日本と海外子育ての違い③イギリスの子育て事情「子育てしにくい点」は?

日本と海外の子育ての違いについてご紹介しているシリーズ3回目は、弊社のあるイギリスで暮らす子育て中の人々が、普段どのように過ごしているのか、リアルな日常に注目してみました。

保育施設を利用しない日はどのようなところで過ごしているのか?、子育てしにくいと思われている点(子連れだと不便な点)はあるのか?について調査しています。

イギリスの子育て世代をターゲットとしたビジネスのヒントに繋がれば幸いです。

 

 

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日本と海外子育ての違い|イギリスの親子が利用する子どものための施設など

日本には、未就学児を持つ親(保護者)が利用できる自治体運営の子育て支援センターや児童館があります。そこでは、子育てに関する相談や学び、乳幼児親子同士が交流できるサークルや場などの提供を行っていますが、海外にもそのような場所はあるのでしょうか?

イギリスの親子が普段利用する施設などを調査しました。

① プレイグループ

プレイグループとは?

プレイグループとは未就学児を対象としたグループセッションで、ベイビーグループと呼ぶ人もいれば、トドラーグループ(特に2-5歳くらいの幼児を対象としたもの)と呼ぶ人もいます。

プレイグループの主催者は、日本の子育て支援センターにあたるカウンシル運営のチルドレンズ・センターや図書館、教会のボランティア団体、民間団体など様々で、セッションによっては有料(5-15ポンドほど)の場合もあります。

プレイグループの内容は?海外ならではの「メッシープレイ」も

例えば、チルドレンズ・センター主催のものは、90分間のセッションが午前と午後に1つずつ、曜日ごとに違う内容のものが開催されています。

ベイビーマッサージやマカトンサイン、おもちゃのある部屋で遊びながら親子同士が交流できるステイ&プレイ、ナーサリーライム(童謡)、ダンス、体操、森散策など内容は多岐に渡り、日本で行われているものとそれほど変わりません。セッション毎に年齢制限やノンウォーカーのみ、チャイルドマインダーのみなどの制限が設けられています。

海外ならではのセッションで言うと、メッシープレイというものがあります。メッシープレイとは、「Messy(汚い・散らかった)」+「Play(遊び)」という名の通り、手や服を汚しながら、用意された素材とその特性を自由に探究する遊びです。「ぐちゃぐちゃ遊び」と訳すのが適切でしょうか。

プラスチックシートの上に広げられたシェービングフォームやゼリー、ヌードル、米、砂などを触ったり、膨らませた風船に刷毛で色を塗ったり。万が一口にしても問題ないものばかりなので安心です。

握ったり、引っ張ったり、つついたりを好きなだけ繰り返すことで好奇心が充たされるだけでなく、五感が刺激されて脳の発達に良いなどのメリットがあるため、人気のセッションとなっています。

 

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② プレイカフェ

プレイカフェは、通常のカフェに子ども向けの遊び場を組み合わせたもので、ファミリー層をターゲットにしています。保護者がお茶を飲んでいる間、子どもたちはアクティビティスペースでおもちゃや滑り台などの遊具を楽しむことができます。

③ ソフトプレイ

ソフトプレイとは、厚いパッドで覆われた滑り台やジャングルジムなどの遊具、スロープ、階段、ボールピット、トランポリンなどが設置された遊び場施設のことです。

雨の日が多いイギリスでは、外で遊べない時の子どもたちの遊び場として活躍しています。

④ 子ども向けミュージアム

ロンドンには200以上のミュージアムがあり、子ども向けのものもたくさんあります。

例えば、乗り物好きの子どもを連れて行きたいロンドン交通博物館(London Transport Museum)、物語の中を表現したインタラクティブな室内空間や屋外ガーデンのあるディスカヴァー・チルドレンズ・ストーリー・センター(Discover Children’s Story Centre)、メールレールに乗って郵便の歴史を学んだり、プレイスペースで郵便局員ごっこをしたりできる英国郵便博物館(The Postal Museum)、ファミリー向けアクティビティの開催も行うヴィクトリア&アルバート子ども博物館(Young V&A)などが挙げられます。

ミュージアム内には子連れでも利用しやすいカフェやおむつ交換台付きトイレもあるので、子連れの人々にとって定番のお出かけ先の1つとなっています。

日本と海外子育ての違い|イギリスにおける「子育てしにくい点」とその対策

① 駅にエスカレーターやエレベーターがない

世界でも有数の大都市ロンドンですが、地下鉄の駅は古く、バリアフリー化が進んでいません。エスカレーターやエレベーター(リフト)がない駅は多いですし、「Mind the gap !(車両とホームの隙間にご注意ください)」というアナウンスが頻繁に流れるように、バギーや車椅子では、車両に乗る時に助けが必要となります。

