Amazonのように「着払い返品」が当たり前?海外の返品事情①

一度購入したものを購入者側の都合で返品することは、日本では何となく悪いことのような風潮があると感じたことはないでしょうか?店頭購入やオンラインショッピング、テレビショッピングなどにはクーリング・オフ制度が適用されず、返品できたとしても店員が嫌そうな態度だったり……。オンラインショップでは、「お客様のご都合による返品・交換・キャンセルは一切受け付けておりません」と明記し、商品に不備があっても到着日より7~8日以内に返送できない場合は不可とされているところが多いです。

実際に返品に対する価値観をトピックとした掲示板では、「(返品したことに対して)すごく申し訳ないことをしてしまった」「高価なものでなければ返品を諦める」「返品できて当たり前ではない」という意見が多く見られました。“タグ付き新品”がフリマサイトに出回っているのも頷けます。

このように、日本は返品に対して厳しい国という印象がありますが、海外はどうでしょうか?弊社のあるイギリスの返品事情を中心にご紹介します。

 

Amazonは日本でも理由に関係なく返品可で着払いOK

返品条件が厳しい日本ですが、それは各小売業者によって違い、例外もあります。その最も有名な例がAmazonです。Amazonで購入した商品は、原則、商品到着から30日以内なら購入者都合でも返品できるようになっています(マーケットプレイス出品者が販売する商品を除く)。さらに、発送元が「Amazon.co.jp」の商品であれば、着払いでの返品が可能です。

オンラインショッピングにありがちな「イメージ違い」や「サイズ違い」などが起きても、返送料を負担することなく返品ができるということなので、必要なものが、まずはAmazonで売られていないか検索するという人も多いのではないでしょうか。

このように割と寛容な返品ルールを取り入れている小売業者は、日本では今のところ少ないです。しかし、海外では、このAmazonのような返品ルールが当たり前なのです。

 

海外(イギリス)の返品事情

“返品天国”と言われるアメリカに負けていない程、イギリスの小売業者も割と寛容な返品ルールを設けています。オンライン購入の返品方法もシンプルで、購入履歴から「返品」→「返品理由」→「ドロップオフポイント(返品商品を預ける場所)」を選択していくと最終的にQRコードが表示されます。それを、ドロップオフポイントで提示するだけです。

ドロップオフポイントは郵便局や宅配業者の窓口だけでなく、深夜も営業しているグローサリーストアやスーパーマーケットのサービスカウンター、文具・書籍などを扱う小売チェーンなど選択肢が豊富なため、どこに住んでいても返品しやすいネットワークが出来上がっていると言えます。

中でも、郵便局はあらゆる年齢層の間で最も好まれる返品先であり、イギリスのオンライン購入者42%がこの方法を選択しています。集荷も39%と人気が高まっていますが、現在このオプションを提供しているのはイギリスの小売業者全体における6%のみとなっています。

実際にイギリスで返品した経験を元に、返品ルールのポイントを以下に挙げてみました。

 

①    ほとんどの小売店において返品可能期間が30日間ある

②    購入店舗以外の店舗で返品できる(オンライン購入の商品も店頭で返品可)

③    購入者都合の返品理由でも返品を受け付けてもらえる
  返品理由の選択肢に「画像と違う」「自分には似合わなかった」などがある

④    返送用ラベル印刷の必要がない

⑤    大手小売店などには返品・交換専用のレジがある

⑥    店頭返品では、レシートを忘れても返品できる場合もある

 

ただし最近は、購入者都合の返品の場合は返送料、あるいは返品手数料(£3前後)を取る小売業者もあります。そのためか、店頭で返品する人も多く、返品・交換専用レジに行列ができていることもあります。その状態からは「返品=悪いこと、恥ずかしいこと」という概念が感じられず、返品は当たり前という文化が根付いてきていることが窺えます。

 

「返品率」「返品率の高い商品」に見る海外(イギリス)の返品事情

返品率とは?

