日本と海外子育ての違い①イギリスの保育園の特徴 費用 補助金は?

前回の記事「【少子化対策&子育て支援】海外の成功例,日本との違いを比較」では、日本と海外における少子化の現状や海外の少子化対策成功例をご紹介しました。その続きとして、海外の人たちがどのように子育てをしているのか、もう少し具体的に調査してみました。

弊社のあるイギリスでは共働きの両親が多いですが、どのように子育てと仕事を両立しているのでしょうか?子どもを預ける時の選択肢や費用などにおいての日本との違いをご紹介します。

 

【イギリスの保育事情 1】保育園の特徴・費用・補助金は?

保育園費用は高い!毎日預けない人も

イギリスの保育園(ナーサリー)は日本と比較すると費用が驚くほど高いです。そのため、日本のように週5日間ではなく、週2日くらいからパートタイムで利用する人もいます。

実際に子連れの方に話を伺ってみると、保育園に預ける日と自分あるいはパートナーが面倒を見る日、両親やチャイルドマインダー(※本記事後半参照)にお願いする日を上手くミックスし、働きながらも1週間をスムーズに乗り切っている人が多かったです。また、同じくらいの年齢の子どもを持つ母親たちが集まって、何人かで交代で子どもたちを預かっているというグループもありました。

保育園に入れる年齢は、生後3ヶ月から可能なところもあるため各家庭によりますが、補助金が出る2歳頃が一般的のようです。

以下は、ロンドン中心部における保育園の1ヶ月にかかる2024年の平均費用です。

 

パートタイム(週25時間)の保育費用

2歳未満:1ヶ月平均947ポンド(約18万円)

2歳:1ヶ月平均945ポンド(約18万円)

 

フルタイム(週50時間)の保育費用

2歳未満:1ヶ月平均1,856ポンド(約35万円)

2歳:1ヶ月平均1,867ポンド(約35万円)

 

子育て支援の一環で補助金が出る(保育時間の一部が無償化)

イギリスでは、既に3、4歳児の保育時間が週30時間無料ではありましたが、2024年4月からは無償化の対象年齢が広がり、2歳児の保育時間が週15時間無料となる制度も追加されました。

さらに、9月からは生後9か月の乳児の保育時間15時間が無料、その1年後、2025年9月からはすべての5歳未満児の保育が30時間無料となることが決定しています。

無償化を受ける資格があるか否かは子どもの年齢以外に、親が働いているか否か、親の収入、入国ステータスなどによって判断されます。

例えば、21歳以上の親の場合は、どちらも働いていて年間の収入がそれぞれ9,520ポンド以上、10万ポンド未満で国民保険番号(National Insurance number)を持っている場合は資格があるということになります。育児休暇中なども働いているに値したり、自営業の場合は現在の課税年度に予想される収入の平均を申請時に使用したりしてもいいなどの細かい規定があるため、自分に当てはまる条件を漏れなく見極める必要があります。

但し、この無料の保育時間だけでは全額がカバーされないことが問題となっています。食事代や保育時間内に使用する備品代(おむつ、日焼け止めクリームなど)が含まれていないからです。そのため、パートタイム保育でこの制度を利用したとしても、1ヶ月当たり1,000ポンド近く追加で払う必要がある場合もあります。

慈善団体Pregnant then Screwedの調査によると、調査対象の親の約1/4(23%)が、無料保育時間を利用しても追加費用のせいで余裕がないと回答しています。

 

【イギリスの保育事情 2】日本の一般的な保育園との違いは?

①    入園式がない

保育園に入る年齢は各家庭によって違うので入園式がありません。

卒園式があるかは園によりますが、ある場合は4歳の小学校入学準備クラス(プリスクール)が終わる7月下旬頃に行われます。

②    公立の保育園は休みが多い

冬・春・夏休み意外に、各学期の中間にハーフ・タームと呼ばれる1週間程のホリデー(年3回)と教職員の研修日、インセットデーがあります。

この期間に子どもの面倒を見る必要がある働く親は、無給休暇がとれる「ターム・タイム労働制(Term-time working)」を利用できます。

③    スタッフ1人が担当する子どもが日本より少ない

日本では1人のスタッフが20人ほど担当するのが通常ですが、イギリスでは1人のスタッフが担当する子どもは8人ぐらいです。

これも保育園費用が高い理由の1つと思われます。

④    特別な持ち物がない

オムツやナッピークリーム、日焼け止めクリーム、昼寝に使用する布団などは保育園が用意してくれるため、毎日持って行く必要があるものは着替えぐらいです。

⑤    食事が1日3食付いていてメニューが国際的

1日預ける場合は朝食や夕食まで付いている保育園もあります。

ロンドン内の、とある園におけるメインメニューを見てみると、レンズ豆のシェパーズパイとブロッコリー(イギリス料理)、ホームメイドベジタリアンピツァと野菜スティック(イタリア料理)、チキンとペッパーのファヒータ(メキシコ料理)、レンズ豆のムサカ(ギリシャ料理)、豆とほうれん草のカレー(インド料理)と国際色豊かでした。

