意外な人気観光スポットに学ぶ!地方に外国人を誘致する方法

2024年の訪日外国人数は年間3600万人を超えて過去最高となりました。しかし、日本国内での観光プロモーションは都市部や著名な観光地に集中しがちで、地方にお住まいの場合は「観光資源と呼べるようなものがない」「PRしても人が来るイメージが湧かない」と考えてしまうでしょう。それでも、諦めるのはまだ早いかもしれません。外国人観光客の視点に立つと、インバウンド事業の新たなチャンスが見えてきます。

この記事では「日本人にはあまり知られていないが、外国人観光客に評価されている観光地」を事例に挙げながら、地域資源の可能性を再考する視点をご紹介します。

地方に外国人を誘致する5つの意外な観光資源

インバウンド資源1. 道の駅

全国に展開されている「道の駅」は、日本人にとっては休憩所あるいは産直販売所のイメージが強いですが、外国人観光客には「地域文化に触れられる場所」として意外な注目を集めています。

例えば、山形県の「道の駅あさひまち」は、地域の特産であるりんごに特化した商品や体験がそろい、りんごジュースの試飲やりんご狩り体験などが高く評価されています。英語対応のスタッフがいることもあり、特に欧米系旅行者から「地元の農業文化に触れられる」と好意的な声が寄せられています。

また、福岡県の「道の駅おおとう桜街道」は、2億円ともいわれる豪華なトイレ施設が話題となり、YouTubeなどのSNSで世界中に拡散されました。多くの外国人観光客が「こんな場所が日本にあるとは思わなかった」と興味を持ち、実際に訪れるきっかけとなっています。

淡路島の「道の駅うずしお」もその一例です。鳴門海峡の渦潮が間近で見られる絶好のロケーションに加え、地元特産の淡路島玉ねぎを使用した「淡路島バーガー」など、独自のグルメが外国人観光客にも人気です。「景色と味の両方が楽しめる場所」として、高評価を得ています。

さらに、高知県の「道の駅なかとさ」は、漁港に隣接しており、朝どれの新鮮な魚を味わえる寿司店が併設されています。観光地化されすぎていない“本物の漁村体験”を求めて訪れる外国人も多く、「地域の人と同じ場所で食事ができる」ことに特別な魅力を感じているようです。

このように、道の駅は単なる休憩施設にとどまらず、「その土地ならではの体験ができる拠点」として、外国人旅行者の旅程の中で大きな価値を持つ存在になっています。中には「道の駅を目的地として旅を計画している」という旅行者もいるほどです。

インバウンド資源2. 倉庫街・工場跡地

兵庫県の赤穂市や香川県の高松市などでは、港湾や工場地帯にあった倉庫を活用し、アートイベントやギャラリーに再活用する取り組みが見られます。これらは外国人旅行者にとって、都市型の美術館とは異なる「地域性のある文化体験」として好意的に受け止められています。

産業遺産を活用したアートイベントは、海外の旅行者にとって「日本の地方文化と現代アートが融合した特異な空間」として映ります。未活用の施設があれば、観光とは異なる文化発信拠点としての再評価が可能です。

インバウンド資源3. 旧線路や廃駅

長崎県の島原鉄道・南目線跡や、北海道の旧白滝駅のように、廃止された鉄道路線や駅舎が静かに残されている地域があります。これらは日本人にとっては“過去の遺物”かもしれませんが、外国人旅行者にとっては「ノスタルジックでフォトジェニックな場所」としてSNSを中心に人気を集めています。

線路跡を活用した歩道整備や、旧駅舎を案内所やカフェにリノベーションすることで、移動手段から観光資源への転換が実現できます。

インバウンド資源4. 島や半島など アクセス困難エリア

神奈川県の無人島「猿島」や、鹿児島県の「長島」、愛媛県の「大三島」など、フェリーや車でしか行けない“アクセスがやや不便”な場所が、外国人観光客の間で逆に注目を集めています。

理由は、「行くこと自体が冒険になる」こと。観光客は、交通の不便さよりも「独特の世界観」「手つかずの自然」「SNS映えする景色」など、非日常体験を求めています。

地元では「不便だから無理」と思われていた場所こそ、他にない魅力を持っている可能性があります。

意外なインバウンド資源5. 伝統行事や地域の暮らしそのもの

都市部では再現が難しい“地域の暮らし”や“人とのふれあい”こそが、外国人観光客にとって忘れられない体験になります。例として、農家民宿での田植え・稲刈り体験、地域の秋祭りへの参加、地元住民との郷土料理づくりなどは、いずれも高い満足度を生んでいます。

福井県や秋田県などの農村部では、都市圏からの外国人が「日本人の本当の暮らしを見たかった」と感動するケースが後を絶ちません。物ではなく“人”に焦点を当てる観光の形は、どの地域でも取り組みやすく、持続可能性にも優れています。

インバウンド事業の可能性は、どの地域にもある

「観光資源がない」と感じられていた場所が、今やSNSで話題になり、世界中から旅行者が訪れるケースは少なくありません。大切なのは、地域にとっては“当たり前”となっている風景や習慣を、外からの視点で再評価することです。

知名度や規模ではなく、“唯一無二”の体験こそが、これからの観光価値の核になります。地方の中小企業や自治体こそ、観光の次世代モデルを牽引するポテンシャルを秘めています。

まずは、自地域の資源を洗い出し、外部目線で棚卸しすることから始めてみてはいかがでしょうか。

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