返品率とは、「返品率(%)=返品数÷出荷数×100」で算出される数値です。

出荷数とは、注文数からキャンセルや返品を除いた数量、すなわち納品が完了した数量となります。

平均返品率は?高いのはやはりオンライン購入の場合

消費者と小売業者の両方が手間のかからないショッピング体験を優先しているため、オンライン購入の返品増加は衰える兆しがありません。2023年の平均返品率は14.5%で、実店舗購入商品の平均返品率(店舗で返品されるオンライン注文を除く)は10.02%、オンライン購入の平均返品率は17.6%でした。

イギリスでは、オンライン購入した商品の3件に1件が返品されており、返品率は実店舗購入した商品の返品率9%をはるかに上回っています。

購入時に実際の商品を見て試すことができないという事実からすると、実店舗での買い物以上に返品率が高いことは言うまでもありません。実店舗購入と比べると返品にコストと時間がかかる点が小売業者の課題となっています。

また、先に挙げた平均返品率は2022年の16.5%から減少していますが、特定の分野では大幅に増加しています。どのカテゴリの返品がイギリスでは多いのでしょうか?

返品率が高いカテゴリはアパレル関連

Statistaの「2023年にイギリスで最も返品されたオンライン購入のカテゴリ別」調査によると、衣料品(27%)、靴(15%)、バッグ&ファッション小物(14%)の順に多く返品されており、次にアクセサリー、家電、食品および飲料(3カテゴリとも9%)と続いていました。

衣料品に関しては、イギリス以外の大多数の国でも返品ランキング上位に挙がっています。実際に身につけるものでサイズが関係してくる、あるいは“身に着けてみたらイメージが違った”ということが起きやすい商品を扱うアパレル業界において、やはり返品が多いようです。

未だ実店舗での返品を好む消費者も

オンライン購入した商品の返品の方が多いことが分かりましたが、返品方法においては、依然として実店舗での返品を好む消費者もいます。

2023年の調査によると、世界中の消費者の10人中6人以上が、実店舗に赴く返品プロセスの方が簡単だと感じています。イギリスでは、オンライン返品の方が簡単だと思う人が44%、実店舗での返品の方が簡単だと思う人が56%います。

この傾向は国によって違うようで、ドイツとオーストラリアではオンライン返品を好む人の方が多い結果でした。

 

返品率の増加は顧客ロイヤルティ向上に比例?

実店舗返品の方が簡単だと思う人が僅かに多い現状ではありますが、オンライン返品が以前より便利になっているのも事実です。このオンライン購入でも返品しやすいシステムの構築は、コロナ禍で実施されたロックダウン中に、より顕著になったと思われます。

一部の商品(特に衣類)をオンラインで購入する場合は、ある程度のリスクを想定する必要があり、コロナ以前は多くの消費者がその種の商品の購入を実店舗に限定していました。しかし、政府の規制によって店頭を訪れることができなくなった消費者は、オンライン購入をせざるを得なくなり、必然的にオンラインでの返品も増加。小売業者は対面できない消費者からの要望に、より頻繁かつ迅速に対応する必要が出てきたため、各ブランドのウェブサイトにはチャット機能が設けられ、購入履歴から返品リクエストができるシンプルなプロセス設定や宅配サービス会社との連携で荷物の預け場所を増やすなどの対策を迫られることになりました。

このような対策が功を奏し、返品がしやすくなったことで、イギリスのオンライン購入者の38%が、オンラインで購入した商品を返品することに抵抗がなくなったと回答しています(この数値はヨーロッパ内では最低で、フランスとイタリアでは77%もいます)。また、ほぼ3分の2に当たる65%が、「いかなる状況でも返品が無料であることを期待している」ことが明らかになり、「顧客が返品の代金を支払うことを期待するのは合理的である」と答えたのは僅か3%でした。56%は無料返品プロセスを提供しない小売店での購入を躊躇すると回答しています。

寛大な返品ポリシーと効率的な返品プロセスは顧客ロイヤルティを高めることに繋がるようです。返品が便利になったことで返品が増え、売れなかった商品に費やされるコストや時間を考えるとマイナス面もありますが、顧客からの信頼や愛着を得続けなければ商品が売れることもないわけです。

小売業者は、返品に寛大なまま顧客をキープし続ける対策を考えていかなければなりません。

 

再来週の記事では、返品増加によって小売業者が抱える問題点と返品率を下げるための対策について執筆予定です。

 




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出典:

https://orderwise.co.uk/en/blog/returns-and-ecommerce-five-facts-and-figures-for-2023

https://nrf.com/research/2023-consumer-returns-retail-industry#:~:text=As%20a%20percentage%20of%20sales,rate%20for%202023%20was%2014.5%25.

https://www.cbre.co.uk/insights/local-response/the-end-of-free-returns-will-consumers-continue-to-spend-online

https://www.statista.com/forecasts/997848/most-returned-online-purchases-by-category-in-the-uk

https://www.statista.com/statistics/1373859/returns-experience-worldwide-country/

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