日本の文房具「海外の反応」人気の理由5

ロンドンを歩いていると、文房具専門店や百貨店、ギフトショップ、子ども用品店などの様々なジャンルの小売店で、見覚えのある色やフォームの文房具に出合い、懐かしい気持ちになることがあります。日本の文房具は、この遠く離れた大都市のあちこちでも存在感を持ち、手に取った人を裏切らない、そんな自信さえも感じさせる佇まいで海外ユーザーとの出合いを待っているのです。そのことは、海外の方へのお土産にも喜ばれるという人から聞いたエピソードと相まって、誇らしい気持ちをも齎してくれます。

日本の革新的な文房具は、世界の文房具市場を牽引していると言っても過言ではありません。なぜこれほど人気が​​あるのか​​、輸出データや海外の記事から分かる海外の反応をまとめてみました。

 

日本の文房具への海外の反応 ―輸出額や人気商品に見る

日本の文房具は国内よりも海外市場に可能性あり

国内ではペーパーレス化や少子化によって縮小傾向にある文房具市場ですが、輸出額は拡大傾向にあり、海外では需要が伸びています。日本筆記具工業会の「筆記具類の輸出状況」によると、2023年の筆記具類の輸出額(最新)は、コロナ前の2019年比約13%増の約1,200億円です。

「筆記具類品目別の輸出金額」では、ボールペン(水性)、マーキングペン、シャープペンシルの順に多く、アメリカと中国への輸出が全体の約5割を占めています。近年はフランスや韓国への輸出も増加しているようです。

海外で売れた人気商品は

2023年12月期の連結決算で過去最高益を出した三菱鉛筆(Mitsubishi Pencil)は、海外を中心に筆記具の売上が伸びています。

特に、鮮やかな発色であらゆる素材に描ける水性顔料マーカー「ポスカ(POSCA)」は、物に描くだけでなくストリートアートにも使用されるなど、欧州のアート&クラフト市場で売上が好調です。

また、カリグラフィーへの利用が増加している極細タイプの水性サインペン「ピン(PIN)」、年間売上1億本(海外含む)を達成したことのあるボールペン「ジェットストリーム(JETSTREAM)」、芯が回転して常にとがり続けるシャープペンシル「クルトガ(KURU TOGA)」も、海外限定モデルが発売されるくらい海外消費者に人気の商品です。

ボールペンと言えば、パイロットコーポレーション(PILOT CORPORATION)の消せるボールペン「フリクション(FRIXION)」シリーズも世界中の消費者に愛されています。2006年に日本より先にフランスで発売されて以来、2023年末時点で累計売上44億本の大ヒットとなっています。

先に述べたように、海外では、やはりボールペンをはじめとするペン類が人気なようです。

クレヨンや絵の具で知られるぺんてる(Pentel)も、ボールペンやマーキングペンなどが海外では売上を伸ばしているそうです。

しかし、筆記具だけではありません。例えば、コクヨ(KOKUYO)の針なしステープラー「ハリナックス(Harinacs)」は持続可能な文房具として注目されており、「キャンパスノート(Campus)」は漢字を使う中国人のために罫線の幅(行間)を約1ミリ広くするようなローカライズやフランスの雑貨ブランドPAPIER TIGRE(パピエティグル)のような現地アーティスト等とコラボする試みで差別化をし、海外でも確固たる地位を築いています。

 

このように、筆記具をはじめとする日本の文房具は海外でも需要が高いようですが、どのような点が海外の消費者に評価されているのでしょうか?

