商標登録はコーポレートカラーでもできる?色彩商標と独占意義問題

過去記事コーポレートカラー「海外企業の事例一覧」ティファニーブルーの由来などでは、海外の老舗企業がどのような思いを込めてコーポレートカラーを決めたのかをご紹介しました。そのような老舗企業、つまりブランドイメージが消費者に定着している企業の多くは、自社のコーポレートカラーを独占するために商標登録しているところが多いです。

ロゴではなく色のみの商標登録ってできるの?と思われる方が多いかもしれません。しかし、日本では、2015年に特許庁が「新しいタイプの商標の保護制度」を施行しており、その中に「色彩のみの商標登録」が含まれているため、条件を満たせば登録が可能となっています。

近年のカラーマーケティングや音声マーケティングのようなマーケティング方法の多様化、さらにデジタル技術の発展が、従来の文字や図形だけでなく、色や音、動きなどについても商標登録ができる現状をつくり出したと言えるでしょう。

今回は、コーポレートカラーの商標登録、すなわち色彩商標登録について解説します。


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色の商標登録とは?メリット&必要性

特許庁が定める「色彩のみからなる商標」とは?

特許庁では、色の商標を「色彩のみからなる商標」とし、

単色又は複数の色彩の組合せのみからなる商標(これまでの図形等と色彩が結合したものではない商標)(例えば、商品の包装紙や広告用の看板に使用される色彩など)

と定義しています。

すなわち、輪郭もなく図形と結合しているわけでもない単なる「色」のみの商標を意味しています。

「単色」、あるいは「複数の色の組み合わせ」、どちらも登録できますが、「複数の色の組み合わせ」の場合は、特定の図形や文字を認識させないように組み合わせた方法で表示されている必要があります。

実際に、日本で登録が認められた例としては、トンボ鉛筆の消しゴムの「青・白・黒」の組み合わせや、セブン-イレブン・ジャパンの「白・オレンジ・緑・赤」の組み合わせがあります。

また、「色彩のみからなる商標」には、「色彩のみで登録する方法」と、「色彩および色彩を付する位置を特定して登録する方法」の2つがあります。後者の例は、「ゴルフクラブ用バッグのベルトの部分を赤色にする」などが挙げられます。

 

▼詳細はこちら

特許庁「新しいタイプの商標の出願方法 ~出願の際の注意事項及び様式~

商標登録のメリット

商標登録をする1番のメリットは、商標を勝手に使われたり模倣されたりすることを防げることにあるでしょう。

日本では、2007年、伊勢名物「赤福」が不祥事を起こして営業禁止処分を受けた際、「御福餅」という“赤福そっくりさん”と言われる他社商品の売り上げが急増するという事態が発生しました。ピンクに赤字のパッケージから中身の餡子餅までそっくりで、「赤福」が買えないなら他のブランドのものでも構わないという消費者が多かったのでしょう。

実際には、江戸時代の伊勢には餡子餅を提供するお店がたくさんあったので、「赤福」も「御福餅」もその生き残りで本家ではないという説があり、どちらかがどちらかのパクリ商品というわけではないようです。しかし、自社が本家だった場合、模倣品で利益を挙げられたら面白くないのが当然です。

その場合、商標登録しておけば、商標を無断で使用した人を訴えて損害賠償を請求することができるので、売り上げやブランドイメージを護るためにも商標登録をしておいた方が安心というわけです。

 

※「御福餅」もその後、賞味期限などの偽装により販売自粛処分を受けています。

 

ベンタブラック独占に意義!カラーは個人や企業が一人占めしていいの?

商標登録にはメリットがある一方、色彩のみの商標権を取って色を独占することに意義を唱える人もおり、海外では裁判沙汰になっているケースもあります。特に、単一色のみだと、ロゴと組み合わせた色と違って識別力がないため、特定の人や団体オリジナルのものと考えにくい傾向があると思われます。

2016年、イギリスでは、そんな単一色の独占がアートの世界で行われ、物議を醸しました。インド人アーティスト、アニッシュ・カプーア(Anish Kapoor)が、アート素材としてベンタブラックを使用する独占使用権を購入した事件です。

この行為は、「アート界に害を与えている」「芸術に対する犯罪だ」などと多くの人から非難されましたが、その中でも、最もユニークな方法で直接的に批判した人物は、イギリス人アーティストのスチュアート・センプル(Stuart Semple)でした。

彼は、自身が開発した「最もピンクなピンク」という名のパウダー状のピンクの顔料を、カプーア以外の人々でカプーアの手に渡らないことを約束した人々にのみ販売したのです。その後、ベンタブラックに似せた塗料「ブラック3.0」の開発も行いました。

センプルは、他にも、バービーピンクやティファニーブルーなどの商標登録カラーに対して同じような対抗を行っており、それらに近い色をつくることで、一般的な使用をブロックされた色を解放しようとしています。

「資材はオープンであるべきであり、そうすることでコミュニティーは発展すると私は信じている」

センプルのこの言葉のように、企業等が色彩を独占することは、ある業界や社会の発展を妨げることに繋がる場合もあります。その点も含め、商標登録する意味について考える必要がありそうです。

※ベンタブラック……2012年、イギリスのサリーナノシステムズ(Surrey NanoSystem)社が、主に工学用途のために開発したブラックコーティングのブランド名。カーボンナノチューブから構成される、可視光の最大99.965%を吸収する物質であり、2019年にMIT(マサチューセッツ工科大学)が吸収率99.995%の物質を発表するまで、「世界で一番黒い色」とされていた。

 

登録申請前に特許庁のプラットフォームで商標検索を

商標権は、特許庁に先に出願をして登録した者が得ることのできる権利です。そのため、万が一、先に同じ商標が登録されていた場合は、その商標が使えなくなったり、商標権侵害に当たったりする可能性があります。

商標登録を申請する前、あるいは色を決める段階において、特許庁の知的財産データベース「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」で同じ商標が既に登録されていないか検索しておくと安心です。

▼特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)はこちら

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

▼弊社へのご相談はこちらからお気軽にお問い合わせください

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出典:

https://www.thecollector.com/vantablack-anish-kapoor-stuart-semple-controversy/

https://www.buzzfeed.com/kassycho/petty-in-pink

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