様々な人種の子どもたちが集まるロンドンならではのメニューかもしれません。

⑥    モンテッソーリ系保育園が多い

モンテッソーリ教育メソッドを取り入れた保育園があちこちにあります。

学校と保育園を合わせたデータですが、モンテッソーリ学校協会(MSA)の調査では、2019年時点でイギリス全国に700あることが分かっています。

⑦    Ofsted評価でランク付けされている

イギリスにはオフステッド(Ofsted:Office For Standards in Education)と呼ばれる教育水準局があり、視学官が数年かけて全保育園・学校を訪問監査し、監査結果を公表しています。

評価基準は生徒の学習レベルから振る舞い、教師の質、環境などで、評価は5段階に分かれています。上から「Outstanding(素晴らしい)」「Good(良い)」「Adequate(可)」「Requires improvement (要改善)」「Inadequate (不適切)」となり、親たちはこれを保育園や学校選びの参考にしています。

                                                   

▼イギリス全土の学校におけるOfsted情報はこちらから閲覧できます

https://reports.ofsted.gov.uk

 

【イギリスの保育事情 3】保育園に預ける以外の選択肢は?

①     ナニーを雇う

ナニーとは、イギリスが発祥と言われる家庭訪問型保育の専門家です。一時的に子どもの世話をするベビーシッターとは違い数年単位で継続的に関わり、教育やしつけなども行います。

パートタイムのナニーを雇う場合は、1ヶ月約1,000-1,700ポンド(約19-32万円)、住み込みのナニーの場合は1ヶ月約1,700-2,800ポンド(約32-53万円)かかります。これらの賃金に加え、税金や国民保険料も雇い主が払うことになっています。

②     オペア(オーペア)を雇う

オペアとは、フランス語で「au pair(対等の~)」を意味する言葉ですが、一般的には、住み込みで子どもの保育や家事をする人(職業)を指します。

雇い主はその見返りに、宿泊代や食事などの生活費を負担し、毎週少なくとも90ポンド(16,920円)のお小遣いを支払います。

③     チャイルドマインダーに預ける

チャイルドマインダーとは、少人数保育のスペシャリストで、多くの場合、自宅で乳児から5歳くらいまでの子どもたちを預かります。イギリスでは国家職業資格の認定を受けており、チャイルドマインダーになるには基本的な訓練や応急処置コースを習得する必要があります。保育園よりも保育時間が柔軟で費用が安い(教育省によると平均16%安い)こともあってか、イギリスではポピュラーな選択肢となっています。

パートタイムのチャイルドマインダーの給料は、1ヶ月約600ポンド(約11万円)、フルタイムは1ヶ月約1,100ポンド(約20万円)。

日本の子育て支援センターのような施設、チルドレンズセンターが提供するステイ&プレイ(※)には、チャイルドマインダーのみが参加できる枠があります。

 


※    費用は2024年8月現在のレート、「1ポンド=188円」で計算し、小数点以下を四捨五入しています(切りのいい数字にするために適当なところで四捨五入している数値もあります)

※    ステイ&プレイ……おもちゃが置いてある部屋で子どもを遊ばせながら親同士が交流できる場

 

「海外は日本より子育てしやすい」と言える?

海外(欧米)では子育て支援が充実している印象ですが、少なくとも保育料が高いことに関して言えば日本の方が子育てしやすいのではないでしょうか(日本の保育料に関しては割愛します)?イギリスだけでなく、アメリカやカナダ、スイスなどでも保育料は高額と言われており、家賃に匹敵するレベルです。イギリスでは、2歳未満児のフルタイム保育料はフルタイム労働者の平均給与約半分(45%)にも相当すると言われているほどです。先に述べたように、政府からのサポートも十分ではありません。

しかし、保育園以外の選択肢が充実していることや働く親のことを考えた制度があることからすると、子育てと仕事を両立しやすい面はあります。

イギリスでの子育ては経済的な挑戦を伴いますが、給料のほとんどを保育料に費やすとしてもキャリアを重視したい女性にとっては子育てしやすい国と言えるかもしれません。

 

今後投稿予定の「日本と海外子育ての違い」続編では、子育てしやすい国ランキングやイギリスの子育て事情などをご紹介します。

 

 

▼イギリスの働きやすさを追求した制度一覧はこちら

イギリスの働き方改革 日本と海外「働き方の違い」を知る

 

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出典:

https://www.statista.com/statistics/1275908/cost-of-full-time-nursery-childcare-britain-by-region/

https://www.daynurseries.co.uk/advice/childcare-costs-how-much-do-you-pay-in-the-uk

https://www.gov.uk/check-eligible-free-childcare-if-youre-working

https://www.nurseryworld.co.uk/content/news/demand-grows-among-parents-for-montessori-schools-in-uk#:~:text=The%20MSA%20estimates%20that%20there,are%20members%20of%20the%20association.

https://www.theguardian.com/society/ng-interactive/2023/nov/06/how-much-does-it-cost-for-you-to-raise-a-child

https://www.bbc.co.uk/news/education-62036045

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