本革vsヴィーガンレザー/SDGsな素材はどちら?

動物愛護やCO2の削減という観点から、ヴィーガンのライフスタイルを選択する人たちがいます。動物由来のものを消費しないヴィーガンは、食に対する趣向だと考えられがちですが、ライフスタイルの一種なのです。したがって、ヴィーガンの人たちは衣食住全てに一貫して動物由来のものを消費しないため、毛皮や本革製品を使用することもありません。

本革・リアルレザーの問題点

本革は動物の命を奪うだけでなく、製造工程で有害な物質を使用することが多いというデメリットがあります。

動物の皮を皮革に加工する際には「なめし」という工程があります。これは防腐効果を高めるためにタンニンなどの薬品を塗布する作業です。環境団体PETAに調査では、「なめし」に使用される薬品には発がん性物質が含まれていることが多く、本革の生産が盛んな地域では、その他の地域よりも、がんのリスクが最大で50%高かったことが分かりました。

また、タンニンの原料となる樹木はアマゾン流域に集中しており、人体だけでなく生態系にも影響を及ぼしているという報告もあります。

ヴィーガンレザーとは?

ヴィーガンレザーとは、本革とは異なり、動物由来の原材料を使わずに製造された人工的な皮革を指します。ヴィーガンレザーとフェイクレザーには明確な違いはなく、ヴィーガンレザーはフェイクレザーの新しい呼称とも捉えられます。

フェイクレザー(ヴィーガンレザー)の原料は石油由来が主流でしたが、近年では環境に配慮した素材として植物由来のものが注目されています。

石油由来でも植物由来でも製造工程ほぼ同じで、「基布」と呼ばれる布の表面に合成樹脂を吹き付けて作られます。表面の合成樹脂がポリウレタン(PU)やポリ塩化ビニル(PVC)のような石油由来であるか、キノコやパイナップルのような植物由来であるかが異なります。

また、石油由来であっても植物由来であっても、現状では消費者庁によって義務付けられている表記は「合成皮革」です。消費者もヴィーガンレザーを明確に定義していないのです。ヴィーガンレザーと書いてあるからといって、必ずしも植物性ではないので注意が必要です。

ヴィーガンレザーのデメリット

(※ここではヴィーガンレザーとフェイクレザーを相称して合成皮革と呼びます)

合成皮革は経年劣化する特性があり、耐用年数は一般的に石油由来の場合は3~5年程度、植物由来の場合は10年程度です。合成皮革の製品を購入したものの、しばらくしたら表面の合成樹脂が剥がれてきてしまったという経験のある方もいるのではないでしょうか。そのため、メーカー側がクレームを避けるために、ケアラベルに耐用年数について明記することも多いです。

また、合成皮革は本革に比べて強度が低いため、耐用年数が経過する前に破れてしまう可能性もあります。

環境への負荷に関しては、植物由来の合成皮革なら考慮されていることが大半です。ただし、石油由来の合成皮革はプラスチックやビニールと同様で、分解されて自然に還るのに何百年もかかります。

これらの事実からは「ヴィーガンレザーはサステナブルな素材ではない?」と、疑問も湧いてきます。

本革はサステナブル?

実は本革を生産するためだけに動物の命が奪われることは稀で、たいていの場合、動物の皮は食肉生産の際に排出される副産物です。また、本革は丁寧に手入れをすれば、何世代にも渡って受け継ぐといった長期的な使用も可能です。

デザイナーのアニヤ・ハインドマーチは、人体や環境に影響を与えない方法でなめすことができれば、本革はヴィーガンレザーよりもサステナブルだと主張しています。

エコレザーとは

エコレザーとは、信頼できる背景で生産された本革を指します。ヴィーガンレザーと混同されがちですが、その正体は合成皮革ではありません。また、本革の切れ端などをリサイクルして作られた素材でもありません。

エコレザーと一般的な本革との違いは、「日本エコレザー基準」を満たしていることです。適切に入手された原料皮からの製造、発がん性物質を使用していないこと、排水処理・廃棄物処理が適正など、様々な基準を満たすことでエコレザーとして認められます。

本革vsエコレザーは議論の余地あり

このように詳しく見てみると、ヴィーガンレザーと書いてあるからサステナブルという訳でも、反対に本革なら何でもサステナブルという訳でもないことが分かります。耳障りの良い言葉だけに惑わされず、素材の特性や生産背景を知ることで、本当の意味でサステナブルな選択ができるのではないでしょうか。

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