イギリスの働き方改革 日本と海外「働き方の違い」を知る

7月4日に行われたイギリスの総選挙において、最大野党・労働党が歴史的な対象を収め、与党・保守党から14年ぶりの政権交代となりました。このことで、労働者の権利がどのように改革されるのか気になっている人もいるでしょう。

本記事では、新労働党が「Plan to Make Work Pay(労働​​賃金化計画)」の中で打ち出している雇用法改正の前に、イギリスで現在行われている働き方改革をまとめ、日本の状況と比較してみたいと思います。

イギリスで従業員を雇う場合に必要な知識として頭に入れておきましょう。

 

過去記事日本と海外「働き方の違い」イギリス編では、海外の人が驚く日本人の働き方をイギリス人の基本的な働き方と比較しながらご紹介し、先々週の記事「【少子化対策&子育て支援】海外の成功例,日本との違いを比較」では、海外の少子化対策事例の中で働く親のための制度にも少し触れています。これらも合わせてご覧ください。

 

 

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イギリスの働き方改革「フレキシブル・ワーク」とは?

フレキシブル・ワークとは?

フレキシブル・ワークとは、始業時間や終業時間を柔軟に設定したり、在宅ワークを選んだりするなど、労働者のニーズに合わせた働き方のことです。近年は情報通信技術の発展や女性の社会進出の増加などにより、“午前9時から午後5時まで”といった固定的な働き方が見直され、個人個人のライフスタイルに合った働き方が取り入れられつつあります。

コロナ禍を経て、在宅ワークのメリットや希望者の多さが浮き彫りになったことも背景にあるのでしょう。様々なフレキシブル・ワークの方法が多くの国において再検討され、導入されようとしています。

 

以下に、イギリスで認められているフレキシブル・ワークの例、すなわち柔軟な働き方をする方法を挙げてみました。

 

イギリスの働き方改革事例一覧

①    ジョブシェアリング(Job sharing)

2人のパートタイム労働者が、1つのフルタイムの役職の責任を分担し、合意されたスケジュールに従って時間と職務を分割します。賃金や福利厚生などもシェアとなります。

②    リモートワークと在宅ワーク(Remote working and working from home)

日本でも取り入れられているためご存知と思いますが、自宅やカフェなど、通常の職場以外の場所で勤務する形態を指します。これはフルタイムでもパートタイムでも可能で、電話やパソコンを用いた仕事が可能な職業で多く取り入れられています。

③    ハイブリッド・ワーキング(Hybrid working)

リモートワークと通常の職場での勤務を組み合わせたものです。

④    パートタイム(Part time)

フルタイム未満の労働時間(通常は労働日数が少なくなる)契約で、教育や育児、個人的な事情などとバランスをとることが可能になります。

⑤    圧縮労働時間制(Compressed hours)

フルタイムでの勤務ですが、勤務日数が少ない契約パターンです。例えば、一週間に1日8時間勤務を5日間行う代わりに、10 時間勤務を4日間行います。一週間の勤務時間は40時間と変わりませんが、週に3日間休むことができます。

⑥    フレックスタイム制(Flexitime)

合意された制限内で仕事を開始および終了する時間を選択できますが、特定のコアタイム(毎日午前10時から午後4時までなど)は働く勤務形態です。

⑦    年間労働時間契約制(Annualised hours)

年間を通じて一定の時間働く必要がありますが、働く時間についてはある程度の柔軟性があります。場合によっては、毎週定期的に勤務するコアタイムがあり、残りの時間は柔軟に、または追加の需要がある時に勤務します。

⑧    時間差勤務制(Staggered hours)

始業時間、終業時間、休憩時間が労働者ごとに違う勤務形態。これによって、雇い主は営業時間を延長できます。

⑨    段階的定年制(Phased retirement)

定年時期が近づくにつれて時間を短縮し、パートタイムで働くなど就業形態を漸進的に変更していくことが可能な制度です。

⑩    ゼロ時間契約制(Zero-Hours Contracts)

カジュアル契約とも呼ばれ、固定の労働時間が保証されておらず、必要な場合にのみ勤務する形態のこと。通常、通訳などの“出来高払い”または“オンコール”の仕事に適用されます。ゼロ時間労働者は、通常の労働者と同様に法定年次休暇と最低賃金を取得する権利があります。

⑪    ターム・タイム労働制(Term-time working)

イギリスの公立保育園や小中学校には、冬・春・夏休み意外に、各学期の中間にハーフ・タームと呼ばれる1週間程のホリデー(年3回)と教員の研修日、インセットデーがあります。共働きの家庭は、その度に仕事を休んで子どもの面倒を見るか、誰かに預ける必要がでてくるわけです。そんな家庭のための、学期中(ターム・タイム)だけ働いて、子どもの学校の休暇中は無給休暇をとることができるという制度です。

⑫    期間限定労働時間短縮制(Reduced hours for a limited period)

連続した一定の期間、労働時間を短縮し、その後通常の労働時間に戻すことが可能な制度。

 

※ 2024年4月6日以降、フレキシブル・ワークに関する申請が雇用初日からできるようになりました。さらに、この申請は年に2回することが可能であり、雇用主は2ヶ月以内にその要求に応じる必要があります。

※ 労働者が、自分の要求が雇用主にどのような影響を与えるか、あるいはその影響にどのように対処するかを説明する必要もなくなりました。

 

日本と海外(ヨーロッパ)、「働き方に対する考え方」に違いがある?

先に挙げたイギリスの働き方改革を見ても分かるように、イギリスを含む海外では働き方改革が進んでおり、日本にはない制度が導入されています。

それは、働くことへの考え方の違いから来ているとも考えられます。例えば、日本では勤勉な印象のある長時間労働ですが、海外では仕事ができないために早く帰れないと思われてしまうことがあります。海外では、量より質が重視されるため、短時間でもやるべきことをやっていれば何も問題はないのです。

また、組織よりも個人個人が重視されるため、組織のためにではなく自分のスキルアップのために働くという意識が高い点にも違いがあります。

このような働き方に対する考え方の違いが、勤務時間のフレキシブルさや個人の事情に応じた多様な働き方の推進に繋がっていると言えます。

次回の記事では、日本とアメリカにおける働き方の違いについてご紹介します。

 

 

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出典:

英国政府「Flexible working -Types of flexible working」

英国政府「Contract types and employer responsibilities -Zero-hours contracts」

https://worknest.com/blog/benefits-term-time-contracts-employees/#:~:text=Term%2Dtime%20contract%20definition,school%20holidays%20with%20their%20children.

https://www.peoplemanagement.co.uk/article/1856168/new-flexible-working-laws-employers-guide

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