、宿泊施設などの案内も多言語化しておくのが良いでしょう。

課題3.オンラインの活用

2013年の明治大学学生グループによる論文「外国人誘致における旅館のありかた 」では、客室の稼働率が半分以上の旅館の4分の3がオンラインサイトを利用していることが分かりました。少し前の調査なので、現在はさらに多くの旅館が登録しているかもしれません。国内向けのサイトだけではなく、海外でシェア率の高いBooking.com、トリップアドバイザー、エクスペディア、Airbnbの登録がまだの場合は、済ませておいた方が良いでしょう。これらのサイトの口コミを見て宿泊を検討する人が多いため、チェックアウトをする外国人観光客に「口コミを書いてくださいね」と一声かけるだけでも効果が上がるようです。

また、インスタグラム等のSNSの活用やYoutubeチャンネルでの発信も効果的です。

課題4.独りよがりな「おもてなし」を見直す

体験した人の数が多いのに満足度の低かったのが、歴史的な宿、伝統芸能であるのは少し残念な結果ではありますが、「日本に来ている外国人は日本の文化を勉強していて当たり前」という考えがどこかにないでしょうか。

クールジャパンアンバサダーを務めるアメリカ出身のベンジャミン・ボアズ氏は、日本のおもてなしがナルシズムに陥っていると指摘しています。ここでいうナルシズムとは、外国人が求めている事を無視して、日本人が外国人に見せたい物やしてあげたい事を押し付けていることを指しています。例として挙げられていたのは、おもてなしの際にお茶を出すのは日本人にとって当たり前ですが、外国人がそれを欲していない場合があることです。お茶を禁じられている宗教があったり、お茶よりペットボトルの水を飲みたい人がいたりするからです。

相手が欲しているものを察するのも日本の「おもてなし」でしょうが、外国人観光客は異なる文化を持っているので察するのが難しいかもしれません。その場合は「お茶にしますか?水にしますか?」と一言聞くだけでも、独りよがりなおもてなしにはなりません。

課題5.日本人の日常に触れる機会を提供

下記は外国人観光客の宿泊率の高い人気宿、「澤の旅館」の澤功氏のインタビューの引用です。

「たとえば、京都に行くとお寺のツアーばかり紹介されたり、食事は懐石だけしか選べなかったりするそうです。でも彼らとしては、本当は私たちが行くような普通の居酒屋さんに行きたい。日本人の日常生活を見たいんだという訪日外国人観光客は多いのです。いろいろな所を歩き回った旅行者の方々も、町の人とのふれあいとか、地元の人と並んで買った商店街のコロッケが一番美味しかったとか、そういう何気ないことがきっかけで日本を好きになってくれるものです」

https://motokurashi.com/visit-japan-sawanoya-tips/20151129より

2020年のENGAWA株式会社の調査によると、在住外国人がコロナ後に一番したいことは地方へ旅行して、ご当地グルメを楽しむことでした。旅行で訪れる外国人も本当は同じようなニーズを持っているのに、短期滞在であるがためにその機会を逃しているのではないでしょうか。前出の満足語調査でも、体験した人が少ないのに満足度が高かったものに「ローカルフード」が挙げられています。

海外のホテルでも言えることですが宿泊施設でおすすめのレストランを聞くと、なかなか地元の人が行くような店舗を紹介してもらえません。あまりにも庶民的な店舗を紹介すると、ホテルのイメージが下がるという懸念もあるのでしょう。地元の人気スポットを紹介するパンフレットを作るなど、満足度を高める工夫が必要なのかもしれません。

インバウンドのニーズを探るには

おもてなしの精神に溢れる日本ではありますが、インバウンドの課題はより外国人の視点に立って求められている事柄を準備することでしょう。観光庁などの様々な調査結果を閲覧することは可能ですが、もっと外国人の生の声を聞きたい方も多いのではないでしょうか。

弊社では海外市場調査や海外向けPRなどを承っております。興味のある方は気軽にお問い合わせください。

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