日本の文房具に纏わる海外の記事で、最も多く見られた人気の理由を5つ挙げてみました。

日本の文房具は海外でなぜ人気?愛される5つの理由

1. 機能的で実用的

日本の文房具は見た目だけでなく、細部へのこだわりによりユーザーの最終体験への配慮を体現しています。海外では、それが“信じられないほどのレベルでの細部へのこだわり”と評価されています。

例えば、手指負担の軽減効果があるボールペンDr.Grip(パイロット)、常に角で消す快感を味わえる消しゴムのカドケシ(コクヨ)、手を汚さず使えて乾く時間を待つことなく接着できるテープのり(コクヨ)のように、通常の使いやすさのワンランク上を目指した製品は他国ではなかなか見られない文房具と言えるでしょう。

2. 手頃な価格にも関わらず高品質で長持ち

日本の文房具は安価ですが、安っぽくて粗悪なわけではありません。誰もが手軽に手に入れられるローエンド市場の製品でも、長年使えるほどの耐久性を備えたもの、小さな子どもでも安心して使えるこだわりの素材からできたものなどが見られます。

また、“文具”まで幅を広げると、和紙を使用した紙製文房具や江戸切子のガラス文鎮、木目込人形の技術を活用した江戸木目込のトレイのような職人技から生まれた製品もあります。これらすべてが手頃な価格というわけではありませんが、伝統工芸と文具を融合させた、この日本独自の特徴により、高品質で長持ちな製品となり得ている場合もあります。

3. 豊富なデザインオプション ―「カワイイ」「コラボ」

日本の文房具は事務用品としての機能性だけでなく、バラエティショップやセレクトショップにも置かれるほどのデザイン性も兼ね備えています。

サンリオキャラクターなどとのコラボ文房具、食べ物や動物の形をしたおもしろ消しゴム(イワコー)、マスキングテープmt(カモ井加工紙)などは、越境ECや欧州のセレクトショップなどで見かけるほど海外でも人気です。

マスキングテープは、海外では「Washi tape」や「Rice paper tape / Rice tape」と呼ばれており、そのデザインの豊富さや用途の多様性により様々なジャンルの小売店から注目されているようです。パリにある大人気のセレクトショップMerci(メルシー)でも販売されています。

4. 文房具の問題に対する創造的で革新的なアプローチ

日本の大手メーカーは独創的で機能的な製品の製造に力を入れており、専門家との協力による人間工学に基づいたデザインで製造された製品も多いです。

ケース先端をアーチ状にし、消しゴムが食い込んで折れるのを防ぐアーチ消しゴム100(サクラクレパス)、トガると出てくる鉛筆削りトガリターン(ソニック)、ユーザーの多くの不満を解決したスリムなバインダースマートリング(キャンパス)。このような革新的な製品を生み出すために、日本のメーカーはユーザーの使い心地に徹底的に向き合った機能やデザインの限界に挑戦すべく競い合っています。

5. 時代を超えた洗練さ

大人になってから、子どもの頃に使用していたままの佇まいの文房具を見つけ、懐かしくなった経験はないでしょうか?例えばトンボ鉛筆のMONO 消しゴム。その消字性能に感動し、一度使用しはじめてから他の消しゴムでは物足りなくなったという話も聞きます。

ケースデザインは微妙に変わってはいるものの、青、白、黒のトリコロールカラーを基調としたシンプルさは初代(1969年)から変わらず続いており、この3色柄は「色彩のみからなる商標」として登録もされています。

このように高精度な機能だけでなく、流行に左右されず、いつの時代も愛されてきた佇まいのロングライフ製品が日本の文房具市場には複数存在しています。

 

 

▼色彩の商標登録についてはこちら

商標登録はコーポレートカラーでもできる?色彩商標と独占意義問題

日本の文房具はすごい! 

以上のように、海外では日本の文房具の品質に信頼が置かれており、価格以上の価値や海外では見られない特別なデザインが魅力に思われているようです。

円安でもある今は、海外メーカーと比べて高品質な商品を低価格で提供できる点も強みです。ポスカのように、昔からある製品も、使われ方が変わることで大ヒットに繋がるパターンもあります。

成長の可能性が期待できる海外の文房具市場に挑戦してみませんか?

 

 

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出典:

https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20240723hitokoto.html

https://www.anyahindmarch.com/pages/itoya-x-anya-hindmarch

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