身近なのに知らない【スーパーマーケットの歴史】日本の小売業への影響
アメリカで誕生したスーパーマーケット
スーパーマーケットという業態は、1930年にアメリカのマイケル・J・カレンが創業した「キング・カレン」が起源とされています。従来の小売店では、カウンター越しに店員が商品を取り出す対面式の販売方法が主流でしたが、キング・カレンはセルフサービス方式でレジでまとめて清算する仕組みを導入しました。
この新しい販売手法は、消費者にとっては買い物の利便性を向上させ、小売業者にとっては人件費の削減や効率的な店舗運営を可能にしました。さらに、大量仕入れによるコスト削減と価格の低下を実現したため、経済的に厳しかった時代に消費者の支持を獲得しました。
第二次世界大戦後、アメリカの経済成長とともにスーパーマーケットは急速に普及し、そのモデルはヨーロッパやアジアにも広まりました。1950年代から1960年代にかけては冷蔵技術や物流の劇的な改善が起こったため、生鮮食品のような幅広い商品の取り扱いも可能になりました。
日本におけるスーパーマーケットの歴史
日本におけるスーパーマーケットの歴史は、戦後の経済成長期に始まります。日本初のスーパーマーケットに関しては諸説ありますが、1953年に東京・吉祥寺に開業した「紀ノ国屋」だという説が有力です。
高度経済成長期には、大量消費社会の到来とともにスーパーマーケットが急速に増加しました。1970年代には、大手チェーンが全国展開を進め、イオン(当時のジャスコ)、イトーヨーカ堂、西友などが市場をリードしました。
スーパーマーケットが日本の小売業に与えた影響
スーパーマーケットの普及に伴い、日本の消費者は多様な商品を自由に選択する楽しみを得ました。大量な仕入れによる低価格が実現されたことにより、消費者にとっては家計の節約にもなりました。
また、大型スーパーマーケットは地方に新たな雇用や消費を生み出しました。
その一方で、価格競争が激化により、多くの個人商店が閉店に追い込まれました。スーパーマーケットが地域社会にどう関わっていくかは、様々な場で議題に上がっています。
世界各国におけるスーパーマーケットの展開
スーパーマーケットはアメリカから始まりましたが、その後世界各国に広がり、地域ごとに独自の進化を遂げています。
1. アメリカ アメリカでは、大手チェーンが市場を席巻し、ウォルマート、クローガー、コストコといった企業が全国規模で展開しています。特に価格競争が激しく、効率的な物流と大規模店舗の運営が成功の鍵となっています。
2. ヨーロッパ ヨーロッパでは、フランスのカルフールやドイツのアルディ、リドルなどが代表的です。特にドイツ発祥のディスカウントスーパーは、低価格と簡素な店舗運営で急成長しました。消費者の嗜好に合わせたオーガニック食品や地元産品の取り扱いも進んでいます。
イギリスに関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。→ スーパーマーケット人気ランキング2025 イギリス大手の特徴
3. アジア アジアでは、経済成長と都市化に伴いスーパーマーケット市場が拡大しています。中国では華潤万家(チャイナリソース・ヴァンガード)が大手として知られ、日本のイオンやセブン&アイも積極的に展開しています。東南アジアでは、タイのビッグCやセントラルグループがシェアを伸ばしています。
スーパーマーケット 日本と海外(アメリカ)の違い
アメリカから始まり、20年以上の歳月を経て日本に伝わったスーパーマーケットですが、アメリカと日本の文化や習慣の違いから、日本のスーパーマーケットは独自の進化を遂げました。
アメリカのスーパーマーケットは店舗自体が広大で、大量の商品を扱っていますが、実は商品の種類はそれほど多くありません。日本のスーパーマーケットは商品の種類がとても豊富で、醤油を例に取ってみても濃い口、薄口、甘口など、多くのメーカーの様々な種類が揃っていることが分かります。
また、アメリカと比較した場合、日本では一つ一つの商品の内容量が少ないという特徴もあります。
現在でも日本の特に都市部の人は広いとは言えない部屋に暮らしていることが多いですが、実は江戸の町人も4畳半程度の部屋に一家で暮らしていたようです。日本の家屋では物を置くスペースが限られているため、現代においても日本人には食料をまとめ買いする習慣がなく、その日に必要な分だけを購入します。
一方、アメリカでは広い家屋に暮らす人が多く、大型の冷蔵庫、パントリーや倉庫まであることも珍しくありません。そのため、アメリカの消費者には、週末にまとめて一週間分の食材を購入する習慣があります。
このようなこのような習慣の違いから、日本のスーパーマーケットはアメリカや他国とは異なる進化を遂げました。
スーパーマーケットの歴史は奥深い
スーパーマーケットの歴史を振り返ると、消費者ニーズに対応した革新と効率化が成功の鍵であることが分かります。いつの時代も消費者のニーズに目を向けることが、ビジネスの成功のカギになるのではないでしょうか。