アニメ聖地巡礼スポット5選/地方に外国人を誘致する方法 Ⅱ

近年、訪日外国人の中で特に注目されている観光トレンドのひとつが「アニメ聖地巡礼」です。これは、アニメや映画の舞台となった場所を実際に訪れるもので、日本文化への関心が高い海外のファンにとっては旅のメインイベントになることもあります。

こうしたアニメ聖地の多くは、東京や大阪といった大都市ではなく、地方の町や自然豊かな地域に点在しています。つまり、観光資源が乏しいと思われがちな地方こそ、アニメファンの目には「行くべき場所」に見えているのです。

今回は、特に外国人観光客に人気のあるアニメ聖地巡礼スポットをいくつかご紹介しながら、地域活性化のヒントを探っていきます。

外国人に人気「アニメ聖地巡礼スポット」5選

1. 飛騨市(岐阜県)|『君の名は。』

2016年に世界的ヒットを記録した新海誠監督のアニメ映画『君の名は。』。この作品に登場する風景の多くが、岐阜県飛騨市に実在する場所をモデルにしていることで、公開直後から多くの外国人ファンがこの地を訪れました。

JR飛騨古川駅のホームや、近くの気多若宮神社、図書館周辺の風景などは、映画の中のシーンとほぼ一致するため、“聖地巡礼”の写真を撮る訪日観光客が後を絶ちません。特に台湾やタイ、フランスなどアニメファン層が厚い国々からの訪問者が多く、現地には英語表記の案内板も整備されています。

地元では、舞台となった場所を巡るマップを作成したり、映画と連携したお土産品を開発したりと、アニメをきっかけとした観光資源の活用が進んでいます。

2. 秩父市(埼玉県)|『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』

通称『あの花』として知られるこの作品は、ノスタルジックな青春ストーリーで国内外に多くのファンを持ちます。その舞台となった埼玉県秩父市には、アニメの世界を体験したい外国人観光客が多数訪れています。

アニメに登場する秩父橋や旧秩父駅舎、定林寺など、現実の景観が非常に忠実に描かれていることから、ファンによる“シーン再現”写真がSNS上に多数投稿されています。台湾や香港からの訪問者が多く、「現地の空気を味わいたい」という動機でリピーターも増加しています。

地元商店街では作品とコラボした商品展開やスタンプラリーを行うなど、アニメファンに優しい環境が整備されつつあります。

3. 鞆の浦(広島県)|スタジオジブリ『崖の上のポニョ』

宮崎駿監督の映画『崖の上のポニョ』は、瀬戸内海の漁村「鞆の浦(とものうら)」の風景をモデルにしたことで知られています。町並みや入り江の景色、古い港のたたずまいなどが作品に反映されており、特に欧米系のジブリファンから高い人気を誇ります。

アニメで描かれた場所そのものというよりも、「この雰囲気のある町が、あの映画の世界観を生んだのか」という感動を求めて来る訪問者が多く、フォトスポットや町歩きが観光コンテンツとして成立しています。

また、地元のガイドによる英語ツアーも整備されており、アニメだけでなく日本の歴史文化にも興味を持ってもらう導線が用意されています。

4. 豊郷町(滋賀県)旧豊郷小学校|『けいおん!』

滋賀県にある旧豊郷小学校は、アニメ『けいおん!』の舞台モデルとなったことで一躍有名になりました。作品内に登場する校舎が非常に忠実に描かれており、海外のファンが「本当にここにあるのか」と訪問しては感激する様子が各種SNSで拡散されています。

町は小規模ながら、学校を観光資源として整備しており、校舎内にはグッズ展示や来場者ノートも設置されています。訪問者数のピークは過ぎたとはいえ、根強いファン層による再訪が続いています。

5. 高山(岐阜県)|『氷菓』

岐阜県飛騨地方からは2つ目になりますが、アニメ『氷菓』の舞台となった高山市も人気のスポットです。アニメに登場する高校や商店街、古い町並みは、もともと観光地としても気がある場所ですが、作品との相乗効果で外国人ファンの間でも知名度が上がっています。

特に欧米やタイのアニメファンが多く、「作品を見てから訪れると感動が倍増する」といった口コミが旅行プラットフォームで広まっています。

聖地は“観光地”でなくても良い

これらの事例から見えてくるのは、アニメの舞台となる場所は、もともと観光地であったかどうかに関わらず、ファンの熱量によって訪問先に変わるということです。「観光地ではないから」と可能性を諦める必要はありません。作品の力を借りながら、地域が主体的に受け入れ体制を整えたり、情報発信を強化することで、十分に観光誘致が可能になります。

アニメ聖地巡礼は、地域にとっての“共感型マーケティング”の好例だといえます。感情を動かされたファンは、距離や不便さをものともせず、自ら足を運ぶ意欲を持っています。地方にとっては、「作品とのつながり」がきっかけで観光が動き出すこともあります。地域に眠るロケーションの魅力を発見し、どう活かしていくかがインバウンド事業のチャンスにつながりそうです。

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