広告も宣伝部もなしで成功した「あるブランド」のストーリー

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現在ロンドン市内に3店舗を構えるアウトドア系のアパレルブランドGandysは、広告を打ち出すことなく、ここまでの成長を遂げました。このブランドを築いたのは、Paul ForkanとRob Forkan(ポールとロブ)の兄弟です。2人が広告に費用を費やさない代わりに行っていることを語るとき、このブランドのストーリーが見えてきます。

2004年のスマトラで

ポールとロブの2人は2004年のスマトラ沖地震による津波で、両親を失っています。当時10代であった2人にとって、その経験がどれほどのものであったかは、説明する必要もないでしょう。2人の結束力が強さも、その生い立ちから来ている部分もあるのかもしれません。Gandysは、2012年に、当時オフィスもなかった2人が寝室でビーチサンダルのデザインを始めたことがきっかけでした。その当時から、収益の一部を恵まれない子どもたちのために当てることを計画していました。これが彼らのプロジェクトです。

単純であるほど良い

「広告に何万ドルもかけるブランドもあるでしょうが、私たちの戦略は、ただプロジェクトを推し進めるだけです」と、兄のポールは語ります。現在本社に47人のスタッフを持つGandysですが、マーケティングだけを行う事業部はありません。現在既に、スマトラとマラウイに児童養護施設を設立していますが、その費用は広告費を削ることによって捻出されています。彼らのプロジェクトを推し進めるためには、SNSが欠かせないと、ポールは明かします。実際に、ブランドを始動させた2012年には、Facebook上だけでビーチサンダルの販売を行い、その後40店舗での委託販売も成し遂げました。その早い成功の裏には、プロジェクトを推し進めていくブランドの純粋なストーリーが、2人の友人からその友人へとシェアされていったということが隠されているのです。2人はプレスリリースが大嫌いだと語ります。プレスリリースをする必要がある時には、仕方なく今後ブランドとして何をしていくかを伝えるものの、飾り立てた宣伝文句をつけ足されるのが好きではないのです。ブランドの自然な嘘のないストーリーが、より顧客の心を捉えると考えているからなのでしょう。

ブランドの今後は?

既にJohn LewisやLibertyなどのイギリスの有名百貨店ともコラボレーションしているGandysですが、現在はMcLarenからの依頼も来ており、それを進めています。McLarenは両親も好きだったためNOとは言えないと、若干無理な依頼があっても、ここでもプロジェクトをただ進めている様子が窺えます。また、ロンドン市内にさらに数店舗出店し、イギリス国内にも店舗を増やし、いずれは海外にも出店を目指しているのだそうです。しかし「決して急がず、マラソンのように進めていきたい。30年かかるかもしれませんが、まだ28歳なので」と、少しずつブランドを大きくしていく展望を語りました。顧客や消費者を動かすのに、ストーリー性があることは重要ですが、マーケティングによってそれを作り上げるのではなく、Gandysのように、真実を伝えていくことで、ブランドはより成長していくのかもしれません。

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