紳士の国イギリスのマナーは厳しい?③上流階級の見分け方.特徴
イギリスは今も階級社会なのか
産業革命以前、英国社会では生まれた家柄に応じて階級が決められ、それが人々の職業、社会的地位、政治的影響力に影響を及ぼしました。現代では多くの人々が大学レベルの教育を受けているため、上流階級、中流階級、労働者、といった伝統的なカテゴリーは時代遅れであると言われています。制度化された階級は残っておらず、法律として定められているわけでもありません。
特に、イギリスで生まれ育ったわけではないイギリス在住者にとっては、社会的格差をなんとなく感じながらも自分や周囲の人を明確な階級で捉える意識自体ないのではないでしょうか。
しかし、イギリスでは収入面だけでなく、英語のアクセントや服装、通う学校、愛読新聞、買い物をする場所などといった行動様式が階級によって違うことから、人々の生活や意識の中から階級社会というものが完全になくなったとも言い切れないでしょう。
ビジネスにおいて現地の文化を知っておくことや相手に好印象を持ってもらうことは大切です。イギリスならではの階級社会と標準発音である上流階級の英語アクセントについてご紹介します。
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上流階級とは?現代のイギリスに見られる7つの社会階級の特徴
伝統的には富、教育、職業によって階級が定義され、主に上流階級(アッパークラス)、中流階級、労働者階級の3つに分けられてきました。
しかし、2011年に行われたBBC Lab UKによる16万人以上が参加した調査において、イギリスには現在7つの社会階級が存在していることが明らかになりました。
この調査では、経済的、社会的、文化的な3つの側面を元に行われました。すなわち、経済資本(収入、貯蓄、住宅価値)、社会関係資本(社会的繋がり、人脈)、文化資本(余暇の過ごし方、音楽・食の好み、使用メディアなど)の保有であり、その3つの資本の量を測定した結果、以下の7つの階級に分けられました。
エリート(Elite)
人口の僅か6%に当たる英国で最も特権のあるグループ。その富によって他の6つのクラスとは異なり、3つの資本すべての中で最高レベルにあります。
収入:£89,082(約1460万円/£1=164円)
職業:CEO、IT・電気通信ディレクター、法廷弁護士、裁判官、医師など
確立した中流階級(Established middle class)
2番目に裕福。3つの資本すべてで高得点、特に文化資本で2番目に高いスコアを獲得した、最大かつ最も社交的なグループ。
収入:£47,183(約774万円/£1=164円)
職業:電気技師、作業療法士、助産師、環境専門家、警察官など
技術系中流階級(Technical middle class)
繁栄しているが、社会的および文化的資本のスコアが低い、小規模で特徴的な新しい階級グループ。社会的に孤立していて文化的無関心。
収入:£37,428(約614万円/£1=164円)
職業:医療放射線技師、航空機パイロット、薬剤師、高等教育教師、自然科学・社会科学の専門家、物理科学者など
新富裕労働者(New affluent workers)
社会的および文化的に活発で、中程度の経済資本を持つ若いクラスのグループ。
収入:£29,252(約480万円/£1=164円)
職業:電気技師、郵便局員、小売店のレジ係、配管工、暖房・換気エンジニア、販売・小売アシスタントなど
伝統的な労働者階級(Traditional working class)
すべての資本でスコアは低いが、完全に貧困ではない。適度に高い価値の家を持つ平均年齢66歳のグループ。
収入:£13,305(約218万円/£1=164円)
職業:秘書、電気・電子技術者、介護福祉士、清掃員、バンドライバーなど
新興サービス労働者(Emergent service workers)
比較的貧しいが社会的および文化的資本が高い、都市部在住の若いグループ。
収入:£21,048(約345万円/£1=164円)
職業:バースタッフ、シェフ、看護助手、組立工、介護福祉士、カスタマーサービス業、ミュージシャンなど
プレカリアート(Precariat)
「Precarious(不安定な)」と「Proletariat(労働者階級)」を組み合わせた造語で非正規雇用者および失業者のこと。社会的および文化的資本のスコアが低く、最も貧しく、最も恵まれないクラス。
収入:£8,253(約135万円/£1=164円)
職業:清掃員、バンドライバー、介護福祉士、大工、レジャー・旅行サービス、店主など
言葉遣いで階級が分かる?容認発音「RPアクセント」とは?
日常のマナーには言葉遣いも含まれます。意思の疎通が難しいとお互いにストレスになるため、正しい発音で話すに超したことはありません。英語にも日本語のように地域によってアクセントが違う方言が存在し、人々の階級によっても違ってくるため、話し方で出身や階級が分かってしまうと言われています。
イギリス英語の事実上の標準発音と言われるのが上流階級のアクセントです。「RPアクセント(Received Pronunciation)」や「クィーンズアクセント」「オックスブリッジ・アクセント」「オックスフォード・イングリッシュ」「BBCイングリッシュ」などと呼ばれています。
「BBCイングリッシュ」と呼ばれるようにBBC(英国放送協会)アナウンサーの発音でもあり、イングランド南部の教養ある階層の発音とされるため、そんな英語を話すことができたら飲食店やビジネスなどにおいて、自分の印象や扱われ方が変わるかもしれません。
一方、東ロンドンの労働者階級のアクセントはコックニー(Cockney)と呼ばれ、thをfに代えて発音したりAやEの母音を伸ばして発音したりするなどの特徴があります。押韻スラングと言う隠語めいた言い回しもあり、由来を調べると非常に面白いです。
さらに、RPとコックニーの中間的な位置にある河口域英語(Estuary English)というアクセントもあります。
RPアクセントの実際の発音を聞いてみたい方はこちら
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Pronunciation Studio:https://pronunciationstudio.com/upper-received-pronunciation/
イギリス社会で信用を得るために。文化を知り正しいマナーを
階級制度の構造は変わりましたが、イギリス社会には依然として明確な階級が存在し、階級によって生活習慣や言葉遣いが違います。
どの階級が良い悪いということではなく、そのような違いを発見することに興味を持ち、認め合うことで階級を超えた人付き合いの楽しさを知ることができたら、自分の日常も豊かになるのではないでしょうか。そのような人々こそ、世界の第一線で活躍できる本当のグローバルエリートと言えるでしょう。
弊社では、イギリス進出を目指す企業の方のサポートを行っています。ご興味がありましたらお気軽にお問い合わせください。
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出典:
https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/0038038513481128
https://www.bbc.com/news/uk-22007058
https://greatbritishmag.co.uk/uk-culture/what-is-the-british-class-system/