紳士の国イギリスのマナーは厳しい?④上流階級の文化アフタヌーンティー
日本と海外のビジネスマナーから、イギリスにおけるシーン別のマナーなどをご紹介してきたマナーシリーズ。その最終となる今回はビジネス関係者の方もそうでない方も楽しめる記事、アフタヌーンティーにおいてのマナーをご紹介します。
アフタヌーンティーはイギリス発祥の上流階級文化であり、現代では世界中で親しまれている習慣の1つです。2021年頃から“ヌン活”、すなわちアフタヌーンティー活動が流行中の日本。本場イギリスのアフタヌーンティーにおけるマナーを知り、イギリス文化を更に楽しんでみませんか?現地の文化を体験することで進出のヒントを得られるかもしれません。
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本場イギリス、アフタヌーンティーの歴史
時は1840年ヴィクトリア時代まで遡ります。ある日の午後遅く、第7代ベッドフォード公爵夫人アンナ(Anna Maria Russell, the 7th Duchess of Bedford)が軽食(紅茶やバターを添えたパン、ケーキが乗ったトレイ)を自分の部屋に持ってくるように命じました。当時の貴族の生活では、朝遅くに朝食を食べ、遅い時は9時頃に始まる夕食まで食事がなかったため、長い午後の間、公爵夫人が夕食までに軽食を必要としたことは驚くべきことではありません。
これが彼女の習慣となり、友達を招待し始めたことがアフタヌーンティーの起源と言われています。お茶を飲む習慣は家庭から社会へと徐々に広がり、女性同士が頻繁に顔を合わせることで社会的繋がりが急速に確立されました。
また、アフタヌーンティーは主催であるマダムの手腕が試される場でもあり、陶磁器、カトラリー、リネンや家の調度品などを“見せる”場でもありました。
“ヌン活”がトレンドの日本。イギリス上流階級のマナー・エチケットでアフタヌーンティーを
2022年のユーキャン新語・流行語大賞ノミネート30語の中に「ヌン活」が含まれているように、日本ではアフタヌーンティーが大ブームになっています。先にも述べましたが、ヌン活とは一般的にホテルやカフェでアフタヌーンティーを楽しむ活動を指します。せっかくなので本場イギリスのマナー・エチケットで優雅にヌン活を楽しんでみてはいかがでしょうか。
イギリスのアフタヌーンティー、ドレスコードは?
アフタヌーンティーがファッショナブルな社交イベントとなった1880年代の上流階級と社交界の女性は、身体を締めつけないティーガウンと呼ばれる繊細なドレス、手袋、帽子を身に着けていました。しかし、現代では、特別にドレスコードが規定されていない場合は、スマートカジュアルを選択するのが一般的です。女性の場合はドレス(ワンピース)、あるいはシャツにスカートなど、男性の場合はスーツ、あるいは襟付きのシャツにチノパンなどが無難です。
ロンドンの大きなホテルなどではドレスコードが規定されており、ウェブサイトに明確に記載されているため、不安な場合は事前に確認しておくと良いでしょう。
帽子は室内では脱ぐ?イギリスのマナーは?
男性の場合、室内では帽子を脱ぐことがマナーとされています。ロビーや廊下、エレベーター(イギリスではリフト)などの屋内である“公共の場所”にいると見なされる場合は、個人の衛生のために帽子を被ったままにしますが、公共のエレベーターに乗っていて女性が入ってきた場合、礼儀と敬意のために帽子を脱がなければなりません。但し、他の紳男性と一緒に乗っている場合は必要ないとされています。
そのため、アフタヌーンティーにおいても、屋内で行われる場合、男性は帽子を脱ぐことを忘れないようにしましょう。
イギリスのアフタヌーンティー、食べ方は?
伝統的なアフタヌーンティーは、紅茶のポットと一緒に3段のスタンドで食べ物が提供されます。通常、下のプレートから ―ティーサンド(午後のティータイムに食べることを目的とした小さなサンドイッチ)、クロテッド クリームとジャムを添えたスコーン、スイーツの順― 頂きます。
以下が食べる際に気をつけるポイントです。
ティーサンドはカトラリーではなく指で食べる
スコーンはナイフではなく手で2つに割り、半分ずつ別々に食べる
クロテッドクリームとジャムのどちらを先に塗るかは地域によって異なる(デヴォン流は最初にクリーム、上にジャムだが、コーンウォール流はその逆である)
スイーツは最後に食べる
お茶は円を描くようにではなく、前後にかき混ぜる
カップは、親指と人差し指をハンドルに合わせ、ハンドルを中指に乗せて持つ
ソーサーはテーブルから持ち上げない
イギリスのアフタヌーンティー、「ハイティー」「クリームティー」との違いは?
アフタヌーンティー(Afternoon Tea)とは
アフタヌーンティーはフィンガーフードのセレクションで、午後のおやつであり、通常はハイティーよりもカジュアルです。伝統的なイギリスのアフタヌーンティーはテーブルではなくソファや椅子の応接室で提供されていました。
ハイティー(High Tea)とは
ハイティーはダイニングテーブル、すなわち高いテーブルで提供されるため「ハイティー」と呼ばれ、より食事のようなものです。濃いお茶、ハム、ジャム、ティーケーキ、焼きたてのパン、より充実したサンドヴィッチ、ポークパイなど。かつては、畑や工場で長い1日を過ごした労働者が夕方遅くに食べるものでした。
アメリカでは、「ハイティー」の「ハイ」の部分が優雅なアフタヌーンティーを意味するものとして親しまれています。
クリームティー(Cream Tea)とは
クリームティーとはスコーンにクロテッドクリームとジャムを添えたものであり、他のフードは付いてきません。イギリスを訪れると、城や大聖堂など、観光スポット付近の多くのカフェでクリームティーを見つけることができます。「凝固した(Clotted)」クリームと名付けられたクロテッドクリームは、デヴォンとコーンウォール地方が発祥の脂肪分が高いクリームです。
抹茶人気が上昇。イギリスのアフタヌーンティー市場に可能性あり?
イギリス人のお茶への情熱は私たち日本人にも通じるところがあります。
2017年に職場やオフィスで普段飲むお茶の種類を尋ねた調査では、紅茶(44%)、白茶(42%)、緑茶(16%)、ハーブティー(12%)、フルーツティー(10%)、ルイボスティー(4%)、抹茶(3%)の順に多く、日本でも馴染みのある緑茶や抹茶がランクインしていました。
特に抹茶は、年々、世界中で人気のある飲み物になりつつあります。世界の抹茶市場規模は、2020年に30億米ドルを超え、2021年から2027年にかけて8%のCAGRで成長すると推定されています。
抹茶や和菓子、寿司などの和風アフタヌーンティーを見つけられる場所や、抹茶専門のカフェがイギリスにも幾つか存在します。和菓子や抹茶がイギリスのモダンなアフタヌーンティーのアイデアとして引く手数多になる可能性もあるでしょう。
▼弊社では、イギリス進出を目指す企業の方のサポートを行っています。
ご興味がありましたらお気軽にお問い合わせください。
出典・参考:
https://www.aimeeprovence.com.au/the-history-of-afternoon-tea
https://www.historic-uk.com/CultureUK/Afternoon-Tea/
https://www.thespruceeats.com/brief-history-of-afternoon-tea-in-britain-435455
https://www.christys-hats.com/hat-etiquette
https://www.visitbritain.com/gb/en/our-ever-so-british-guide-afternoon-tea-etiquette#
https://tearrifictea.com/blogs/news/afternoon-tea-high-tea-cream-tea-whats-the-difference