時代を逆手に取って。「禁煙したい人」を狙ったタバコ会社の未来は?
世界的なタバコメーカーのフィリップ・モリスは、禁煙市場をターゲットとし、タバコの需要を低下させ、禁煙市場の拡大を図ろうと試みています。フィリップ・モリスといえば、マルボロなど、世界的に定評のあるタバコで知られていますが、そのような大手タバコメーカーが、逆に禁煙市場を狙っている意図は何なのでしょうか。
喫煙者はどのくらい減っている?
当然のことですが、喫煙者の減少が、フィリップ・モリスをこの大きなターゲット変更へと導いた要因のひとつと言えるでしょう。イギリスでは2012年以降、喫煙者は着実に減少しており、2012年には男性21.3%、女性18%であったのに対して、昨年2017年には、男性16.8%、女性13%となりました。国家統計局(ONS)の調査では、喫煙者の約30%が、禁煙したいという希望を持っており、今後も喫煙者が減少することは目に見えています。
禁煙したい人に目を向けて
フィリップ・モリスは、2014年に日本で電子タバコIqosを発売し、現在では42か国で販売されており、約560万人の喫煙者がIqosに乗り換えたと発表しています。また、2025年までには、4千万人に相当する喫煙者の顧客のうちの30%が、禁煙製品へと乗り換えることを目標として掲げています。フィリップ・モリスのグローバルコミュニケーション責任者Tommaso Di Giovanni氏は、「通常、産業には、他の産業や同業者の競争による混乱が起こりがちだが、今回のケースは、ビジネスリーダーが自ら進んで変化大きな変革を起こそうとしている、貴重な例といえる」と述べています。禁煙タバコを立ち上げる際に、フィリップ・モリスの社内では、マルボロなど既に定評のある製品の名前を使うか、全く新しいものにするかという議論がなされました。「変化を推進したいのであれば、別の名前を付ける必要があります。決定した名前(Iqos)には、技術、革新、変化という意味が組み込まれています」と、Tommaso Di Giovanni氏は語ります。禁煙ブランドの開発には25億ポンド費やされており、約430人の技術・科学・開発の専門家が携わっています。この開発や方向転換は、フィリップ・モリスにとってもリスクの大きいことだが、「正しいこと」をしていると信じていると、Tommaso Di Giovanni氏は述べています。
新たな喫煙者を生まないのか?
イギリスではタバコの広告は規定が厳しく、Iqosのような禁煙製品であっても、製品そのものを宣伝する広告を打ちだすことができません。フィリップ・モリスはこの広告のルール改定も訴えていこうとしていますが、未成年や非喫煙者が、新たにIqosを吸いはじめるという結果を招かないかなど、批判の声もあります。もちろん、そのような層をターゲットとする広告を打ち出すことはありませんが、Tommaso Di Giovanni氏が言うような「正しいこと」となるのかどうかは、まだまだ審議の余地がありそうです。