LGBT+のプラス。超マイノリティーに焦点を当てるべき理由とは
LGBTについては以前の記事(多様な性を認めるジェンダーレス社会へ。LGBT基礎知識&割合2021)で紹介しましたが、最近ではこの4文字以外にも性的マイノリティが存在するということで、LGBT+やLGBTQ+と表現されることが増えてきました。
また、+(プラス)の部分の表記を試みた11文字のLGBTTIQQ2SAや、13文字のLGBTQQIAAPPO2Sという表記も存在しており、いったいどれだけ種類があるのだろうと疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
※それぞれのアルファベットが表すセクシュアリティーの説明は、この記事では割愛します
アメリカ版のFacebookには性別蘭が58種類あります。しかしながら、この58種類でさえも全てのセクシュアリティーが網羅されていると言い切ることはできません。なぜなら、複合的なセクシュアリティーを持つ人や、時期や年齢で流動的なセクシュアリティーを持つ人もいるからです。
「いっその事、わざわざ表記するのを諦めれば良いのでは?」という声も聞こえてきそうですが、58種類や今後それ以上になったとしても、個々のセクシュアリティーを認める必要があります。この記事では、その理由を考えてきます。
「マズローの欲求5段階説」の「社会的欲求」とは
「マズローの欲求5段階説」という言葉を聞いたことはないでしょうか。これはアメリカ人の心理学者アブラハム・マズロー考案した、人間の欲求がピラミッドのように5段階に分かれているという説です。
具体的には下から順番に、「生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現の欲求」とされており、「自己実現の欲求」が人間の最も高層な欲求だと考えられています。
こうして見るとSNSの普及によって問題視されるようになった承認欲求は、上から2番目なので高層な部類の欲求であることが分かります。たしかに、食べるものがない(生理的欲求が満たされない)、他の動物に捕食されるかもしれない(安全の欲求が満たされない)という原始的な社会では、現代のような承認欲求を持つ人は少ないかもしれません。
少し話が横道に逸れましたが、承認欲求のすぐ下にある社会的欲求は「所属欲求」と訳されることもあります。したがって、「社会や集団に所属したい欲求」と解釈できます。
多くの人は家庭や職場(または学校)などに自分の居場所があると感じられるので、社会的欲求を満たすことが出来ます。しかしながら、これらの場所に自分の居場所を見出せないマイノリティーも存在します。その中には、LGBT+のような性的マイノリティーの人たちが入る可能性が高いのです。
集団の中でアイデンティティを見出す
多くの場合、集団に属することによって自己の役割やアイデンティティを見出すことができます。例えば男の子の集まりの中のガキ大将や、女性社員の集まりの中のファッションリーダーなど、子どもでも大人でもあり得ます。
集団に属さずアイデンティティを見出せないことが、本人にとってどれほど辛いことかは想像しがたいものです。
例えばダンサーのDancingLuckyBoy,SOUSHIN想真さんは、男や女という概念が自分の中に存在しない「無性」を自認しており、男女どちらかに属す必要があるなら生きていけないと、何度か自殺を試みたこともあるそうです。医師に性同一性障害の「無性」に当たると診断されたことで、自分の中でしっくりきたと語っています。
これは「無性」という集団――男や女などの集団に比べたら圧倒的少数派ですが――に属したことにより、アイデンティティを見出せた例と言えるのでははないでしょうか。
LGBT+プライド・パレード|マイノリティーの中にマイノリティーがいる?
LGBT+という集団に属すことで社会的欲求を満たすことが出来るかといえば、必ずしもそうではではないようです。
性的マイノリティーの人のイベントとして、LGBT+プライド・パレードがあります。1969年にアメリカで起こったストーンウォール暴動がきっかけとなり、現在では様々な都市で実施されています。以前はゲイ・パレードと呼ばれることが多かったのですが、性的マイノリティへの理解が高まるにつれて現在の呼び方になりました。
このイベントに対しては、性的マイノリティーやそれを支持する人達が、レインボーカラーのコスチュームやメイクを纏って練り歩く場面を想像する人も多く、活力や愛に溢れたイベントという印象があります。
LGBT+のためのイベントでありながら、参加したアセクシャルの人の中には自分の居場所でないと感じた人もいたようです。
アセクシャルとはLGBT+に含まれる性的マイノリティーで、日本語では「無性愛」と訳されます。男女限らず他者に対して性的欲求がない、または恋愛感情はあっても性的欲求を感じないセクシュアリティです。アセクシャルも家族愛や友情のような人間に対する愛情を抱きますが、エネルギッシュな愛に溢れたイメージのLGBT+プライド・パレードは、なんとなくしっくりこなかったのではないでしょうか。アセクシャルの人が別のLGBT+の人に「恋愛出来ないなんて可哀そう」と言われ、傷ついたという経験談もありました。
このような事例を踏まえるとLGBT+を一括りにせず、その一つ一つに目を向けるべきであることが分かります。
LGBT+やLGBTQ+以上の表記はムリ?
LGBT+やLGBTQ+はLGBTの4文字に含まれない人達を表すのに一般的な表現で、この記事内でもLGBT+と表記しました。たしかに58個やそれ以上のアルファベットを並べて表記するのは、現実的ではありません。
もしかしたら今後、LGBT+やLGBTQ+よりも優れた表記が登場するかもしれませんが、社会がこのような言葉を産もうとすることに意味があるように思えます。大切なのはどう表記するかではなく、セクシュアリティーには多様性があるということを知り、それを認めることなのではないでしょうか。