嘘をついて返品する人が増加?返品詐欺とその対策 海外の返品事情②

Amazonのように「着払い返品」が当たり前?海外の返品事情①」において、海外は日本と比べて寛容な返品ルールを設けている小売業者が多いことをお伝えしました。これは、消費者にとっては有り難いことですが、返品しやすくなったことで不正も増加しており、小売業者の中では返品ルールの見直しを図っているところも出てきています。

弊社のあるイギリスで多い返品詐欺とその対策についてお伝えします。

返品増加の理由は?コロナ以降「試着のみ返品」が増加

イギリスで返品が増加したのは、やはりコロナによるロックダウン時期です。それ以前は、多くの消費者がオンライン購入後のデジタル返品プロセスの煩わしさを避け、商品の購入を実店舗に限定していました。しかし、一部の商品をオンラインで購入せざるを得なかったこの時期、店舗に赴いて実際に商品を見ることができないことで返品が増加するであろうと想定し、より頻繁かつ迅速に返品対応をすることが小売業者に求められました。

そこで、多くの小売業者が返品プロセスを改善。返品送付用のラベル印刷不要や深夜営業も行う近場の小売店、宅配業者が所有するロッカーに預けられるオプションを設けるなどの対策をしたことで、以前よりも返品する顧客が増えました。

オンライン購入者の38%が、商品を返品することに以前より自信を持てるようになったと回答しており、過去1年間で1度でも返品をしたことのある購入者は49%、16-34歳では60%と若者の間で、特に返品が増加しているようです。

ファッション関連用品においては、「買って、試して、返品」する行為が頻繁に行われるようになり、サイズ違いで複数購入し、合わなかったものを返品するという購入方法が今でも一般的に行われています。

 

未開封と嘘をつく?返品理由は虚偽の場合も

オンライン購入における返品詐欺の種類

この衣料品を「買って、試して、返品」する行為は、サイズが合えば購入するわけなのでルールを破ってはいませんが、試着ではなく着用目的で購入し、最初から返品する場合は違ってきます。商品を1、2回使用して、あたかも未開封のまま返却する行為は、お店を自分の洋服ダンス(ワードローブ)のように使用しているという意味で、「ワードローブ詐欺」あるいは「ワードロービング」と呼ばれる不正に当たります。ハイブランドの衣類品や宝飾品を対象として行われることが多いようです。

前述したように若者の間で返品が増加していること、SNSあるいはインフルエンサーへの関心が高まっている時代であることを踏まえると、SNSに投稿するためだけに購入してすぐ返品している人がいることも考えられます。

衣類品に限らない詐欺で言うと、「注文した商品が届かないと嘘をついて返金させる詐欺」、気に入った商品を一度返品した後、セールで安く再販されるのを狙って再購入する「オープンボックス詐欺」、返品時に安価な中古品や類似品にすり替える「すり替え詐欺」、「購入商品と同重量のダミーを返品する詐欺」なども一般的です。

「購入商品と同重量のダミーを返品する詐欺」は、小売業者が返品小包を受け取った瞬間に返金が行われる仕組みを設けている場合に行われる詐欺です。実際、イギリスの電化製品オンライン小売業者Maplin(マップリン)には、電化製品が返品される代わりに、じゃがいもや豆、お菓子が届いたことがあるそうです。

嘘をついて返品する人は消費者の1/3近くに上る

英調査会社Onepollと米ソフトウェア企業Signifydによる調査では、イギリス消費者の32%が虚偽の返品をしたことがあると明らかになっています。28%がより良い価格を見つけたため返品したことがあり、27%が商品を受け取っていないと嘘をついたことがあるとのことです。


このような詐欺は、あらゆる種類のオンライン小売業者(eコマース運営者)にとって深刻な課題となっています。

悪質化する返品詐欺 対策にAIを活用する小売業者も

返品詐欺への対策として、まずできることは返品ポリシーの改善が挙げられます。例えば、返品可能期限が長いと不正に使用されてしまいサブスクサービスと変わらなくなってしまうので返品可能期限を短くしたり、店舗でのみ返品可能にしたりするなどです。店舗で返品してもらえば商品の状態をその場で確認できる上、店舗に赴くための時間やコストをかけてまでも返品したい顧客のみに淘汰されるというメリットがあります。

しかし、最近行われている対策は、そのようなアナログ式のものだけではありません。海外では、詐欺を行う顧客から本物の顧客を判別するための、デジタルプロファイリングと行動生体認証を行うAIを活用する小売業者が増えてきています。つまり、どの顧客が返品詐欺を行う可能性が高いか、あるいは返品率が高いかをAIが予測してくれるのです。そのデータを元に、返品率が高い顧客には手数料をかけるなど、個々の顧客に合った返品ポリシーを規定することができます。

あるオンライン高級品市場では、AIの活用によって最大60%の詐欺を防止することができたそうです。

 

再来週の記事では、「海外の返品事情③」として返品率を下げる方法についてまとめる予定です。

 

 

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出典:

https://orderwise.co.uk/en/blog/returns-and-ecommerce-five-facts-and-figures-for-2023

https://www.cbre.co.uk/insights/local-response/the-end-of-free-returns-will-consumers-continue-to-spend-online

https://nethone.com/blog/how-to-prevent-return-fraud-with-machine-learning-models

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