SDGsな再生繊維。リサイクル循環を可能にする海外企業の繊維技術例

英国の繊維産業は、世界でも権威のある高級ブランドやデザイナー、テーラーなどに最高級の生地を供給することで世界的に高い評価を得ています。そして今日の企業は、伝統技術と最新技術の融合だけでなく、持続可能であるかどうかを追求した繊維・生地製造に知恵やコストを注ぎはじめています。

国連貿易開発会議(UNCTAD)がアパレル業界を世界2位の汚染産業として指摘しているように、環境問題への責任は大きく、アパレル企業は益々高まる消費者のサステナブル意識や要求に対応するために、服の作り方を再考しなければならない時代が来ているのです。

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アパレル業界のSDGs.再生繊維リヨセル・テンセルとは

サステナブルでなければ売れない?欧米の消費者は環境保護に敏感

 eコマースのパーソナライズおよび小売AIプラットフォームであるNostoの新しい調査によると、英国と米国の調査対象の消費者2,000人の半数以上(52%)がファッション業界の持続可能性を高めたいと考えており、そのうち29%は、同じアイテムのサステナブルな方法で作られたバージョンにもっとお金を払うと述べています。

また、多くのアパレルメーカーや小売業者がすでに持続可能性を高めるための措置を講じているにも関わらず、45%は、どのファッションブランドが持続可能性取り組んでいるかを知るのは難しいと述べています。

 ファッション分野にサステナブルを求める消費者はどの年代に最も多いのでしょうか?同調査によると、Z世代(18-24歳)は56%、ミレニアル世代(25-34歳)は51%、35-44歳は55%、45-54歳は47%、64歳以上は50%と、どの年代もほぼ半数と同じような結果でした。

年齢に関係なく半分くらいの消費者がファッションに持続可能性を求めており、どのアパレル企業もサステナブルであるかどうかの配慮とそのような取り組みの透明化が必要であることが分かります。

サステナブルな再生繊維とは?「リサイクル循環を可能にする海外企業の繊維技術」例

 スピノバ(Spinnova)のセルロースファイバー

フィンランドのスタートアップ企業スピノバが開発したセルロース繊維精製の技術が世界的に注目されています。木材パルプや農業廃棄物の小麦や大麦、藁のような天然素材の繊維質からセルロース繊維を精製するもので、それらの分解に有害な化学物質を使用せず、水の使用量も少なくて済みます。他の天然繊維、特に綿とブレンドし上手く機能するそうです。

マリメッコ(Marimekko)と試作品をつくったり、ザ・ノース・フェイス(The North Face)とパートナーシップを締結したり、世界一サステナブルな繊維と謳われ有名アパレルブランドから既に期待されています。

 

インフィニテッドファイバー(Infinited Fiber)のインフィナ(INFINNA)

同じくフィンランド発のスタートアップ企業。廃棄衣料や段ボール、稲や小麦の藁からコットンに近いセルロース繊維をつくる技術を開発。人工繊維としては珍しく見た目や手触りがコットンに近く、100%廃棄衣料を原料にしても新品のような品質を提供できるそう。コットンよりも染色しやすく、特にデニムの製作に適しているようです。

既にパタゴニア(PATAGONIA)やH&Mと協働して試作品を製作。

 

レンチング(Lenzing)のリフィブラ(REFIBRA)

リヨセル最大手として知られるオーストリアのレンチングは、コットン製の古着や製造過程で出るコットンの残布と木材パルプを混合して新しいレーヨン繊維「テンセル™(リヨセル)」を生産する技術リフィブラを開発。元々リヨセルは再生セルロース繊維ですが、これまでは木材パルプがメインで、繊維廃棄物を原料に使ったレーヨンの量産は世界初ということです。

現在は廃棄コットンの配合率が少ないですが、将来的に50%まで引き上げることを目指しています。

 

エヴァニュー(EVRNU)のニューサイクル(NUCYCL)

アメリカの繊維系スタートアップ企業エヴァニューが開発したニューサイクルは、廃棄されたコットン製の衣料品を分子レベルで分解し、新品同様の素材として再生する技術。

アディダス(ADIDAS)とステラマッカートニー(STELLA McCARTNEY)のコラボコレクション「アディダスバイステラマッカートニー(ADIDAS BY STELLA McCARTNEY)」とフーディーを試作しています。

 

 

関連記事:ビーガンが地球の未来を救う?サスティナブルな取り組みとは

ボルト・スレッズ(Bolt Threads)が開発したマッシュルームレザーなどについて触れています。

消費者の共感を得るために。繊維技術以外でもサステナブルな視点を

今回は、製品(古着)や廃棄物からのリサイクル循環を可能にする海外の繊維技術をご紹介しました。

しかし、サステナブルな素材と言っても、単純に長く使用できる耐久性のあるものから生分解性可能なものなど様々で、リサイクルされているのであればポリエステルやナイロンもそれに含まれます。

また、サステナブルなファッションを提供するためには、製品そのものをサステナブルにすることだけでなく、パッケージの削減や製造過程における労働環境の改善など様々な視点や方法があります。

世界のブランドや小売業者が2025年までに最も持続可能な供給源から綿の100%を調達することを約束する「The 2025 Sustainable Cotton Challenge(2025 SCC)」でも、素材自体だけでなく供給源もサステナブルかどうかが注目されていることが分かります。

この取り組みは2017年、英国のチャールズ皇太子が、国際持続可能性ユニットの活動を通じてCEOのグループを招集したときに発足し、ハウスオブフレーザー(House of Fraser)やマークアンドスペンサー(M&S)、セインズベリー(Sainsbury’s)など大手イギリス企業が参加しています。

最新技術を取り入れるにはコスト面で難しい場合もあるため、可能な部分からサステナブルを追求してみてはいかがでしょうか。

 

 

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参考:https://internetretailing.net/sustainability/sustainability/consumers-demand-sustainable-fashion--but-wont-pay-more-for-it--studies-show-on-world-environment-day-19731

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