ライドシェアとは?②世界の市場規模&日本の普及状況
昨年、岸田文雄首相が開いたデジタル行財政改革会議において、今年2024年4月に条件付きで利用できることに決まったライドシェア。「ライドシェアとは?」前編では、ライドシェアがタクシーやカーシェアとどう違うのかを、有名企業Uber(ウーバー)の仕組みとともに述べました。
今回は、世界のライドシェア市場の規模と動向、日本ではどの程度普及しているのかをまとめたいと思います。
▼前編「ライドシェアの意味や仕組みについて」はこちら
ライドシェアとは?①Uberの仕組み&タクシーやカーシェアとの違い
ライドシェアリング市場規模 世界では?
ライドシェアのマッチングアプリが市場の成長に貢献
世界のライドシェアリング市場は2020年に595億3,000万ドルと評価され、2030年までに2,058億3,000万ドルに達し、CAGR(2021-2030年の間の年間成長率)は13.2%と予測されています。
新型コロナウイルス感染症流行時には売り上げが減少し、運賃が下落した当市場ですが、オンライン予約チャネルからの需要の増加や車両所有コストなどの要因が市場の成長を牽引するとされています。オンライン予約チャネルとは、例えばスマートフォンのアプリケーションが挙げられ、正確な需給マッチングや運転者と同乗者が相互評価するシステムへの安心感、乗車前にアプリで行き先や所要時間・料金を共有できる利便性の高さが評価されています。
また、海外ではオフィス通勤者の間でライドシェアやバイクプールサービス(レンタサイクルのようなもの)の嗜好が大幅に高まっており、ロボタクシーの開発や環境にやさしい電気タクシーサービスの出現と相まって、ライドシェアリングサービスの成長に貢献することが期待されています。
Uberはライドシェアサービス企業ランキング1位
特に、アメリカではライドシェアが浸透しており、Uber(ウーバー)とLyft(リフト)が人気です。この2社は世界のライドシェアサービス時価総額ランキングで上位にランクインしており、市場の主要プレーヤーとなっています。
1位 Uber(米) 1,339億8,000万ドル
2位 DiDi chuxing(中) 178億3,000万ドル
3位 Grab(星) 117億3,000万ドル
4位 lyft(米) 49億7000万ドル
Uberは世界中の様々な国で大きな存在感を示しており、ライドシェアだけでなくフードデリバリーや貨物輸送、電動スクーターレンタル事業などを手掛け、モノや人の移動ビジネスにデジタルで変革をもたらしたテクノロジー企業です。
このような主要ライドシェアサービスプロバイダーが提供する経済的で便利なライドシェアオプション ―相乗りの月額パスなどの様々な特典、割引のようなサービス― が増加し、消費者にライドシェアサービスを選択するよう誘惑しています。
しかし、そんな成長著しいライドシェア市場ですが、公共交通機関の改善とローカルな交通サービスからの抵抗が各国の様々な政府規制と相まって、市場の成長を妨げていることも事実です。
どのくらいの国が導入し、どのような規制を設けているのでしょうか?
主要国の多くがライドシェア導入も規制に違いあり
ライドシェアのサービスタイプは2種類あり、UberやLyftのようなTNC(Transportation Network Company)サービス型とPHV(Private Hire Vehicle)サービス型が挙げられます。
TNC型はライドシェアプラットフォーム事業者が各ドライバーの管理や運行管理を行うもので、ドライバーに課される要件は基本的に事業者が定めることになっています。
一方PHV型は、国がドライバー・車両・プラットフォーム(このすべてかどうかは国による)に対して規制を設けており、ドライバーがライドシェアを行うためには、国が定める要件を満たして登録する必要があります。
主要国では米国、カナダ、ブラジル、インドなどが前者、英国、フランス、ドイツ、中国などが後者のタイプを取り入れています。
PHV型はTNC型に比べると厳しく管理されており、例えばイギリス・ロンドンでは、プラットフォーム事業者はロンドン交通局が発行するPHV事業者ライセンスの取得が必要であったり、ドライバーは運転技術や犯罪履歴、健康状態に関する複数の要件を満たした上で、ロンドン交通局発行のPHV運転手ライセンス(PCO)の取得が必要であったりします。どちらのライセンスも期限付きで更新が必要となっています。
安全面で導入を懸念する国も多いと思いますが、規制によっては安全面で信頼が高いサービスを実現することも可能と言えるでしょう。
このように、PHV型は本質的にはライドシェアです。しかし、自家用車による個人輸送サービスではなく、運転手付きのレンタカースタイルを取っている国もあり、PHV型をライドシェアサービスと捉えるか否かは国によって違うようです。
では、日本はどうでしょうか?
ライドシェアの日本での普及状況
日本ではご存知のように、自家用車を利用した営利目的のライドシェアは法律で禁止されています。実はUberも日本進出していますが、2014年から、首都圏の一部におけるハイヤーやタクシーの配車サービスの提供に留まっています。
ただし、災害のために緊急を要する場合、そして公共交通事業が成り立たない地域において、特定非営利活動法人などが住民の運送を行う場合は自家用車での有償運送が認められています。
そして2016年、国家戦略特区法により、地域住民の自家用車による有償運送の対象が観光客にまで拡大しました。
サービス実施には、地域における関係者協議や道路運送法に基づく登録などが必要であり、個人が自由に行えるものではありませんが、この例外も含めると、有償ライドシェアが日本では全く行われていないわけではないということです。
▼ライドシェアが日本で禁止されている詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
ライドシェアリングサービスの本格解禁は?安全対策が鍵?
このように、TNC型のようなライドシェアは禁止されている日本ですが、タクシーやレンタカー会社がアプリを通したマッチング技術を導入したり、博報堂がマイカーを活用した乗り合い公共交通サービス「ノッカル中田」を一部地域で提供したり、PHV型に近いサービスは広がりつつあります。
さらに、冒頭でも述べたように、タクシー会社が運行管理し運賃はタクシーと同じ、車両不足が深刻な地域や時間帯に絞って限定解禁という条件の元、ライドシェアサービスが解禁されようとしています。
前編「ライドシェアとは?①Uberの仕組み&タクシーやカーシェアとの違い」では、ライドシェアによって交通事故が増加した米国の例を挙げました。しかし、Uberによる英国での利用者調査では、Uberが利用できるようになったことで帰路の飲酒運転が減ったという回答があり、起きたかもしれない事故を未然に防ぐことができている可能性はあります。また、犯罪に巻き込まれる不安などが減り、気兼ねなく夜遅くまで外出できるようになったという声もあります。これは英国に限ったことではないでしょう。
車内での犯罪に対しても、Uberが実装する「治安の悪い地域でのインシデント発生に備えたアプリ機能(車内の様子を録音・録画できる機能や5人までと乗車情報をリアルタイムで共有できる機能など)」や「アプリ上からの110番通報昨日や警察との連携」「世界23か国における女性運転手が女性客のみとマッチングする仕組み」などのように、現代のデジタル技術を活用すれば様々な対策が可能になるのではないでしょうか?
▼弊社へのご相談などは、こちらからお気軽にお問い合わせください。
出典:
https://companiesmarketcap.com/ridesharing/largest-companies-by-market-cap/
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_05local/231106/local03_02.pdf