日本人は’働きすぎ’ではない!?海外の休暇データを検証

日本人働きすぎデータ

日本人は働きすぎ?有休消化率が低い原因

2022年のエクスペディアによる調査データでは日本の有休消化率は60%で、調査対象の16か国中ワースト2位という結果でした。日本人が有休をあまり取らない原因としては、休むことに罪悪感を感じる人が多い、古い慣習が残っている会社が多いなどがあるようです。

このデータだけを見ると日本には「働きすぎだなぁ」と実感している人が多い印象ですが、別のデータを参照した結果、意外な事実が浮かび上がってきました。実は日本人はそれほど働きすぎではない(かもしれない)のです。

OECD(経済協力開発機構)が公表した統計によると、2022年の日本の年間平均労働時間は1,607となり、調査を行った44か国中30位という結果でした。他の主要国を見ていくと、韓国は1,901時間で5位、アメリカは1,811時間で12位、イギリスは1,532時間で32位、ドイツは1,341時間で最下位でした。日本の労働時間はG7の中でも中くらい順位に当たり、このデータでは「日本人は働きすぎでも休みすぎでもない」ことが分かります。

海外の休暇は日本よりも長い…はデマだった

「海外の夏休みは長い」というイメージを持っている人は多いかもしれません。そこで労働時間だけではなく、休日の日数も比較していきます。エクスペディアが調査対象とした16か国おける実際の年間休日日数を表にしたところ、下記のようになりました。

(有休取得率を元に有給取得日数を割り出し、そこに祝日数を足した数値を「実際の休日数」としています)

国別・年間の休日日数

祝日数(日) 有給支給日数(日) 有給取得日数(日) 有給取得率(%) 年間休日数(日) 実際の休日数.平均(日)
1ドイツ
9
30 27 90 39 36
2イギリス 8 27 23 85 35 31
3フランス 11 28 20 71 39 31
4香港 12 18 18 111 30 30
5台湾 10 15 18 120 25 28
5日本 16 20 12 60 36 28
7オーストラリア 12 20 15 75 32 27
8タイ 16 12 10 83 28 26
7カナダ 11 20 15 75 31 26
8イタリア 11 20 15 75 31 26
8ニュージーランド 11 20 15 75 31 26
12韓国 16 15 10 67 31 26
13シンガポール 11 15 14 93 26 25
14マレーシア 14 14 10 71 28 24
15メキシコ 7 12 10 83 19 17
15アメリカ 10 20 7 35 30 17
【参照】holidays-calendar.net、JETRO、エクスペディア 世界16地域 有給休暇・国際比較調査 2022

上の表では日本は16か国中5位と、まずまずの位置にランクインしています。有休消化率が低いことは否めませんが、祝日数はなんと16か国中1位です。祝日が少なく有休消化率も低い最下位のアメリカと比べると、日本人は10日以上長く休んでおり、自由に長期休暇を取りそうなイメージのあるイギリスやフランスと比較しても、その差は3 日しかありません。

それにも関わらず日本人が「働きすぎ」と感じてしまう原因は、取っても良いはずの有休を取らずに我慢していること、祝日は予め決められているので好きな時に休んでいる訳ではないこと等が挙げられるのではないでしょうか。

また、海外の休暇が長く思える原因は休暇の時期が異なるので、自分たちが働いているのに休んでいるなんて……と、隣の花は赤いように感じてしまうからかもしれません。

日本と海外の休暇の違い

日本の長期休暇といえばゴールデンウイーク、お盆、年末年始ですが、キリスト教徒の多い欧米ではそれに伴い、異なる日程で休暇を取っています。

海外の休暇1 イースター:3月or4月の日曜日

イースター (復活祭) はイエス・キリストの復活を祝う祭りで、毎年日付が異なります。早い場合は3月22日、遅い場合は4月25日となり、今年2024年のイースターは3月31日でした。イースターの日付が毎年異なる理由は、春分の日以降の満月の日から最初の日曜日と定められているからです。少し複雑なので欧米人でも「今年のイースターはいつだろう?」と、カレンダーを確認する人も珍しくありません。

イギリスとドイツではイースターの前の金曜日をグッドフライデー、イースター翌日の月曜日をグッドマンデーとして4連休になります。アメリカは国がグッドフライデーとグッドマンデーを祝日として定めていないため、州や個々の企業が独自で休日としていることも多いです。

海外の休暇2 夏休み:社会人は期間が決まっていない

日本の社会人の夏休みといえば企業によって長さは異なるものの、お盆頃であることが一般的です。しかし欧米では企業が個々で定めていたり、個人で好きな時期に有給を取ってバカンスに出かけたりします。必ずしも全員が夏休みを取っている訳ではありませんが、ほとんどの人が夏になると長期休暇を取ります。そのため日本のように、有休を取ることに罪悪感を感じる人があまりいません。バカンスの行先は様々ですが、地中海やカリブ海沿岸など、海辺の温かい地域でのんびり過ごす人が多い印象です。

海外の休暇3 年末年始:クリスマスが基準

日本の年末年始の休暇は元旦を基準とすることが一般的ですが、欧米ではクリスマスが基準になります。国が定めている年末年始の祝日はイギリスの場合は12月25日(クリスマス)、12月26日(ボクシングデー)、1月1日(ニューイヤーズデー)の3日間、アメリカは12月25日(クリスマス)、1月1日(ニューイヤーズデー)の2日間ですが、12月20日頃~1月2日頃まで休暇を取る企業や個人が多いです。

アメリカでは12月25日頃~1月1日頃まで有給を取って休暇にする人もいれば、普通に仕事をする人もいます。

海外の休暇4 サンクスギビング(アメリカのみ)

サンクスギビングとは、アメリカ大陸という新しい土地を開拓して収穫を得たことを感謝する、キリスト教の祭りです。したがってキリスト教徒の行事でも、アメリカにしかありません。毎年11月の第4木曜日と定められており、翌日の金曜日(ブラックフライデー)を休日にする企業や個人が多いので、その場合は4連休の休暇になります。

ちなみに最近はアメリカ以外でもブラックフライデーのセールを見かけますが、サンクスギビング用に仕入れた商品を翌日に安売りしたことが始まりだと言われています。

英語のホリデーとバケーションの違い

ホリデー(holiday)とバケーション(vacation)の違いについては諸説あるようですが、日常会話においてはイギリスとアメリカで若干異なる使い方をしています。ちなみにバカンス(vacances)はフランス語なので、英語圏では使われません。

イギリスでは夏の休暇や冬のクリスマス休暇のような長期休暇を全てホリデーと呼ぶことが多く、バケーションという言葉自体をあまり聞くことがありません。アメリカでは一般的な長期休暇をバケーション、年末の休暇だけをホリデーと呼ぶことが多いです。アメリカではクリスマス前後に「ハッピーホリデー」と挨拶し合いますが、反対にイギリスではほとんど聞きません。イギリスでは「メリークリスマス」と言うことが一般的です。

また、祝日をバンクホリデー、休日をデイオフと呼ぶことはどちらの国でも同じです。

「働きすぎ」は生産性が下がる

他国と比較して日本人が働きすぎではないと言われても、働きすぎているという感覚がなくなる訳ではありません。

欧米では夏の長期休暇から帰ってきたばかりの人は、仕事の生産性が上がるというデータがあります。休暇によって社員の気分がリフレッシュされることは、職場にとっても良いことなのです。

好きな時期に休暇を取ることに罪悪感を持たせない社会になれば、「働きすぎ」と疲れを感じることが少なくなるのかもしれません。

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