アメリカの働き方の特徴/日本との違い10選+女性の労働環境
2019年に厚生労働省が「働き方改革」を発表して、長時間労働の是正、ハラスメント防止対策など、日本でも労働者が働きやすい環境を整える取り組みが始まりました。それでも海外の人たちから見ると日本の働き方は、良いか悪いかは別として、海外の常識とは異なる部分が多いようです。
前回の記事では日本とイギリスの働き方を比較しましたが、今回の記事ではアメリカの働き方について紹介していきます。
▼前回の記事はこちらからご覧ください
アメリカの働き方の特徴
アメリカには様々な人種の3億3千万人以上の人たちが暮らしているため、一概に特徴をまとめるのは難しいですが、全体的には実力主義で常に競争が激しいという印象があります。
違法な理由でない限り、雇用者と労働者は合意なしに雇用関係を解消できるため、仕事のできが良くないと解雇されてしまう恐れもあります。評価の低い1割程度の社員を毎年解雇して、別の新しい社員に入れ替える企業もあるそうで、競争が激しくなるのも理解できます。反対に仕事のできが良い人は、それに見合う報酬が得られないとすぐに転職してしまうので、企業側も良い人材を確保するのが容易ではありません。
こうなった背景として、アメリカには移民や難民を先祖に持つ人たちが珍しくないため、アメリカという国に暮らせること自体が誇りで、それを守るために努力しなければならないと考える、国民性が挙げられます。
日本とアメリカ【働き方の違い10選】
①成果主義
アメリカ人は仕事に対して真摯に取り組むといった労働倫理を大切するので、意外にも日本と同様に、仕事においては時間厳守です。ただし、長時間働くなどの努力をすれば良いのではなく、成果を出すことが最も重要視されます。
②個人の責任感&プロ意識重視
日本の働き方は一般的にチームプレーであることが多く、協力し合って集団で努力することが重要視される傾向がありますが、アメリカの働き方は一般的に個人プレーで、個人の責任感とプロフェッショナリズムが重視される傾向があります。新卒の社員に対してもプロ意識が求められるため、大学生が一般企業でインターンシップを行うことも多いです。
③キャリアアップ志向
日本では新卒での就寝雇用が割と一般的ですが、アメリカでは自己啓発やキャリアアップに積極的な傾向があります。スキル向上のため、教育やトレーニングに自己投資する人も多いです。そうすることで競争の激しい社会の中で、自分の価値を自らアピールし、新たなキャリアを築いていきます。労働者が給与の交渉を行うことも珍しくありません。
④コミュニケーション能力も重要
個人の成果や責任感が重要視される一方、チームで働く際にはコミュニケーション能力も重要視されます。チームワークには協調性も大切ですが、日本と異なるのはより良いチームにするため、臆せず発言したり行動したりする能力が求められることです。
⑤生産性と効率が評価される
アメリカでは仕事を効率よく進め、その上で最大限の成果を出すことが重要視されます。タイムマネジメントもスキルのうちだと考えられているため、残業したからといって評価されることはありません。残業の多い人は仕事の効率の悪い人だと、低い評価を受ける可能性もあります。
とはいえ、2017年のOECD経済協力開発機構の調査では、アメリカの方が日本よりも1日の平均労働時間が長いことが分かっています。日本の労働時間が平均7.1時間/日であるのに対し、アメリカは平均7.5時間/日という結果でした。しかしながら、日本の労働時間の平均にはサービス残業が含まれていないため、判断が難しい部分もあります。アメリカではサービス残業をする人は稀です。
⑥ジョブ型の労働環境
ジョブ型雇用とは、求人の際に企業が労働者側に職務内容を明確にして、それに見合ったスキルを持った人を採用する雇用方法です。スキルがあれば、年齢、性別、人種等を問わないことも多いようです。また、職務を追行して成果を出せば、労働時間を問わない場合もあり、フレキシブルな労働環境を生みやすいことも特徴です。
日本の労働環境は「人に仕事をつける」と言われるのに対して、アメリカのジョブ型労働環境は「仕事に人をつける」と表現されることもあります。
⑦プライベートも大切にする
働き方改革で少しずつ変わってきてはいますが、日本ではプライベートよりも仕事に重点を置く傾向が強いのではないでしょうか。日本人と同様に、勤勉だといえるアメリカ人ですが、同時にプライベートとのバランスも大切にしています。家族と過ごす時間を大切にする人も多いため、アメリカの出生率は先進国の中では比較的高い数値を維持しています。
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⑧働き方の多様性
コロナ禍以降は日本でもテレワークが普及していますが、アメリカの企業の多くも在宅でのテレワークを実施しています。また、正社員だけでなくパートタイムやフリーランスなど、自分のライフスタイルや経済状況に合わせた働き方を選択する人も多いです。副業に関しても、柔軟に受け入れられています。
⑨チャレンジする
アメリカでは創造性や新しいアイディアが重視されるため、多少のリスクがあってもチャレンジすることが奨励されます。仮にスタートアップ企業を立ち上げて失敗したとしても、チャレンジしたことを評価されて再就職が有利になることもあります。
変化に対しても柔軟であるため、技術革新が起こりやすい環境でもあります。
⑩定年退職という概念がない
アメリカでは1986年に連邦雇用差別法が改正され、一部の職業や企業を除いて、40歳以上であることを理由に解雇や雇用差別することが禁止されました。したがって、60歳だからという理由で定年退職や再雇用になることがありません。そのため、リタイアしたい時期を労働者側が自分で決めます。リタイアの平均年齢は男性が68歳前後、女性が66歳前後だと言われています。ちなみに、公的年金の支給開始は66歳からです。
アメリカの女性の働き方
アメリカのジェンダーギャップ指数は146か国中43位で、日本の118位と比較すれば良く思えますが、実は欧米ではあまり良い方ではありません。アメリカでは1963年のEqual Pay Actによって、性別に基づく賃金差別は禁止されていますが、それでもジェンダーペイギャップ問題 (男女の賃金格差)は解決されていないのが現状です。
2020年のアメリカ国勢調査局のデータによると、男性労働者の賃金を1とした場合、女性労働者の賃金が0.82であることが分かりました。また、賃金格差は業種、人種、年齢など様々な要素によって異なるため、より注意が必要だともされています。たとえば有色人種の女性は、白人の女性よりも賃金が低い傾向があります。具体的には、男性労働者の賃金を1とした場合、黒人女性労働者の賃金は0.63-68、ヒスパニック系女性労働者の賃金は0.55-59という結果でした。
また、アメリカには国の制度としての産休や育休がないため、州ごとの法律や、各企業に一任されている状態です。
それではアメリカは女性が働きにくい国なのかというと、一概にそうでもないようです。上記でも挙げたジョブ型雇用によって、女性でも年齢に関係なく、スキルや経験があれば職に就けることが多いからです。また、フレキシブルに働きやすい環境もあるため、仕事と子育てを両立をしている女性も多いです。
海外では労働時間の長さより効率重視?
前回のイギリスと今回のアメリカの共通点として、労働時間よりも仕事の効率や成果が重視される傾向が挙げられます。次回はドイツの働き方を紹介するので、共通点や相違点を探してみてはいかがでしょうか?