近くの人が「お手伝いしましょうか?」と声をかけてくれる確率は日本より高いのかもしれませんが、そのような親切な人が毎回必ずいるとも限りませんし、お願いするのが憚られる空気の時もあるでしょう。

その心配を失くすためには、目的地を決める際に、路線図で車椅子対応マークがある駅を調べ、その周辺から探すという手もあります(目的地を自分自身で決めて外出する場合に限りますが)。

車両とホームの隙間については、まず、ホームの壁に「Level access boarding here」という文字とともに表示された「バギーと車椅子マーク」、あるいは地面に「車椅子マーク」がないかを探してみましょう。

その位置へ行くと、2車両分ほどホームがなだらかに盛り上がっているので、車両の乗り口と同じ高さから段差なしで乗ることができます。

② 公衆トイレが少ない

駅や公園、スーパーマーケット、コンビニなど、どこにでも利用できるトイレがある日本と違い、イギリスは、ロンドンの街中ですらトイレがほとんどありません。新しい、あるいは大きな駅、大型スーパーマーケットにはあるところもありますが、通常の駅やスーパーマーケット、公園、コンビニ(大手スーパーマーケットの小型店やオフライセンス、ニュースダイジェスト)にはトイレがなく、ましてやおむつ交換台付きのトイレはなかなか見つからないため苦労します。

子どもが急にトイレに行きたいと言い出した場合は、あちこち探し回るより、近場の飲食店に入って借りるのが手っ取り早い時もあります。しかし、厭くまで顧客のためのトイレなので、何かを注文する必要があります。プレタ・マンジェ(Pret a Manger)やコスタ(COSTA)のようなカフェは街の中心部ならどこでもありますが、トイレにはロックがかけられており、レシートに記載されているコードを知らないと使えないようになっています。

緊急事態でない場合は、ロンドン中心部ならデパート、大型書店、ミュージアムのトイレが無料で利用できます。

③ 衛生観念が低い

衛生面で気になるのは、特に、室内に土足で上がる習慣です。プレイグループが開催される部屋も、大抵土足やバギーの持ち込みが可となっていますが、床に直接座ることやハイハイする乳児がいることを考えると、決して好ましいものではありません。定期的に掃除も行われていないようで、埃の塊やお菓子のくずが落ちていることもあります。

日本の子育て支援センターでは、午前と午後に1回ずつ掃除を行い、玩具の消毒も行っているというところもあります。このような清潔な環境で育ってきた日本人には、慣れるのに時間がかかる点かもしれません。

④ 医療システムに不安がある

イギリスの国民保健サービス(NHS)は診察が無料な分、待ち時間が長く、症状が軽いと判断された場合は医師の診察を受けることができないなどのデメリットがあります。

診察を受けたい場合は、まずGP(診療所、かかりつけ医)に電話をし、診察の必要があると判断されれば診察を受けることができます。日本のように予約なしで直接訪れても診察してもらえません。

子どもが熱を出した時、風邪か流行の感染症か不明な場合がありますが、7日以上続けて熱があるなどでない限り、血液検査などをして病名を明らかにすることはなく、通常は「様子を見ましょう」で終わります。

緊急性がないけれど診察してもらいたい時は、NHS運営の大きな病院にあるウォーク・イン・センター(Walk-in Centre)を利用しましょう。看護師の診察になりますが、24時間年中無休で対応してくれます。

⑤ 保育費用が高い

 

▼保育費用についての詳細はこちらの記事をご覧ください

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「子育てしやすい点」もある海外(イギリス)

施設や設備などをハード面、支援や世間の理解などをソフト面とすると、日本はおおむね、後者より前者の方が進んでいて、イギリスはその逆のように感じます。

イギリスでは、先に挙げたように、衛生面、バリアフリー、医療について注目すると、子育てしやすいとは言えません。しかし、政府の政策(子育てと仕事の両立を促進させる支援など)や世間からの理解面においては、比較的子育て世代が生きやすい社会が成立していると言えるのではないでしょうか。祖父母らしき老夫婦がカフェで赤ちゃんにミルクをあげていたり、父親らしき男性がバギーを押していたり。電車内では子連れの人に席を譲り、泣き叫ぶ子どもを自分の子のようにあやす人々。そんな光景を見かけるのもロンドンでは日常茶飯事です。

「子育て」とは、母親だけでなく、家族、親戚、地域の人々、延いては社会が一丸となって取り組んでいくべきことだという認識が根底にあるのでしょう。

イギリスの古い駅に、未だにバリアフリー工事が施されない、つまり施す必要がないと思われているのは、そんな認識が少なからず関係しているからかもしれません。

 

 

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